刀には昔の記録が沢山残っている
刀には押形と呼ばれる、刀の茎や刀身の一部をスケッチした資料が室町時代頃から残っています。
これらは元々は刀の記録資料(例えば江戸時代前期に成立した埋忠銘鑑は、埋忠家が金具の製作、刀の摺上げ、金象嵌の嵌入、売買など仕事を依頼された刀を押形として記録している)としての意味合いが強かったようですが、刀は長い歴史の中で火災や時代経過による紛失など、失われるものも多かったです。
にも関わらず、これらの押形によってその当時存在した刀やその姿を伺い知る事が出来たり、偽物を見極めるのにも重宝されるなど、結果的に押形が果たした役割は今日ではとても大きいものになっています。
(画像出典:「埋忠刀譜」より)
こういった押形というのは色々な時代に存在(昭和も現代もあります)しているのですが、刀購入の面白いところの一つとして、こういった過去の押形に購入した刀の情報が載っていて発見出来る事がある、という点が挙げられます。
そして押形は大体1:1サイズで載っています。(物によってはスケッチなので微妙にずれているのもあるのですが)
例えば以下は昭和59年に刊行された1100Pにも渡る押形集で神津伯押形と呼ばれるものです。例えば以下は昭和59年に刊行された1100Pにも渡る押形集で神津伯押形と呼ばれるものです。
(画像出典:「神津伯押形」より)
刀を買うと歴代の所有者や伝来などその刀の歴史というのは気になる事かと思います。
そういった事を調べる際に写真が無かった時代からこうした正確な記録が絵で残っているのは刀独特のものかもしれません。
例えば茶器などは大名家の売り立て目録などはあるかもしれませんが、それ以外でこうした1:1サイズのイラストで残って無いと思います(私の知識不足で知らないだけかもしれませんが)
そういう意味では他の美術品にはなかなかない面白さな気もしています。
そして上記の「資正」のように必ずしも有名で値段の高い刀だけが載っているというわけでもないのが面白い所。
現代では評価が低くなっている刀工も当時は評価の高い刀工もいます。
また、押形によっては当時その刀を見た人の感想が載っていたりします。
過去の刀剣界の偉人方がその刀をどのような視点で見ていたのかというのも、とても面白く参考になります。
(画像出典:「鑑刀日々抄」より)
人間買う前よりも買って手に入れてからの方がその刀について知ろうと色々な書籍を読み漁る気もします。
そんな時にこんな偶然的な発見があり、自分の中でその刀の歴史に「点」がいくつか生まれる。
そして調査を続ける中である時それらの点と点が線で繋がる事がある。
そんな事もあるから、刀購入はなかなかに面白い。
そして話は変わりますが、こういった押形を自分自身で描いてみたり、描いてもらうというのも1つ楽しみとしてあるかもしれません。
自分で描けば刀をいつも以上に細かく見る事になり新しい発見があるでしょうし、詳しい方に描いてもらう事で刀に詳しくなるとその刀がどう見えるのか、という発見も出来ると思います。
刀は色々な楽しみ方が出来る美術品に感じます。
この面白さが多くの方に届くと嬉しいです。
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
以下にネットで見れる押形をまとめていますので、愛刀調査される方は検索されてみてください。
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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