30歳♂が初めて刀を買うまでの体験記
今32なので2年前の話です。
顔はプロフィール欄からご覧下さい。
当時刀友達はゼロ、周りに刀に興味のある人もおらず、美術館に行く時は常に1人です。
刀を手に取ってウフフしたいと思いつつも考えてみれば一度も触った事がないので想像が出来ません。
そんな状態でした。
①初めにやったこと
まずどこで刀を持てるか調べました。
すると大体、観賞会や刀剣店が検索でヒットしますが、どちらも初心者にはハードルが高く悩んでました。
その時たまたま水木良光刀匠 の初心者講座が開催されていて参加。
水木さんの作刀された刀を用いて、鑑賞作法や、持ち方、刀の見どころや手入れ方法など教わりました。
その時の参加者は10名程いて、私以外全て女性でしたので女性の方は参加しやすいイベントだったと思います。
水木さんはとても優しい方で所作一つ一つの理由も含めて丁寧に教えて下さるので、
初心者の方にお勧めです。
②初心者講座の次にやったこと
実際に刀を手に取ると何ともいえない高揚感があり、もっと手に取りたいと思い、勇気を出して初心者歓迎の観賞会(刀剣連合研究会、刀ネコ、その他)に計3回ほど1人参加しました。
その中で初心者向けプチ鑑定会みたいなものがあり初参加。
鑑定と言っても何も分からないので3振り全部虎徹と入れて×になったのは良い思い出です。
計10回位刀を持つと、持つ時の緊張(手の震えとか)が少しづつなくなり、段々と刀欲しい欲が強くなってくるのを感じました。
③遂に刀欲しい欲がMAX
刀を買いたい!となった時、ネットか刀剣店か悩みました。
ネットは楽だけど手に取れない、刀剣店は行ってみたいけど初心者1人で入るにはハードルが高い。。
行っても年齢的に相手にされないだろうと思いもあり、 暫くネットで刀剣店を調べては寝るだけの日が何日か続く事に。
ヤフオクは偽物や、刃切れや刃欠けなど状態の悪い刀が多く紛れるなど通常の刀剣店でとても売れないような刀も多く出品されているので、完全に玄人向けです。
初めての刀をヤフオクで買って騙され刀を嫌いになってしまう人も多いそうです。
何でもそうだと思いますが本物はそもそも高いです。(そして買うのであれば出来れば直接見た方が良い)
ネットで買う場合はどちらにしても写真だけで判断しなければならないので、届いてから期待していたものと違うなど認識のズレが発生する事がリスクだと思います。
④そして刀剣店巡りへ
結局刀を直接見てみたくなり刀剣店に行く事に。
初心者講座で刀の扱いを少し習っていたのでそれも自信になっていたのかもしれません。
そして都内の以下9店舗を候補に選び、勇気を出して行く事に。
神田藤古堂
真玄堂
盛光堂
誠友堂
銀座長州屋
霜剣堂
泰文堂
刀剣柴田
飯田高遠堂
因みに銀座近辺だけでもこれだけ刀屋さんはあるのご存じでしたか?!
私はネットで検索したとき衝撃でした!
(以下の来店順は上記店名順とリンクしていません)
⑤1店舗目初めての刀剣店に到着
ドアの前で取り敢えず写真撮る。
でもなかなかドアを開けられない。
(※下の写真はイメージです。最初に訪れたお店はここではありません。
ここは最終的に購入を決めたお店です)
緊張感がやばい。
何というか若造が入ってくるなオーラが凄い。
そして一度引き返す。
しかし折角来たので…と勇気を振り絞って入り、「こんにちは」。
会釈して下さる。
店内を見まくる。
美術館と違い見渡す限り刀で興奮。
しかも刀との距離が凄く近い(手を伸ばせば届く距離)
暫くしてお店の方が声を掛けて下さった。
「刀に興味あるんですか?好きな刀あれば言ってください」
「はい…(会話が続かない)」
好きな刀はある?と聞かれてハッとしたんですが、どんな刀が好きか自分でも分からない状態でした。
これは初心者あるあるらしいです。
後に刀の好みは何振りも見て段々出てくるものと別の刀剣店の方に言われました。
その通りでした。
そして他の刀剣店に行っても暫くは会話が続かない問題に悩まされる事になります。好みとかあれば話が盛り上がるかもしれないんですが、好みが分からないので致命的です。
⑥刀剣店の方と「話が続かない時」の対策
今振り返ると会話がスムーズに進んだ時と進まない時があって、以下のように言うと話が繋がり易いと感じました。
「初心者で何もわからないけど初めて刀を買いたいです。どうすれば良いでしょう?」
同じ不安を感じてる方は言ってみてください。
刀を見ながら丁寧に教えて下さると思います。
結局1店目では「刀を手に持ちたい」と言う事が出来ず、眺めるだけで退店。
