「日本刀多彩なる造形展」が面白い!
2022/2/26~2022/5/22まで両国の刀剣博物館で開催中の「日本刀多彩なる造形展」へ行ってきました。
多彩なる造形展と題しているだけあって様々な形をした刀剣、槍、剣、刀装具などが並びます。
その中でこれは面白い!と個人的に感じたものを紹介します。
①刀の起源とも言えるもの
古墳時代のもので、いわば上古刀と呼ばれるもの。刀の起源にあたる。
この時代はまだ反りがなく直刀姿。
反りのある湾刀が生まれるのは平安時代。
ここまで綺麗な拵の実物を拝見するのは私は初めてで、同時にこの拵の大きさにも驚きました。例えば鐔の起源とも言える卵の形をしたこの鐔は長辺で13㎝位(感覚値)あったのではないか、という位に大きい。
同時に展示されていた別の古墳時代の上古刀にはもう少し小さめの鐔が付いていたので、拵によって鐔の大きさも様々だったのかもしれない。
刀身側の重ね(厚み)が厚く、茎側が薄いというのは平安以降の太刀とは異なり興味深い形状をしている。
目釘も刀身側に一つ凸が付き、孔も鐔よりに1か所開いています。
一方別の出土刀は目釘孔が2箇所開いていました。
②刀身に名を刻む水心子正次
切先の形状がとても変わっています。この刀工は1813年生まれで初代水心子正秀の孫であり、その弟子であった大慶直胤に鍛刀を学んだ人です。
解説によると中国や他国の武器を参考にして作った可能性があるとの事。
そしてもう一つ変わっている点が。
なんと刀身彫で刀身に銘を切っているのである。(普通は茎に刻まれる)
これはどういう理由からなのだろうか。
大抵この位置には倶利伽羅龍や八幡大菩薩など信仰を表す彫り物が多く、このように作者銘が刻まれる事は通常ない。
それにしても美しい出来で地景や刃文が楽しめる1振。
謎は深まるばかりだが世界観を広げてくれる1振でした。
③ここまで反る?!っていう薙刀
ギュインっ!!
凄い角度で曲がっている。
ここまで反っていて逆に扱い難くは無いのだろうか。
拵も付属しているのだが、こちらを見ても当然の事ながら反りが凄い。
④素早く何度も突きさせる槍
こちらの槍よく見てほしい。
何か機構らしきものが付いている。
解説を読むにどうやら管槍と呼ばれる槍のようで、「槍の柄を短い管に通し、片手で(赤い)管を、もう一方の手で(黒い)柄を抜き差しするというもので、これにより瞬発的に刺突の繰り返しが可能で、敵がひるんだ際に瞬時に対応できる実戦に叶った様式の槍」のようです。
この機構がある事で瞬発的な刺突の繰り返しがなぜ可能になるのか、通常の槍と比べてなぜ突きの速さが変わるのかイマイチまだ理解しきれていないのですが、管というガイドがある分狙いが定めやすく槍を抜く量も毎回一定になるので素早く突ける、という事でしょうか。
まだ完全に理解しきれていないのですが、なかなかに怖いものを生み出してるなぁと感じました。
⑤想像以上に大きい包丁正宗
一言。でかい。
最初ゲシュタルト崩壊とでもいうのでしょうか。目がおかしくなりました。
なんと言うか茎を見ても、短刀の画像の縦幅を無理やり引き延ばしたような、そんな見た目をしているのです。
包丁正宗はいくつかありますが、これは靖国神社に奉納されたものです。
包丁といっても現在の包丁サイズの4倍はあります。
極めについては研究の余地があるそうですが、「集古十種」によると正宗として奉納されたようです。
個人的には棒映りのようなものが見られたことや、匂い口が少し締まったようなところから応永備前のようにも見えたのですが、皆さんはどう見えますか?
⑥とにかく美しい明治の大小拵
鞘の漆塗や螺鈿も勿論綺麗ですが、付いている金具もとても美しい。
明治頃の拵なので新しい分綺麗に残っているというのもあるかもしれませんが、流石明治時代。どこを見てもただただ溜息が出るほどに美しい。
⑦終わりに
まだまだ沢山面白いのがありました。
この展示会は様々な武器の形にフォーカスを当てた展示会で、良くある刀だけの展示会とは違います。
刀と言えば良くみる以下のような形を想像しますが、いかに殺せる武器を作るか、という視点で見た長い歴史の中の武器の形態変化はまた自分自身の世界観を広げてくれました。
刀の美しさを堪能する展示会も良いですが、こういった知の拡張が出来る展示会はとても楽しめました。
5/22まで刀剣博物館でやっていますので、興味ある方は是非行かれてみてはいかがでしょうか!
あと明石国行も展示されていました。
やはり明石国行はいつ見ても美しい。
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)