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現代刀の価値が高まった瞬間

少し前の話ですが安藤刀匠が手掛けるアズールレーン(以下アズレン)コラボ小刀1振38.5万円(限定30振)が開始5分ほどで完売したそうです。

画像出典:Yostar OFFICIAL SHOP


これには安藤刀匠ご本人もびっくり。



アズレンプレイヤーが可処分所得の多い男性層中心であるからか、価格は38.5万円でしたが何のその。
現代刀はアニメやゲーム、現代アーティストなどとのコラボにより新しい付加価値が生まれ、そこが昔の刀にはない強みとなるのではないかとこのブログでも何度か書いていましたがそれが形となって現れたような気もして個人的にも何だか嬉しいです。

さて、小刀で38万円近くという金額が認められたというのは刀業界としても驚くべきことなのではないかと思うのです。
12~15万円位でもなかなか売れない、という認識が多いのではないかと思います。
なぜこの価格帯でも一瞬で売れたのか個人的な予想を書くと、

①38万円をぱっと出せるプレイヤー層だった事
②刀の相場観を変に持っていない層だった事
③アズレン白龍刀のストーリーを引き継いだ小刀であった事
④限定30個(再生産の予定なし)である事


①は文の通りで、②の刀の相場観というのは時に邪魔となります。何もデザインのない小刀が○○万円位、という変な相場観を持っていなかった故に、38.5万という数字を高いと捉えて入口で撤退しなかったのは大きいと考えます。(現在刀を良く知る人達からすればなかなか踏み込みずらい価格帯にも思えますので)

③は今回7周年記念イベントで白龍の刀が初めてお披露目され、製作秘話などがステージのトークイベントで行われました。
そこで刀身彫刻の柳村さんが「白龍の刀は職人生活30年の中で一番硬く、従来の工具では滑ってしまい上手く彫れない。工具をタングステンの物に見直して4ヵ月かけてようやく彫れた」という話や、安藤刀匠の「白龍の強さが刀に現れたのではないか」という話が出た際に会場が笑いに包まれましたが、これは白龍のキャラと刀の性質が上手く嚙み合わさった故に起こっていた笑いだとも思うのです。(白龍というキャラの性格や性質を知らずに会場の雰囲気からの予想だけで書いているのでもし違っていたらごめんなさい)
そしてその流れの中で発表された小刀が今回のものであった事をふと思い出します。

白龍というキャラを上手く体現していた白龍刀が出来上がった事、その白龍刀と同じ職人が作る小刀であるからこそ、白龍と同じ刀を所有しているという所有欲を満たせるのではないかと。
これがここでいう「ストーリー」です。

加えて④の限定30個という数字もまた大事な事かと思いました。
明確に言えば全て手作りで同一のものは存在しないので「限定1個の物が30個ある」という捉え方の方が近い気もしますが。

刀を良く知る人からすれば他の刀匠に小刀を作ってもらい「白龍」の彫を入れて貰えばもっと安く作れるんじゃない?と考える人もいるかもしれませんね。
ただこの場合、③のストーリーを汲んだものにはならないわけです。
職人も違いますし公式が出したものでもありませんので、「白龍と同じ刀を所有している」と考えるには難があります。
(そもそも版権絡みの物を無許可に制作する事は普通出来ませんし、職人も受けてくれないはず、という話は置いておいても)

ましてや刀の世界を全く知らなかった人が「小刀を作ってもらう」交渉をするというのは職人探しも含めて物凄くハードルが高いと思いますし、中にはルーズな職人や約束を反故にする人もいるのでトラブルに巻き込まれる可能性もありえます。
今回で言えばアズレンというコンテンツを作り上げてきたYostarという会社の努力や版権に関わるライセンス料、製作の調整などの手間賃などもろもろ乗っていると考えれば、別に38万が高いとも思えないのです。

長くなりましたが、今回のように現代刀の価値が上がる流れというのは素晴らしいことに思いました。
こういう流れが形は少しづつ変われど続いていくと良いですね。

最後にこれは個人的な予想ですが、恐らく同じことを刀剣乱舞でやっても 5分で完売という同じ結果にはならないと思います。
それは刀剣乱舞ユーザーが①の38万円をぱっと出せるユーザー層でない可能性が高いから、という理由です。
あとそもそも論として刀剣乱舞は対象となる刀が決まっている事も多いので(例えば名物○○など)、なかなかオリジナルの刀を想像で作り出せないというのはありますね。
それは所有欲という意味でも少し差が生まれそうです。
白龍の武器として登場した刀と、刀そのものが刀剣男士になっている違い、ストーリーの受け取り方の違いもあるかと思うのです。
ちょっと最後文章がややこしくなってしまいました。


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き刀ライフを!

アズレン7周年イベントの時のことは以下にまとめています。

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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