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寅年最後に刀装具沼に引き込んだ虎鐔を眺めて寝る

12年に1度の寅年(当たり前)も明日で終わりです。
今年は一言で言えば刀装具にはまった年でした。
全くの無知な状態でしたが、刀と比較しても価格がお手頃という事もあり、取りあえず興味が引かれた物の中から気に入った物に手を出していた結果、気が付けば結構な量になっていました…。
塵も積もればなんとやらですね。。

中身についてはこちらで書いていますので暇な方はよろしければご覧下さい。
同時に刀装具の本も徐々に増えています。

そのきっかけとなる1枚が以下の鐔でした。

竹虎図(正阿弥盛富)

虎は個人的にもとても好きな画題の一つで寅年であった事もあり1枚欲しいと思い探していました。
1ヶ月か2ヶ月ほどネットサーフィンしていた感じでしょうか。
こちらの鐔はつるぎの屋さんのHPから購入させて頂きました。
刀に比べれば手頃な価格とはいえ、それでも10万後半位の値段はしました。
刀はいつも実物を見てから買うので、初めて実物を見ないで買う行為にかなり躊躇しましたが、結論から言えば刀装具は刀と違って写真で判断出来る部分も多く、光の当たり具合での見え方もそこまで大きな変化を生まないので買って届いてからのギャップというのも少ないように個人的には思います。(鉄鐔は除く)

実際にこちらの鐔は今見ても買って大正解だったと言える鐔で、見る度に細かな鏨入れや表情の作り方に感動させられます。

見る度に刺激を貰える作は良い作です。
一方でこの鐔よりも高い物にも関わらずそのような刺激が無い物も多々買ってしまいました。つくづく値段や作者では無いなと感じる次第で、そういう意味では結局は刀と同じでした。

この鐔の購入の決め手は、猫のような優しい表情の中にどこか自信や力強さを感じさせるような眼をしていたから、というもの。
まぁ初めて鐔を買う時に作者が誰だとか、材質がどうだとかあまり深く考える人はきっとあまり多くないのではないでしょうか。
逆にそれが良かったのかもしれない。

元々猫を飼っていた身として、猫のようにデフォルメされた虎の姿に一目惚れしてしまいました。
後に知った事ですが別に猫のようにデフォルメしているわけではなく、この鐔が製作された江戸時代頃は虎を見た事が無い人が大半(日本に野生の虎はいなかった為)であり、虎がどのような動物かを中国や朝鮮半島から伝わる様々な話や美術作品を参考にしながら描いていたようです。
人々は虎は強く賢い生き物と信じ、また子を大切に育てる愛情深い生き物だと考えていたようで、それらが好まれたからか日本の美術にも多く描かれます。
尾形光琳の虎もとても愛嬌ある顔をしていますよね。

(画像出典元:竹虎図 尾形光琳筆 所蔵:京都国立博物館

しかし猫に寄りすぎていないか昔の人も気にしていたようで、江戸時代には「猫でない 証拠に竹を 書いて置き」という川柳も残っているようです。

つまりどんなに猫っぽくても「竹」と共に描いていれば虎に見えるよね、という皮肉が込められているようです。(参考:京都国立博物館「虎-見たことがない生き物を描く」より

このような歴史についても恐らくこの鐔を買っていなければ知り得なかった事であり、そういう意味では知識も拡がり良かったと思っています。

この虎鐔をきっかけに興味の幅も古い古金工の鐔から現代鐔に至るまで徐々に広がっていった年でした。以下一部紹介。

古金工鐔
古刀匠鐔
現代鐔 鉄(成木一成)
現代鐔 四分一(成木一成)

最後の方には目貫にも少し興味が…。

二匹獅子(桃山後藤)


という事で今年は刀装具という面白くて壮大な沼に足を踏み入れた年でした。今日はこの1年に思いを馳せながら虎鐔を眺めて寝ようと思います。

来年は卯年ですね。
私も卯年なので何となく嬉しいです。
来年も皆様にとって良い年となりますように。
ウサギの刀装具もあったりするので、興味ある方は探してみても良いかもしれませんね!


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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