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刀の注文打ち。機械式ハンマーを使うのは嫌だと言う人もいるらしい。

刀を作る上で必要不可欠な機械式ハンマー。ペダルを踏むことでハンマーが打ち下ろされるので本来は3~4人必要な鍛錬を1人で行う事が出来ます。
刀匠の人数が減少した事によりやむなく1人で作刀されている方は多いです。
そんな事もあり機械式ハンマーの果たす役割は大きいので恐らく殆どの刀匠の方が導入しているわけですが。

この機械式ハンマーを使う事に対して「なんだか有難くない」という意見もあるようです。
大きな槌を持ち天高く振り上げて何度も打ち下ろす、刀匠には滴る汗、この刀はそんな努力の結晶、というような印象が好まれているのでしょうか。

今でも日本刀の鍛錬と言えば、以下のようなイメージを持たれている方は多そうですが、この伝統的な方法(古式鍛錬)を取っている方は奉納鍛錬等を除いてもはや殆どされていないのではないでしょうか。

(画像出典:刃物まつり

鉄は熱いうちに打て、とは良く聞きますが、機械式ハンマーを使った方が一度に叩ける回数は増えて(早く打てれば良い物が出来るのか、についてはは不明ですが)、狙いたい所も狙いやすくなります。
鑢掛けも茎などは手でかけているでしょうが、成形などはベルトサンダーなどを駆使して効率化を図る方も多いです。
ではこれらにより誕生した刀は果たしてありがたくないのか?

有難くない、と感じる人は刀そのものの出来云々よりも「4人集まって4人分の時間と労力を使って生まれた刀」という特別感を好きになっているのかもしれない。
まぁ理解は出来るのですが、どうも日本刀といえば古式鍛錬のイメージが先行しすぎているような。
古式鍛錬で刀を作る場合はそれに携わった人達の人件費なども掛かるのでコストも上がる事でしょう。1人で作る場合でも材料費や研ぎ代がかかるので100万ちょっとじゃ厳しいはずです。
なのでどうしても古式鍛錬してほしい場合は400万にするからお願い、こうゆう提案が出来るのであれば納得してくれる刀匠の方も多そうではあるが果たして。

因みに弟子の間(修行中)は古式鍛錬を行うようです。
以前刀匠の方にお会いした際に「独立して機械式ハンマーを使うのであれば、修行中ずっと機械式ハンマーを使った方が良いのではないでしょうか?」と訊ねたところ、刀匠の方が仰っていたのは「実際に手で打つ事で鉄の感触や師匠の打つタイミングが分かる。それらを知っていて機械式ハンマーを使うのと、知らないで使うのとではその後に差が生まれる」との事。
なるほどな、と感じた。
玉鋼は何度も叩いて打ち延ばす事で不純物が減っていくが、精錬前は不純物も多く個体差も多いのだろう。
それ故にそれらをどう打てば良い物になるのかという知識や感覚を身に付けるには師匠の様子を傍で見ながら見極める必要があるのかもしれない。
その感覚を高めた状態で機械式ハンマーを使えば機械式ハンマーを効率的に使いながらも良い刀が作れるというのは説得力がある。

最後に無鑑査刀匠の河内國平さんについての記事を引用させて頂く。

河内は人の手の感覚や呼吸に重きを置き、機械式ハンマーに頼らない伝統的な作刀方法を踏襲しながら、弟子たちに技術を教え込む。
横座と向こう鎚という、親方と弟子が呼吸を合わせて行なうことに、深い意味を感じるからである。
「大切なのは、手でやって、手を通して感じること。人が打つ向こう鎚をつきつめた一番の元は心や。でも、機械の元はモーターやからな」
そう言いつつも、機械式ハンマーを使うことを否定するわけではない。
河内の座る横座の後方にも機械式のスプリングハンマーが置かれている。
「実際、スプリングハンマーを使うことも結構あります。ただ、伝承するという意味があると思うから、弟子には必ず向こう鎚をやらせています。
やっぱり、呼吸を学び取って、持っていってもらわなあかん。
親方の呼吸があるでしょ、それに合わせて鎚を振るう。それだけは、できる人が誰もおらんかったら、一人では学べんでしょ」
(引用元:「日本刀」 第3話 『伝承したいからこそ手で作る』

私が質問を投げかけた刀匠の方と同じことを言っていた。
(因みにその刀匠の方は河内國平さんのお弟子さんではありません)

皆さんは機械式ハンマーを使い作られた刀200万円と、古式鍛錬をして作られた刀200万円、どちらが魅力的に感じますか?

因みに私は刀自体が魅力的であればどちらでも良い派です。
機械式ハンマーを使っていても刀匠の方がその1振にかけている熱量というのは変わらないでしょうから。

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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