財布に厳しい五ヶ伝ランキング
日本刀の中でも古刀と呼ばれる室町時代以前の刀には「五ヶ伝」と呼ばれる大きな区分けがある。
これは地域ごとに作風を大別した言い方であり、例えばこの中に九州地方(筑州)や北陸地方などの刀は含まれていないので五ヶ伝で全ての刀を網羅できるわけではないが、刀の好みを語る際に「五ヶ伝の中で何が好き?」と語られることは愛刀家の中でも多い気がする。
因みに五ヶ伝とは今の岡山県あたりで栄えた備前伝、神奈川県で栄えた相州伝、京都で栄えた山城伝、奈良県で栄えた大和伝、岐阜県で栄えた美濃伝を指す。
一番歴史が古いのは大和伝と考えられており、歴史が浅いのは美濃伝。
美濃伝は歴史が浅いと言っても戦国期には刀の一大産地として大いに栄えているから歴史が浅いからといって劣っているという考えは誤りといえる。
刀を買うと次は少し良い物にランクアップしようかなと思いがちだが、突き詰めれば突き詰めるほどに財布に厳しくなる五ヶ伝ランキングを主観で作ってみた。
好きになるのは簡単だが、好きなった後が辛いですね…。
5位
美濃伝。
歴史が浅い分値段も安い物が多く、兼氏や孫六兼元、兼定(ノサダ)、村正などは値が張るが、それ以外の刀工になると途端に安くなる傾向がある。
基本的に五ヶ伝の中でも最も財布に優しい伝で、上記4工でも他の伝法に比べるとまだ財布に優しい方ではないだろうか。
三角系のような尖った刃文が多い。
4位
大和伝。
歴史が古く寺院との結びつきが強いと考えられ、憎兵の為に作っていたとされる事から在銘が極小でほとんどが無銘。
刀は作者銘が無いと値段が安くなるので大和伝も必然的に極め物が多く、値段は安め。
直刃や小のたれの刃文が多く一見地味に見える作が多いが奥深く面白い作が多い。玄人で好きな人が多い印象。
在銘を探し始めると数も少なく大変だが、無銘で良いなら特重に指定されているような出来でも比較的1000万円前後で済む。
これはやはり市場の人気度から来るものと思われる。
3位
なし。
決める事が出来ない。
2位
相州伝、山城伝。
正直なところ1、2位は全部同列でも良いかと感じたが。
相州伝は正宗を筆頭に新藤五国光や行光、貞宗、長谷部、廣光など、これまた人気な刀工が多く値段が高い。海外でも非常に人気で特に近年値段が異様に高い。
基本無銘ばかりゆえ(南北朝以降の長谷部や廣光などの作になると在銘が多くなる)、鑑定書によって値段が大きく変わる。
相州上工と呼ばれるところを好きになってしまうと特に金銭的に辛い思いをする。
ただ数はあまり無いので遭遇率が低く、買う頻度が低くなる事を考えると、お金の減りは若干ゆるやかではないかと思い2位とした。
山城伝は粟田口派と来派が非常に人気であり、在銘がまま残っている事から高い物が多い。勿論、三条や五条国永などの古京物も人気であるが現存数が少なすぎるのでここに嵌っても遭遇率が低すぎる事からあまりお金は減らない気もする。
ただ最上位の良い物を見つけてしまうと一度に5000万位がドカンと減ってしまうかもしれない。
まぁしかしこれは正宗などの作も同様。
山城伝は品ある姿とそして地鉄の綺麗さに魅了される人が多く、粟田口になるとその地鉄の綺麗さから無銘でも直ぐに売れるほどの人気がある。
しかしこちらもなかなか遭遇率が低いので買う頻度が低くなり支出の割合は減る気もする。
1位
悩みに悩んだが備前伝を一位とした。
理由は「良い刀の現存数」。
備前伝は日本刀の王様と言われるほどに圧倒的に栄えた事から現存数も非常に多いが何より出来の良く状態の良い物も多い。
人口の多い中国がスポーツ強いのと同じ理論といえば分かりやすいかもしれない。
備前伝のトップはやはり長船の祖である光忠や、古備前友成、正恒、古一文字則宗などを筆頭に長光や景光など書ききれないほど数多の名工が並び人気も非常に高い。
刃文も炎のような荒々しい丁子刃から直刃まで幅広いが、そこに「映り」と言われる幻想的な景色が加わる。
備前伝と一括りにしているが、その中でジャンル分け出来るほどに幅広い。
「長船コンプリートしよう」とか「古備前、一文字、長船、全部揃えよう」とか色々な買い方が出来るが1つ1つの出来が良い物が多く値段も高いので財布には凄く凄く厳しくなると想定される。
無銘でも著名工作なら特重で1500位するが、在銘になると3000以上はするだろう。
現存数が多い分、好みの作を見つけやすいかもしれず、次から次へと目移りしてしまう恐れがあり出会いの機会も多い。
故にお金は幾らあっても足りなくなると想定される。
終わりに
という事で完全な主観ですが、財布に厳しいランキングをまとめてみました。皆さんの感覚は如何でしょうか。
1兆円くらい欲しいものですね。
今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き刀ライフを!
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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