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加納夏雄の金無垢鎺
今回は以前日刀保山梨支部で拝見させて頂いた加納夏雄の金無垢ハバキについて詳細など書こうと思います。
夏雄のハバキは現在確認されているもので3点しかなく、本品のほか代表的な物だと水龍剣に付帯の鎺、残る1点はボストン美術館所蔵の銀無垢の文字図の鎺とのこと。
という事で金無垢に絞ると夏雄の鎺は水龍剣付帯のもの以外にはこれのみという事で希少も希少な鎺になります。
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夏雄大鑑所載品。
明治14年本阿弥平十郎様とあり、本阿弥家の注文と思われる。
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銘には「なつを刻」と刻まれている。
きざむ、と読むのだろうか。
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彫を見た時の印象としては花がやたらと立体的に作り込まれて彫られているのに対して、葉はというと片切彫で彫られており少し存在感が消えているという点。
これの効果であるのか、ぱっと見た時に花に目が行くようになっている気がする。これも加納夏雄ゆえに成し遂げられる技なのだろうか。
更によく見ると花の中心部の雌しべや雄しべを表した丸い実のような物のうち1つが抜け落ちているように見える。
所有者の方曰く、この実について角度を変える事で実があるように見え、これが夏雄の鏨の魔術なのだとか。
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写真で見るとそうでもないが肉眼で見ると錯覚がある角度がある。
あらためて暫く表裏のデザインを眺めていると、銘のある方はつぼみが、そして反対面は花が開いている。
枝の葉を見てみると、角度は違えど同じ枝の花を時間軸をずらして描ているようにも見える。
「なつを彫」ではなく「なつを刻」としたのは、もしかすると夏雄はこの花が花開く時間の流れを表す意味で時を「刻む」という「刻」の一字を入れたのではないか、そんな事をふと思ったのでした。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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