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なぜ刀には「凹」形状の棟が無いのか考えてみる
日本刀の棟に以下のように色々な形がある。
しかしなぜ棟には「凹」の形は無いのでしょうか?
樋に加えて更に軽量化も出来そうなものですが。
自分なりに考えて見ます。
(画像出典:「新日本刀の鑑定入門 著:広井雄一・飯田一雄」)
①なぜ棟をわざわざひと手間かけて作るのか
棟を作る時は以前注文打ちの際に金田國真さんに頂いた写真を見ると、以下のように素延べでまず区(まち)を出してから、
以下のように火造りで棟の形を整えている様子だった。(写真は庵棟)
私は刀工ではないのでこの工程がどのくらい大変なのかイマイチ分からないのだが、庵棟のように丁度中心に線が来るようにハンマーとヤスリだけで整えるのはかなり難しいのではないかと感じる。
角棟が何も加工いらなさそうなので手軽に思えそうだが、実際の日本刀ではあまり見かけない。
日本刀の殆どは庵棟や三つ棟ではないだろうか。
因みに角棟は刀に反りが付く前の奈良時代以前の刀に多く見られ、丸棟は九州や北陸の刀工に見られる形。
なぜ棟にはこのひと手間が加えられているのか?
日本刀の形状に無駄は無い(何かしら形状に意味がある)と個人的には思っているので、棟の形も実戦時に影響するのではないか?と思い考えてみました。(推測なので合っているかは不明)
(画像出典:「新日本刀の鑑定入門 著:広井雄一・飯田一雄」)
②棟の役割は素早く刀を抜く為の工夫?
仮説でしかないのですが、個人的に棟の役割というのは抜刀時に棟がガイドになる事で素早く刀を抜く為の工夫ではないかと思うのです。
以下のイラストのようにガイドに沿って刀身を抜く時は多くても接触箇所は2箇所になる事が考えられます。接触箇所が減れば減るほど摩擦が少なくなるのでスムーズに刀が抜けるはず。
次に三つ棟もやはり接触箇所は多くて2箇所になりそう。
しかし庵棟に比べて鑢をかける面が3面になり大変そう。
次に丸棟。丸棟の鯉口形状をまだ見た事が無いのでどのような形状になっているか不明ですが、庵棟と同じ形状をしていた場合は接触点は同じく2箇所になりそうです。
丸棟に合わせて鯉口のガイド部も丸くなっている場合は接触点が常に1か所になり、一番スムーズそうです。
しかし丸棟は加工の手間が更に掛かりそう。
作刀の効率面ではマイナスかもしれません。
角棟は上古刀に見られる形状であり、刀として形状がまだ完成していないので省略。
庵棟、三つ棟、丸棟、いずれもスムーズに抜けそうです。
これに加えて前々からなぜ棟には「凹」の形が無いのか疑問に思っていました。樋に加えて更に軽量化も出来そうなものですが。
考えるに必ず接触点が2箇所になるから良くないのかもしれません。
あと加工が難しいというのもあるのかもしれない。
しかしこれは是非見てみたい形状。
③終わりに
因みに庵棟でも鞘側の鯉口の形状(水色線部)をこのようになだらかにすると、常に接触点が1つになります。
以下のように庵棟に合わせて緑線部のように鯉口の角度を上げると接触箇所が増えてスムーズな出し入れがしづらくなりそうです。
なので、庵棟の場合は以下のような形状の方が理に適っていると思いますが如何でしょうか。
昔の拵えが付属している刀身をお持ちの方はこの角度をご確認頂けると嬉しいです。以下のようになっていたら嬉しい。(イラストは分かりやすく大げさに描いています)
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