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目的もなくただ何となく鐔鑑賞

刀装具を鑑賞する際に今日は彫の部分を美濃物と比較してみようとか、鐔の造形から時代の流行を探ってみようとか、同じ作風を探し出して並べて類似点を探そうとか…何か目的を持って鑑賞すると何かしらの発見は得やすい気がするが毎回そればかりしていると疲れてしまう。
という事で何を考えるでもなくただ何となく鐔の鑑賞を。
「綺麗~」とか、「いいな~」と何となく眺めている鑑賞の時間が個人的にはとても好きです。

今日の1枚はこちらの尾長鳥が描かれた鍍金鐔にしてみました。

金という派手さや切羽台と櫃孔の大きさやバランス関係、唐草の根が下部から生えだして広がっている点、唐草の鋤出し彫の様子などから個人的には桃山頃の作ではないかと考えているが、あまり細かく見出すと疲れるので今日は何となく全体をぼんやりと楽しもうと思う。

うーん、優雅で美しい。
考えても見れば唐草の上を尾長鳥が飛ぶというのは古来からある図柄とはいえ、なかなか発想出来ない構図にも思うが最初に考え出した人はどのような視点からこの2つを組み合わせようと思ったのだろう。

という事で今日の鑑賞は終わり。


と思ったのですが、何となく見ていても何となく気づきや疑問が生まれたり。

まず気付きの点。
多くの鐔は大体櫃孔や切羽台の内側など見えづらい部分は穴を開けたままの断面をしている事がまま多い気がするのですが、この鐔はあえて薄い板を貼り合わせて断面が見えないようにしているなど、細かい点への気配りが感じられ相応の人へ納めたのではないかと伺える点。

次に疑問として、表は尾長鳥が2羽、裏には尾長鳥が1羽描かれているが、なぜ数を同じにしなかったのだろうか。
何となく下に空間があれば1羽足したくなるものではないだろうか。

下の空間に1羽足したくなりそうなものだが…

なんとなくそう思い偶数は縁起が悪かったりするのだろうか?と思い調べたら、昔から奇数吉、偶数凶という考えが日本ではあるそうで。

日本には古墳時代から飛鳥時代にかけて「陰陽五行」の思想が伝来したとされ、古代の政治や行事、風習に強い影響を与えてきたようですが、その陰陽五行の思想では、奇数は縁起の良い「陽」、偶数は縁起の悪い「陰」と考えられているようです。
そうした考えから縁起物の鐔で尾長鳥を偶数にするのは避けたのかもしれないと思ったり。

現代でもそうした考えを引き継いでか分かりませんが、例えば結婚式の御祝儀などは別れを連想させるから偶数万円はNGなどといった風習がありますね。個人的にはどうでも良いとは思ってしまいますが…。

という事でただ目的もなくぼんやりと鑑賞していただけですが、意外に楽しめました。
静かな夜に鐔と向き合う時間は良いものですね。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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