見出し画像

愛刀調査① 短刀の茎をX線撮影した話

(※非破壊検査は対象を破壊することなく傷などを検出する技術です。そのため刀身を傷つけるものではありません)

刀のX線撮影、やったことのある人は殆どいないのではないでしょうか?
思いつきでやった所、3万円程度でかなりの結果が得られたので紹介します。
とはいえ、どこでどう撮るのかなど見当もつかない方もいると思いますので、X線に無知でなんのツテもない私が体験したことを書こうと思います。

1.X線撮影をしようと決めた経緯

以前下の記事で短刀を購入した体験談を書きました。

購入したのは無銘短刀でしたが、家に刀を持ち帰り2週間程茎を凝視してると何か鏨の跡のようなものが見えてきました
その時の様子がこちら。

肉眼では限界に感じていたところ、フォロワーさんから押形を取って見れば?とアドバイスを頂きとって見ることに。
すると、、なんとそれっぽい字が浮き上がってきました


そして何やら裏側にも鏨跡が

しかし裏側はいくら見ても分かりません。
そこでちょうど刀をX線にかけたという何かの記事を見かけたので、「そうか、X線撮ろう」と思い、ネットでX線撮影出来る研究機関を探す事に。

ツテがあるわけではなかったのですが、何とかなるだろう的な考えでネットで適当に検索して、問い合わせメールを送ったところ、なんとやらせてもらえることに


2.どんな場所?

名は伏せさせて頂きますが、都内某所の研究センターで、主に中小企業向けに各種試験の協力をしているところです。
非破壊検査以外にも様々な試験を依頼する事が出来ます。

画像2


3.試験開始から終わりまでの流れ


①担当の方とメールで試験日を決める
この時は試験機が空いていたので2,3日後に直ぐ開始出来た記憶ですが、試験機が空いていないと数週間かかる場合もあるそうです。


②試験日に検査したい刀を持っていき、X線についての説明を受ける。

画像8

担当の方が刀は初めてという事で鞘の払い方や茎の見方など一連の動作を伝えました。
万が一に備えてお手入れセットも一式持っていきましたが、不要でした。

というのも、茎だけ見える状態にして、刀身は休め鞘に入れた状態で試験可能らしく、私の方でその状態にして引き渡した為です。
その為、担当の方は結局試験終了まで一度も鞘から刀を抜く事はありませんでした
(ヒケ傷などつけられてしまうのではないか、と不安に感じている方には朗報かもしれません)


因みに担当の方も文化財という事で刀をかなり慎重に扱って下さっていたので、安心して引き渡せたのもあります。
例えば、検査品を渡す時「今手袋をしますので少々お待ち下さい」と言って下さるなど大切にしてくれようとしてる事が行動から伝わってきます。
因みに、滑ると危険なので手袋は無しで良いと伝えました。

刀の説明をし終わると、今度は担当の方がX線撮影の説明をしてくれます。

画像3


③預けて数日待つ
私の場合は2,3日でしたが、混んでいる場合は数週間かかる場合もあるそうです。

④結果を聞きに行く

画像8

検査データ、写真を基に担当の方が説明してくれます。
パソコン上でモデルをクルクル回せて、好きな所で断面も切れます。

画像9


小さな部分も超拡大して見る事が出来ます。

画像8


因みにくぼみの深さによって色分けなどは出来ないそうです。
(深ければ赤、浅ければ青のように)
もしこれが出来れば鏨部分だけ明確に抽出できると思ったのですが、これは残念でした。


4.使った試験機

こんなやつです。(※撮影許可頂いています)
さすが、凄い機械…
真ん中の丸いターンテーブルに短刀を置いて撮影した、と確か言っていた気がします。ターンテーブルが回るので、3Dデータを作る事が出来るんですね。

画像6

画像7

画像10


5.試験後に頂いたデータ

USBデータにデータを入れてもらいました。
入れてもらったのは以下2種です。

①一番銘が良く見える部分の断面写真 
担当の方が事前に良いものを何個か選び、入れてくれます。

画像11


②3Dモデルデータ
自宅のPCにアプリをダウンロードして、このデータを取り込めば、担当さんがモデルをクルクル回していたように自分の家でこれが出来ます。(素晴らしい)
ただ、ある程度処理能力のあるPCでないと動作が重くて動かない事もあるそうです。

画像12


6.撮影結果

画像12

という事で、X線撮影をした結果、銘はやはり「行光」とあり、裏面の読めなかった部分は「佐々木八郎所持」と書いてあることが判明しました。
年紀かと思っていましたが、所持銘だったとは驚きです。
この後色々調べていますが、佐々木八郎が誰か特定は出来ていません。
もしご存じの方いましたら是非教えて頂けると嬉しいです。


7.試験費用

短刀サイズで確か3万円位でした。
刀サイズになると倍位かかると言われました。
また、たぶん刀の場合はもっと大きな試験機を使うと思われます。


8.終わりに

肉眼で読めなかった部分が分かり嬉しいのは勿論なんですが、なんか3万円ちょっとで凄く貴重な経験が出来た気がします。
意外に言ってみるものですね。
駄目でもともと精神は大事かもしれません。
X線撮影は肉眼では見えなかった鏨跡が見えたりなど、愛刀の歴史を紐解くきっかけになるかもしれません
登録は無銘でも、なんとなく銘っぽいのが見えるという方はトライしてみても面白いかもしれませんね。

今回も読んで下さりありがとうございました!
読んで面白かったと感じてくれた方はハートマークを押してくださると嬉しです^^
記事更新の励みになります。

それでは皆様良き御刀ライフを~!

続き↓

画像13

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?