平田彦三の侘び寂び
侘び寂びを感じる鐔は人によって沢山あるだろうが、個人的に特に詫び寂びを感じるものといえば埋忠明寿の鐔と平田彦三の鐔である。
両者を拝見した時に感じた詫び寂びの感覚は私的にはとても近いもので、埋忠明寿鐔から感じるものについては以前こちらで書いたように焼き物のような独特な質感の鐔に墨絵を赤銅で表現して絵画のような「和」を創造した点から来ていのに対して、平田彦三の鐔は絵画のようなデザインは無いが、質感そのものが茶器のような、古く柔らかい印象を受ける。
以下は東京神田にお店を構える真玄堂さんのInstagramであるが、平田彦三の重要刀装具の写真が沢山載っているので、平田彦三の鐔がどういうものかまずはこちらのリンク先から見て頂きたい。
(instagram : samurai_gallery_shingendouより)
こちらの彦三鐔はとても有難い事に以前一度手に取り拝見させて頂いたが、写真からも分かるように溝部分などに黒漆の跡が残っている事で茶色に深みを生み出しそれが詫び寂びに繋がっている気がする。
しっとりとした落ち着いた風合いも魅力的。
そして表には青のライン、裏には緑のラインが一線入っており、この茶色と青という一見合わなさそうな色を組み合わせる事で詫び寂びを増強させている点がとても素晴らしく、またその色調センスの高さが平田彦三なのかもしれないと当時拝見しながら感動した。
平田彦三の鐔は鑑賞した数もせいぜいまだ2つ程度で、ましてや所有しているわけでもなく、その位で平田彦三の何が分かるのか、と言われればその通りでぐうの音も出ないのではあるが。。
話は戻り、図録などで彦三の別作を見てみてみると、このように青や緑を差し色として入れている物は他に見られなかったが、この深みのある茶色はどれも共通している様子。そして鐔の外周に覆輪と呼ばれる別素材の枠のようなものが付いている物も多い。
因みに鐔の地の素材で言えば素銅、覆輪は山銅や真鍮、朧銀などを用いていた。
話は変わるが、彦三の作は無銘ばかり。
これもまた興味深い。
無銘が多いがこれだけ深みのある地鉄を出せるのは彦三以外にいないのかもしれない。
刀で有名な「正宗」の作に無銘が多い理由の一説として「他の刀工と見間違うことがないほど自身の作が優れていたから」という説があるが、平田彦三こそまさにそれではないかと感じずにはいられない。
埋忠明寿鐔も同じだ。
明寿鐔については在銘もまま見るが、明寿以降にあの焼き物のような独特の風合いを表現出来ている人はいない。
彦三にしても明寿にしても当時相当な教養人であったことは間違いなく、そのような時代を代表する人が高い感性で製作した鐔というのは見ていて心が躍る。
茶器のような、焼き物のような鐔が欲しい人は、埋忠明寿と平田彦三の2名は是非押さえておきたい鐔工かもしれない。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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