鐘馗図 素銅鐔②
以前フリマで購入したこちらの鐔について、あれから時間が経ち桃山頃と思われる素銅鐔と比較してみると、素銅の色味などがどうも近いようにも感じられ、以前は現代に作られた比較的新しめの鐔と思っていたのですが、もっと時代が上がり江戸後期、中期位の時代があるのではないかと感じたのでメモします。
①桃山期頃の素銅鐔と色味の比較
左が本鐔、右が桃山頃と思われる鐔である。
桃山頃の鐔(右)に比べると素銅の色は少し明るい。
因みに現代作と思われる素銅の色を見てみると以下のようにオレンジ色(明るい茶色)のような色をしています。
素銅の鐔をいくつか見ていると、新しい物はオレンジに近い色で、経年変化により徐々に黒ずんでいき、段々と濃い茶色になっていく傾向があるように感じます。
ヤフオクなどでは偶に古い作者の銘が切ってあるにも関わらず、素銅の色がオレンジのような物を見ますが、何百年と経っている物であれば相応の経年変化をしているはずで、これは個人的には怪しいと思っています。
(意図的に古色さを出す色揚げが出来るかは不明)
今回の鐘馗鐔は、桃山頃の鐔と比較すると色の黒ずみは薄いものの、そこに至る経年変化の正しい過程の様にも思えます。
鐔に至る所についた疵も(ぶつけたり磨ったような跡)も自然に思えます。
すると江戸時代あたり、というのはあながちあり得るかもしれません。
②気になる点
この鐔には切羽を付けていた跡がありません。
普通は切羽を長く付けているとその部分がくっきりと分かるものですがこちらは分かりません。
サイズ的に脇差用かと思いますが、江戸時代であれば切羽を付けるはずであり、その跡が無いという事はそもそも拵に付けられなかった可能性がある、とも考えられそうです。
切羽の無い時代に使用されていたとすれば(江戸時代よりも更に時代が上がるとすれば)、茎孔の周辺はボコボコに鏨で凹んでいるはずであるのでその線はまず有りません。
第一茎孔の角も立ちすぎています。
江戸期頃のお土産用の鐔(そのような物があるのか分かりませんが)だったりするのでしょうか。
一応切羽を乗せてみました。
構図もしっかりと考えて作られていそうです。
次に気になる点と言えば、やはり彫部の色付け。
この彫った部分が砂のようにざらざらしている様はこの鐔以外に見た事がない。
片切彫であれば彫ったままにするものしか見た事がありませんが、あえて何かを流し込んでいるのでしょうか。
参考までに本鐔をルーペで見た様子と、大月光興の片切彫部をルーペで見た様子を並べておきます。
③終わりに
改めて彫を見ると毛や爪など細部までやはり細かく作られています。
余白の使い方や彫の強弱の付け方なども上手く感じます。
彫の中の砂地のような処理を他で見る事が出来ればどの系統の鐔かというのが少し分かるような気もしますが鑑賞会などでもまだこのような処理は見た事がありません。
というよりも果たしてあるのだろうか。
今度金工の方に見て頂き是非意見をお伺いしてみたいと思います。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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