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金色の鐔について
色々な図録などを見ていてもなかなか金一色の鐔というのは見かけない。
ありそうでない、のが金色の鐔な気がする。
とはいえ実際に展示会などに足を運ぶと、飾太刀拵や兵庫鎖太刀拵には金の鐔が付いているのをよく見かける。例えば「徳川美樹館蔵品抄③」などにもいくつか金の鐔が載っている。
なので見かけない金色の鐔というのは、具体的には打刀拵や短刀拵に付くような鐔をここでは指している。
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画像出典:「刀剣 刀装具 徳川美樹館蔵品抄③」より
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画像出典:「刀剣 刀装具 徳川美樹館蔵品抄③」より
以下は半太刀拵に金鐔が付いているが、半太刀拵に金鐔はあまり見ない気がする。
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画像出典:「刀剣 刀装具 徳川美樹館蔵品抄③」より
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画像出典:「刀剣 刀装具 徳川美樹館蔵品抄③」より
金は昔から非常に貴重であったため、昔の物でいえば使用されるのは飾太刀拵や糸巻太刀拵など儀礼に用いられる格式高いものが殆どだったのではないかと感じる。
しかし金は高価だがいつの時代も人気なようで今も昔も少なからず作られている。
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幕末頃の金無垢鐔↓
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(画像出典:コレクション情報 金無垢金具糸巻き太刀拵)
さて今まで挙げたのは全て太刀拵であるが、では打刀拵などにはどういう金鐔が付いていたかと言えば、個人的には(金無垢鐔は)秀吉所用の大小拵についていたものや、細川の殿様のもの、あとは埋忠の物くらいしかまだ見た事がない。
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(画像出典:e国宝 朱塗金蛭巻大小)
上の秀吉の大小拵には元々は金無垢の鐔が付いており、現在は重美指定を受けている。
この大小拵は秀吉死後に形見分けされ、金無垢の鐔は浅野家に、それ以外は溝口家に渡ったため、鐔一対は別に重美に認定されている。後藤徳乗の作と伝わり、拵に合わせた姿は写真からでもギラギラが伝わってくる。 pic.twitter.com/xbEqX7nWTb
— よろいぐるい (@yoroi_gurui) December 8, 2017
以下は埋忠による金無垢鐔。
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「埋忠展」図録より
金無垢は特権階級の持ち物だった事は想像に容易いが、基本的にはそれ以外は金を着せたり、鍍金であったり、布目象嵌であったり、など金に見せているだけの場合が殆どである。
しかしこれらの鐔も当時は相当格式高いものであったように思うし、こうした鐔を付けていたのは大名クラスだろう。
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刀剣店や即売会をブラブラしていてもなかなか金一色の鐔は見かけない。
そんな折見かけた以下の鐔は鍍金の短刀鐔であるが、ありそうでなかなか無い珍品に感じる。
朱色の短刀拵などに同じく尾長鳥をモチーフにした金の三所物などが付いていたのだろうか。
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この鐔については以前以下に詳細をまとめているので興味あればご覧ください。
是非街中で金色の鐔を見かけた際は注目して見るとちょっと面白いかもしれません。ただ中には雑な現代の鍍金品もあるので金色なら何でも良いわけではないですが。
そんな時はルーペで細部を見てみると分かることも多いです。昔のものは手で彫ったような手作業感が感じられます。
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それでは皆様良き刀ライフを!
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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