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日本刀の焼入れや土置きの疑問

日本刀の焼入れといえば、高温で熱した後に急冷するというのが通説です。


①焼き入れについて

上記の動画では刀身が熱せられて真っ赤になっているので少し分かりづらいですが、刀身には焼き場土という泥が塗られています。
厚みの薄い刃部分には焼き刃土を薄く塗り、急冷される事でマルテンサイトと呼ばれる物質に変化します。
一方で鎬地などの刃ではない部分には焼き場土を厚く塗ります。
鉄の厚みも厚いので刃側と比べてゆっくり冷えていき、トルースタイトというマルテンサイトより少し柔らかい物質に変化します。(違ったらごめんなさい)

因みに以下の写真は黒部と赤部がありますが、刃文部の土置きが分かり易いように色分けされているだけで、実際は黒部も赤部も両方土置きされています。黒部より赤部の方が土が厚く塗られていると捉えて頂ければ。

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尚、焼き場土を全く塗らなければもっと早く急冷できるのでは?と思われるかもしれませんが、焼き場土を塗らないと刀身に触れた水分が一瞬で蒸発し、この水蒸気が刀身に水が触れるのを妨げて冷却効率を落とすらしいです。
このように焼き場土を塗る事で水に浸けた際に土に水が吸いつくので焼き場土を塗った方がより短時間で効果的に冷却できるそうです。

因みに焼き場土を塗らないで焼き入れする方法を裸焼きと言いますが、これはこれで一文字のような躍動感ある面白い刃文が付きます。但し刃切れが起こる可能性も普通の焼き入れに比べて高くなり難易度も高いのだとか。
裸焼きにトライされているのは確か小澤刀匠だったかと。


②当たり前はなぜ当たり前

と、こんな感じで日本刀は焼き場土を置いて焼き入れをするのが通説になっており、当たり前となっているとは思うのですが…。

例えば、

・水を氷水にしたらどうか?
・焼き入れ時に水温が上がるので焼き入れ時に横から氷を補充したらどうなるのか?
・炭酸水にしたらどうか?
・泥水にしたらどうなるのか?
・タンニンの含まれるお茶にしたらどうか?(黒錆を予め付けておく事で錆びにくくしたり出来ないか)

焼き場土にしても、泥でなくとも、1000°近くでも剥がれず、有害物質出さず、冷却効果高い、みたいな材質なり素材がもしあれば焼き場土に代わり使用出来そうな気も。

こんな感じで当たり前と言われている部分にも気になる事は多いです。
伝統を重んじる刀鍛冶の方が焼き入れする器にそのような液体を流し込むと、師匠の方から何しとるじゃ!ボケェ!というような怒号が飛んできそうな感じはありますが、当たり前とされている部分ほど変えてみると何か新しい発見もあったりしそうと思うのは私だけでしょうか。
まぁ既に沢山の方がトライされていて駄目だった結果今の方式になっている可能性も十分ありますが。


と、今朝このようなツイートをしたところ、刀匠の方から色々とご意見を頂けました。
まず氷水にする点については、急冷しすぎる事で刃切れが起こりやすくなるとのこと。他にも油や塩水なども試されているようですが、匂口に何かしらの問題が出るようです。

泥水もやられている方がいるのだとか。
こちらは水と比較すると成分の違いでしょうが、どのような影響を及ぼすのか気になります。

焼き場土の方で言えば、代わりになんとアスベストを試す刀匠までいたらしいです。
体調など悪くならないのでしょうか?笑


他にも寒い時期に作られた作と暖かい時期に作られた作で水温の違いから何か出来に違いなどあるのか、なども気になります。
大した違いは無さそうですが。
製作月まで入った作というのはあまり慧眼しませんが、もし鑑賞する機会があれば違いなど見比べてみたいです。


③終わりに

とにかく現代刀匠の方は古名刀の再現の為、色々な試みをされているようです。簡単に思い付かないような事も様々試されている事でしょう。
願わくばちょっと変わった事にトライして結果などをブログやYoutubeにまとめられている刀匠さんがいらっしゃるようでしたら是非教えて下さい。

また、刀匠さんの間で技術交流会などもされていたりするのでしょうか?
考えてみれば、大阪新刀を代表する助広は生涯に1700振近く作刀したといいますが、現在は年間24振縛りがあるので、60年間MAXで作刀しても1200振ちょっとです。
若い内は注文が殆ど入らない世界だそうですので、実際は生涯でも600振位が限界なのかもしれません。知りませんが。
古名刀を再現しようとした先人達がたどり着かなかった偉業に作刀本数が限られている中で辿り着くには至難の業に感じますが、助広のいた時代はネットは無かったので、失敗例を皆で共有したり技術交流を全国単位でする事でもしかしたら技術の飛躍に繋がるのかもしれません。
個人的には秘伝とされてきた方法などどんどん公開していけば、と思うのですが各流派の方針もあるでしょうしこれがなかなか難しいというのも分かる気がします。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

プロフ

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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