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刀剣乱舞に出てくる獅子三所物について

ちょこちょこ進めている刀剣乱舞ですが、10周年イベントで進めやすくなったことで久々にログインしてようやく宝物である三所物が作れました。

©刀剣乱舞ONLINE

刀装具好きとしても刀装具をゲーム内で見れるのは嬉しいものがあります。
まだまだ注目の浴びづらい刀装具ではありますが、刀身同様に当時を生きた職人達の素晴らしい技術の詰まったものが多く現存しており、中にはそれこそ宝物として伝承されてきた物もあるので少しづつ刀装具人気も出ると嬉しく思います。やはり刀装あって初めて日本刀ですので。
(一番は刀剣男士ならぬ刀装具男士が出る事ですが、刀装具はいわば刀の拵に付く付属品なので1人の刀剣男士の周りに護衛隊のような感じで騒がしくなりそうなので出なさそうですね…。)

いずれにしても刀装具の人気が高まれば研究も進むでしょうし、美術館などでも拡大鏡を置いたりなど見やすい展示なども考慮されるでしょう。
現愛好家の人にとっても良い事は多いのではと思います。
そして何より刀より心理的にも値段的にも保管面でも圧倒的に買いやすいというメリットもあるので、刀よりも人口は増えやすいかもしれません。
そして今まで見られなかった刀装具から刀にはまる人なども出てきたら面白いですね。

という事で前置きが長くなりましたが、今回は刀剣乱舞の三所物に出て来る獅子三所物がどういうものなのかについて刀装具好きが触り部分だけざっくり書いてみようと思います。
因みに三所物とは「目貫、小柄、笄」の3点セットを表します。


①一匹獅子図目貫

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さてまずこの獅子の三所物の目貫について。
前足を大きく前に出して楽しそうに飛び跳ねている獅子の図は代々将軍家に仕えた「後藤家」がよく題材にしている画題です。
二匹で戯れていたら二匹獅子図、三匹で戯れていたら三匹獅子図などと呼ばれます。今回は一匹なので一匹獅子図です。
色は目貫や小柄、笄で黒色を見たら素材はほぼ全て「赤銅(銅に金を1~5%ほど混ぜたもの)」と思って問題ないかと思います。

なのでこの獅子目貫も勿論実在しています。
当たり前ですがそっくりですね。

画像出典:銀座誠友堂 目貫 無銘 後藤 獅子図目貫

因みに刀剣乱舞のものは赤銅地ですが、金無垢もまたあります。
将軍家ご用達のものだからか金無垢のものもよく見ます。
ただ中には銅に金を着せた物もあるので金無垢!と飛びつくのはご注意下さい。裏を見ると大体分かります。

初代祐乗作 「後藤家十七代の刀装具」より
初代祐乗作 「後藤家十七代の刀装具」より


②小柄・笄

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小柄も笄も一匹獅子でデザインされています。
目貫が獅子なら、小柄や笄などのデザインも獅子となります。
デザインが統一されていない物は三所物と呼ばれません
(が、中にはデザインが統一されていないものでも二所物などとして徳川宗家に伝来しているものも在るので昔は同じ拵に付いていた物を三所物や二所物と呼んでいた可能性もあります。)

さてこの小柄と笄の2つの色味については実際の組み合わせとしてはあまり見ない物となります。
まずこの中央に位置している獅子などを据紋(すえもん)と呼んだりするのですが、これは魚々子地の黒い板に後からはめ込んでいます。
そして、今回の刀剣乱舞の様に縁が金の小柄や笄であれば獅子の据紋は金である事が殆どです(植物の図など部分的に金を貼り付けた袋着技法などを用いている場合は別として)。
以下のような感じですね。

初代祐乗作 「後藤家十七代の刀装具」より

据紋が黒い時はというと、小柄や笄の縁も黒である事が多いです。
以下のような感じですね。

三代乗真作 「後藤家十七代の刀装具」より


なので刀剣乱舞の三所物などの色の組み合わせは実際の後藤家の獅子三所物ではほぼ見ません。(ほぼというか私は一度も見た事がないのですがもしかしたらあるかもしれないので「ほぼ」という表記にしておきます)
もしかするとデザインがかぶらないようにこの辺りはゲームで使用する為に敢えて変えていたりするのかもしれませんね。

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③終わりに

今回は触り部分だけ触れてみました。
因みに後藤家は室町時代から幕末明治頃まで17代続くのですが、その間に似たような図を沢山作っています。
獅子図も同様で刀剣乱舞と同じデザインのものを探すだけであればあまり苦労せず手に入れる事が出来ると思います。
基本的に作者銘は書かれていない事が殆どです。江戸時代中期以降になるとちらほら見ますが。

さてこうした三所物は勿論そのまま売っている事もありますし、自分で目貫、小柄、笄を探し出してきて三所物にする人もいます。
なかなか三所物セットで一匹獅子図の三所物を手に入れるのは難しいかもしれないので、別々で集めて今回の刀剣乱舞と同じ図のものを出来の良いしっかりした物で集めようとすると大体いくら位になるか想像すると80~90万くらいでしょうか。
見た目だけあえば出来はどうでもいいや、であれば10万位で揃う気もします。
尚、初代祐乗などで集めようとすると1000万円以上は必要です。
そもそも数が無いので物凄い困難な道のりになるでしょうが。
刀装具も刀同様に作者によって金額が左右される、そんな世界です。

最後に刀装具の何が面白いか?ともよく聞かれますが、うーん何でしょうね。
1つ、ルーペで細部を見ながら超絶技巧を感じるのは楽しいです。
後藤家などは無銘なので誰が作ったかを共通する手癖などを探し出して推測していく作業も面白いですね。
…そんな世界でしょうか。


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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