古い時代の鐔ほど絵柄が分からない
鐔は刀身と異なり、鎌倉時代のもので現存しているものがかなり少なく、多くは室町時代以降のものです。
但しそれ以前の物の現存が少ないというだけで鍔の歴史は古く、古墳時代の環頭太刀 (かんとうたち) や頭椎太刀 (かぶつちたち) に着けられていた倒卵形鍔から始まっています。
(画像出典:福島みんなのNEWS)
鐔といえば華やかな装飾性のある鐔を思い浮かべる方も多いとは思いますが、装飾性の高いものが多く出てくるのは江戸時代以降で、それより前だと質素な雰囲気の鉄鐔が基本になります。
ざっくり安土桃山時代より前は↓のような鉄鐔が多い
江戸時代以降は↓のようなのが増える
そして、この鉄鐔に透かしなどで文様のようなものが入っているのですが、江戸時代など時代が進むにつれてこれは花の絵だなぁとか、草の絵だなぁというのが分かりやすくなります。
以下は江戸中期頃の赤坂忠重による作。桐文が描かれています。
桐文と分からずとも、葉っぱが描かれているのは誰でも分かります。
一方で室町時代の鐔は絵柄がよく分からない。
(画像出典:鐔鑑賞記 by Zenzai 茸透図鐔 古刀匠)
リンク先の解説を読んだところ、このような透かしは「くくりざる」とも言われているようですが、何を意匠したかは不明だそうです。
(個人的にはキノコと思っていましたがそんなに単純ではないようです)
以下の図柄も分かりません。
人参にも見えますがきっとそんなに単純ではないでしょう。
(画像出典:鐔 寿楽堂)
このように古い時代の鐔は何の絵が描かれているか分かりづらいという特徴があります。
しかしそこに一石を投じたのが有名な金家です。
それまでの鍔のデザインは図案や文様のようなものでしたが、金家は初めて写生的な図柄を取り入れて絵画的な鐔を創始しました。
金家の後期作になると、狩野派や海北友松(かいほうゆうしょう)などの画法を取り入れた作風のものが多くなるといいます。
(海北友松「柏に猿図」二幅 紙本淡彩)
(画像出典:鐔鑑賞記 by Zenzai 猿猴捕月図鐔 金家)
そしてちょうど金家と同じ頃、京で埋忠明寿が出てきました。
埋忠により、金や銀、赤銅など多彩に組み合わせた芸術的な鐔も登場してきます。
(画像出典:アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】)
更に更に足利義政の側近として仕えた後藤祐乗を祖とする後藤派も出てきて、各時代で権力者に重宝され明治まで繫栄します。
と室町期の鐔の話から話が脱線しましたが、何が言いたかったというと室町時代までは装飾性のある鐔はほぼ無くて、更に古ければ古いほど図柄も何か分からない物が増えるという事でした。
バリバリに戦をしていた時代ですので、ちょっとした透かし文様から信仰心などが垣間見えたりするなど、一見何の変哲もない鉄鐔ですが嵌るとなかなかに面白いのかもしれません。
鍔についてもまだまだ勉強不足なので、刀剣と平行して学んでいけたらと思います。
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