製作した刀展示ケースが震度7の揺れから刀を傷つける事なく守り抜きました!
製作している刀展示ケースの耐震実験が名古屋大学さん協力のもと、共同実験という形で遂に実現しました!
設計時は地震対策として以下の事を行っており、揺れに対して強く作っているつもりでいましたが、実際に振動実験が出来ない限りは震度6強や震度7といった非常に強い地震を試す事は金銭面の問題から出来ず、これらの対策は机上の空論となっていました。
展示ケースに施した地震対策を簡単にまとめると以下になります。
他にも目釘孔にワイヤーを通したり(茎と接触部のみシリコン入れる)など検討していた事は有りますが、詳しくは上記ブログを読まれてください。
当時も手で揺らしたりする程度の実験はしていました。
上記ツイートの中で「空気中の水分を含み」とありますが、書き間違いで「空気中の水分を含まず」が正しいです。失礼しました。
①耐震試験の前提条件
私の製作している展示ケースは床置きと壁置きが両方できるように製作していますが、今回の試験はケースを壁掛けしたと想定しての実験です。
その為、鋼板で治具(以下のグレーのもの)を作りケースを壁掛けした時の状況を再現しました。
尚、以下はアクリルの刀掛けに白い布をかぶせた物になり、地面と刀掛けを固定しています。よく刀屋さんや美術館などで見る展示方法ですね(そこでは刀掛けは地面と固定されていませんが)
つまり大雑把に言えば、布の上に刀を載せた時の挙動と、低反発系のスポンジの上に刀を載せた時の挙動の差、という事になります。
尚使用した刀は以下の同形状の模造刀です。
②試験結果
結論から言えば、日本の最強地震4つ(阪神淡路大震災、熊本地震、新潟中越地震、南海トラフ)でも刀身が刀受けから落ちる事なく最後まで刀を傷つける事なく守る事が出来ました。
上記動画は新潟中越地震の揺れの再現であり、4つの地震の中でも見た目的には最も激しい挙動をしていました。
最初この揺れを見た時は、これほどまでに強烈な揺れなのかと絶望に近い感情を抱き刀身がケース内で暴れる事を想定していましたが、良い意味で期待が裏切られ刀身が手前に倒れる程度で済みました。
尚、手前に倒れても刀身はスポンジと接触しているだけですので、刀身に疵が付く事はありません。
そしてこのように刀身が手前に倒れた状態で大地震が来た時に刀身が落下する可能性についても知りたかったので、この状態のまま立て続けに南海トラフ地震(想定)を起こして頂いたのが以下の様子です。
以下の動画は少し短くしていますが、2分近くに渡り長時間ゆったりと、時には大きく揺れていたのが特徴的でした。
白布の方では刀身が落下しましたが、ケースの方は刀身は一切動きませんでした。
その他の実験として、以下は2016年の熊本地震(最高震度7)の様子です。
大きい揺れがいきなりドカンと来るのが印象的でした。
刀身に線が付いていますが、これは加速度センサーです。
白布の方で刀身が最後まで落ちないのは加速度センサーの線が引っ掛かっている為になります。
加速度センサーを付ける理由は、これはより詳細な挙動を確認する為です。但し私は難しい事は分からないので、名古屋大学さんがより詳細な結果をいずれ出して下さると思います。
他にも阪神淡路大震災の揺れなども行いましたが、似たような感じでしたので割愛します。
③考察
さて今回白布の方で激しく落ちたわけですが、刀受けの材質の違いの他に、刀受けがアクリルと言う点も悪材料の一つだと考えています。
というのもやはりアクリルは柔らかいので左右に激しく揺れる事で撓ります。撓るという事はそれだけ刀身にエネルギーが加算される事になるので、より激しく刀身が動く事になります。
一方展示ケースの方は金属なので撓りません。
その為揺れのエネルギーがそのまま伝わる程度で済みます。
これも結果に差を生んでいるのではないかと個人的には考えています。
いずれにしても詳細なデータなどはいずれ名古屋大学さんの方で出して頂けると思いますのでそれを待とうと思います。
④終わりに
今回実験を通して机上の空論だったものが確かに効果のある対策だった事を知れてとても喜びを感じます。
というのも部屋で黙々と1人で考えて設計していましたので…。
私の製作している刀展示ケースの刀受け部には今回の試験体ど同様の物が使われていますので、例えば以下の大型のケース(刀箱)も理論上は問題ないはずです。
刀展示ケースは以下で製作を受け付けていますので、興味ある方はご覧ください。
刀身の保管に一番気を使っていますが、美術館で刀を見るように美しく展示出来るようにも作っています。
(因みに刀受けに低反発系のスポンジを使う事で耐震対策する事については2年程前に特許として申請しております)
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)