2店目、3店目も同じ。
どうしても言えません。
刀剣店のドアを開けるのだけ慣れてきました。
⑦心が折れる4店目と5店目
そして4店目で初めて「刀を持たせてもらえますか?」と聞けました。
この言葉を言うのにどれだけ勇気を振り絞ったことか。。。
ところが「…すいません」と一言。
心が折れ退店。
5店目も「刀を持たせて頂けますか?」と聞いた所、
「私はアルバイトで店主が今不在なので刀をお見せできません」と返答が。
本当かもしませんが、遠回しの拒否と感じ退店。
(後日2回目も行くのですが同じ対応でした)
気合を入れて髪を短く切り、↓みたいな服装で行ったのですが残念です。
(因みにもう一度書きますが、来店順は上記店名順とリンクしていません)
⑧やっと刀を手に取って見せてもらえた6店舗目
立て続けに断られた事でメンタルが強くなりました。
駄目元と考える事で、会話もなんとなく出来るようになってきて、その甲斐もあってかそれ以降の刀剣店では快く見せて頂けました。
今思えば断られる確率の方が低いので、ただ運が悪かっただけと思うようにしています。
失敗談を続けて書きましたが、多くの刀剣店では気になった刀を手に取って見せて頂けます。
前に書いたように「事前に購入意思がある」事を伝えるとよりスムーズにいくと思います。
ただしいきなり重要刀剣以上は見せて頂けない事が多いのも事実。
(見せて頂けても渋々といった感じ)
お店側も見知らぬ人がいきなり刀見せては不安になるのは普通の事です。
安めの刀でまずは鑑賞所作を見て頂くのが良いと思います。
正しい鑑賞方法は大事ですが、最初から全部上手くやるのは無理なので刀を丁寧に扱う姿勢が大事と思います (刀を刀枕に置く時慎重にするとか)
刀屋さんを長くやってると所作で刀が好きな人か直ぐ分かるそうです。
⑨正しい鑑賞作法
参考までに、刀の正しい鑑賞作法を知りたい方は以下がおすすめです。
(刀剣ワールド提供)
⑩刀剣店訪問2巡目で候補店を絞る
そんなこんなで刀剣店に1人で入るのに慣れてきたので1度断られたお店含め2回目行く事にしました。
鑑賞にも慣れてきたのでもしかしたら2回目は印象が変わるかもという思いもありました。
しかし2回目も印象変わらず。
9店の中から雰囲気の合いそうな2店まで絞りました。
(展示されてる刀を見てもどれが欲しいか分からないので店員の人柄で選んでいた)
⑪ある刀屋の対応が生理的に無理
ある時その内の1店に行った際、 ちょうど常連客が居て、そこに別のお客さんが刀を持って来店した所でした。
お客さんが店主に刀を渡すと、店主は刀をチラッと見たあと「良い刀です」と一言、常連客と雑談(よそ見)しながら刀を片手でポンと返してました。
きっと刀の良し悪しが瞬時に分かり刀の扱いも慣れてるからでしょう。
でも人と刀への対応がどうしても受け入れられませんでした。
見方を変えればそのお店が常連客を大切にしてるとも取れるのですが。。
良い刀は大切に、そうでもない刀は適当に、みたいな印象をその対応から感じてしまいました。(実際にその刀がどうゆう物だったのかは不明)
いわゆる生理的に無理みたいなやつです。
⑫霜剣堂で買う事を決めた
そんなこともありそのお店はやめて、最終的に霜剣堂で買う事に決めました。因みに私の場合はこの刀が欲しいからこの店に決めた、というわけではないです。
■決め手
・刀を見せて頂いた後、店主が刀を鞘にしまう際に刀を見て微笑む
・良い物は沢山見た方が良いと見せて下さる
・新規客と常連客への対応が絶妙
最初は例のごとく「初めて刀を買いたいけど何もわからない」という事を伝えました。
すると製作時代を遡るように刀を順々に5振程持たせて下さり時代毎の特徴を教えて頂きました。
最初の来店で3時間位いた記憶です。
(ここから刀の購入を決めるまで6回位お邪魔する事に)
その中で初めてこれは良い!と思う刀に出逢いました。
それがこの刀。
持った瞬間に明るい刃がぱっと目に入り、傾けると更に刃文の中に線(金筋)が光る。
心を揺さぶられました。
綺麗としか言えない語彙力の無さを悔やみつつも、そんな事がどうでもよくなる程美しかった。
越後守包貞は結局トータルで1時間位見せて頂きました。
⑬もう一振り気になる刀が
出して頂いた刀を全て見終えた後、何となく店内に飾ってある刀が気になりました。
ぱっと見は越後守包貞の方が綺麗です。
ガラス越しに見てると何も感じないのに、手に取った瞬間全く別物になりました。
綺麗+「何か」
「何か」の正体は感じるもの?
