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正宗十哲展で見た「島津正宗」の真相

先日ようやく正宗十哲展を見に行く事が出来ましたが、京極正宗や稲葉郷などはじめ、よくもこれだけの名刀を集めたものだと感心しきりの展示会でした。
その中でも個人的に特に大ニュースというか驚いた点で言えば「島津正宗」の新事実でしょうか。

島津正宗の伝来について刀剣ワールドさんのHPから抜粋すると以下の通り。

島津正宗の伝来について
「享保名物帳」によると、本刀剣は、紀州徳川家から徳川将軍家に献上されており、その5年後には、5代将軍「徳川綱吉」が、江戸の加賀藩邸へ御成の際に、金沢藩主の「前田綱紀」へ下賜したとあります。
1723年(享保8年)、前田綱紀が本阿弥家に島津正宗を鑑定に出し、300枚の折紙が付けられました。
その後、江戸幕府8代将軍の「徳川吉宗」へと献上されています。
1919年(大正8年)に発行された「刀剣名物帳」によると、1862年(文久2年)、「孝明天皇」の妹にあたる「和宮親子内親王」が、14代将軍「徳川家茂」の元へ降嫁した際に、徳川家茂は、島津正宗と金千両を添えて、孝明天皇へと献上。
しかし、そのあとに起こった政局の混乱の中で、島津正宗は長い間行方不明となりました。(引用元:刀剣ワールド

この島津正宗は継平押形に掲載されたものと同様物が2014年に見つかった事で、京都国立博物館に収蔵された物が島津正宗と見られていましたが、実はそうではなかった、というのが今回の正宗展で明らかにされています。

「継平押形」より


・なぜ京博の正宗は島津正宗ではないのか?

一度は島津正宗と見られた京博の正宗。
江戸時代後期に徳川将軍家が収蔵していた刀剣を収録した「名作押形集」には継平押形に掲載された島津正宗とは別の押形が掲載されており、そこには今村長賀氏が島津正宗の由来についても書き込んでいたとのこと。
更に「本阿弥家留帳」には1697年に本阿弥家が島津正宗を鑑定した記録が残されており、そこには茎が短いとの記載。
対して京博のものは茎が長く記述と一致しない。
これに加えて研究により継平押形がどうやら江戸後期に作られた偽書の可能性も浮上。
以上の事からこれを根拠にした京博の正宗は島津正宗ではないという判断となったようです。


・島津正宗は今どこにあるのか?

そして本物の島津正宗は今どこにあるのか?
なんと、今回の「正宗十哲」展で展示されています。
そしてなんとなんと刀剣ワールドさん所蔵の正宗が島津正宗だったとのこと。

そしてこの島津正宗には後藤一乗が製作した衛府太刀拵も付帯。
後藤一乗の記録から孝明天皇所持が確認された。
同じく14代徳川家茂が孝明天皇へ島津正宗と衛府太刀拵の製作費用である金500を献上したと記録に残り、更に1862年に衛府太刀拵の製作を始めたと一乗のメモに残されているという。

つまり正しい押形とも一致し、衛府太刀拵から孝明天皇所持を裏付ける資料が揃っている事から、こちらが島津正宗と断定されたようです。


・終わりに

展示会を訪れたのは3日程前ですが、日本橋での合同展示会などもありなかなか正宗十哲展についてブログをまとめている時間が無かったのですが、非常に素晴らしい展示です。
個人的には中でも今回の島津正宗に関する発表が一番の驚きでもあり、歴史が動いた瞬間に立ち会ったような気持ちにもなりました。

島津正宗の刀身と後藤一乗による太刀拵も展示されていましたが、刀身は新藤五や行光のような鉄の色をしつつもうねるような地景はそれらとは異なり、やはり正宗なのでしょう。
衛府太刀拵の鞘には螺鈿で麒麟と波が施されるなど感嘆する造り込みで、「共に素晴らしい、目がくらむ」の一言です。

今回の島津正宗は特別重要刀剣指定品ですが、間違いなく重要文化財以上の価値があるでしょう。
期間中もう一度行ってじっくり見てこようと思います。

尚、先に挙げた「名作押形集」には今まで知られてこなかったような名物刀剣の押形も載っているようでこれから継続調査が行われるようです。
何とも見てみたい…。
今回のように新資料の発見により埋もれていた名物が出てくる可能性は今後まだありそうです。
そう考えるとロマンがありますね。
尚今回の島津正宗新発見の根拠については「目の眼No569正宗の風」を参考に書いています。

尚、正宗十哲展は図録も素晴らしいですよ。
写真と押形両方載っているのと、何より相州伝の名刀図録になっています。
マストバイ(must buy)です。

正宗ではないですが展示されていた会津新藤五には沸映りがはっきりでていました。
相州には映りがない、が間違いである事が分かりますね。
見やすさの差はあれど古刀には何かしら映りが出ています。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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