綺麗と思う刀は沢山あるのですが、今になって思うのはこの「何か」を感じる事が滅多にありません。
でも買うのであればこの「何か」を感じた刀を買うべきと思います。
言葉で表現できないのですが、恐らく刀を沢山見て買った経験がある方はこの何かが分かるのではないでしょうか。
魅入られて目が離せない、惚れる、そんな感じでしょうか。
私の場合は家に帰ってからも脳裏に刀身が焼き付いて離れない状態でした。
結局この日は翌月にある展示即売会の案内だけ頂き、帰りました。
⑭いざ霜剣堂本店へ
2日後、刀を見た興奮が抑えきれなくなり急遽お邪魔する事に。
霜剣堂は2店舗あり、1回目は帝国ホテル店、2回目は原宿店(本店:下の写真)に行きました。
お店が違えば店員さんも違うので初めてのお店です。
お店の中は刀がずらり。
以下のサイトに店内写真が載ってます。
touken-hiroba.jp/blog/31392.html
入店して暫く立ち話してると店主の方が見え、中央のソファに誘導されました。
暫く硬直しながら座って待機。
見てごらん、と次々に刀を見せて下さいました。
刀枕がテーブルに4つ置かれるのも初めての経験。
素人でも感じる名刀オーラ。
とても買える代物ではありません。
刀剣店巡りをする中で手に取ることを断られる事もあったので、ここまで見せて下さる事がとても嬉しく、なぜ初心者にこんなに見せて頂けるんですか?と思わず聞くと、
「刀が好きそうだから」と。
こんなお店もあるんだと感動しました。
(皆さん、こんなお店もありますよー!)
また初心者程良い刀を見た方が良いとも言われました。
良い刀を沢山見ると、それがベースになり悪い刀を見たときに違和感を感じると。
⑮良い刀が見れるオススメの鑑賞会
良い刀をなかなか見れないという方は月1開催の日本美術刀剣保存協会が主催している鑑賞会がおすすめです。
初めての方も多く参加し易いです。
但し初回参加はマナー講座を受ける必要があり、これが半年待ちとかの状態なので、早めに申し込んでおいた方が良いです。
⑯展示即売会当日
そして展示即売会の日を迎えました。
入るなり店主の方がこれあなたに良いと思うんだけどと一振持ってきて下さいました。
応永備前康光の太刀。
新刀は明るい刃がぱっと目に飛び込んできやすいので初心者に人気。
でも目が肥えてくると古刀が楽しめるようになってくるからこの刀は長く楽しめるよと。(刀が見えるようになってくると地鉄や刃中の働きが楽しめるようになる為)
でも店主の方曰く、それを超えると最終的に時代は関係なく楽しめるそうです。
その康光がまた凄く良かった。
姿がまず超好みでした。
片手打で小ぶり、姿が鎌倉期に似てる。
目を凝らすと映りが出ていて刃文は直刃調で穏やか。
他の刀も見てから決めようと思い、3日間位通いつめて30振程見ました。結局この刀と初日に見た刀で最後まで悩み続ける事に。
⑰悩み続ける1週間
即売会は6日間やっていて、始めの2日間と最終日に行きました。
2日目店を出た後もどちらにするか決めきれなかったので、最終日に残ってる方にしようかなとか考えていました。
するとそこから奇跡が。
3日間連続で夢に出てきました。
初日に「何か」を感じた刀です。
刀に呼ばれてる!!
ただ恋焦がれてただけと思いますが、これで気持ちが固まりました。
後はこの3日間で売れてない事を祈るばかり…
朝起きるなり駆け足で入店し、 「まだありますか?」と聞いたら、
「ありますよ」と。
⑱終わりに
長くなりましたがこれが私が最初の一振りを迎えるまでの話です。
最後まで読んで下さった方ありがとうございました。
私はこの刀を買ってからこの刀を綺麗に飾る為の展示ケースを作りたいと心に決め、サラリーマンを辞め「刀箱師」として活動を開始しました。
なのでこの刀の購入をキッカケに人生がガラっと変わったといっても過言ではありません。
買うまで気長にお付き合い下さった刀屋さんには本当に感謝です。
これからも初めて買ったこの刀を大事にしていきます。
そしてよく刀を買って飽きてしまうという話を聞きますが、「何か」を感じて買ったおかげか、毎日1年間見続けても全く飽きが来ません。
皆様も是非刀との素敵な出会いがありますよう祈っております!
買った際は是非御刀を見ながら鑑賞会などで語りあいましょう!
購入談も色々聞かせて下さい^^
因みにこの1年後に2振り目を迎える事になるのですが、その際の購入体験記はこちらからご覧いただけます。
今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はハートマークを押してもらえると嬉しいです^^
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き御刀ライフを~!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?