「現代刀職展2023 前期展示」を見て【前編】
現代刀職展2023(前期展示)を見に刀剣博物館へ行ってきました。
現代刀職展とは年に1回開催される刀職の方のコンクールです。
尚、前期展示(~9/10)と後期展示(9/12~10/15)に分かれています。
刀を作る職人もいれば、刀を研ぐ職人、鞘を作る職人、刀身に彫を施す職人、鐔やハバキを作る職人など様々いるのでコンクールも各部門に分かれて審査されます。
上から無鑑査、特賞、優秀賞、努力賞、入選と続きますが、刀剣博物館にて展示されるのは努力賞以上から、つまり入選だと展示されません。
賞の種類について良く分からないという方は以下をご覧ください。
という事で個人的に特に記憶に残った作を紹介していきます!
①作刀の部
・河内國平さん
思わず「凄い…」と言葉の漏れた河内國平さんの一振り。
この匂口の柔らかな表現といい、足や葉といった働きの多さ、地景の出方といい、それでいて姿も美しく、全てが上品にまとめられた太刀は長船物を彷彿とさせる出来で、息を呑むほど美しかったです。
81歳での作刀との事ですが、普通刀匠の方ってピークはもう少し若い頃なんじゃないです?!
80を過ぎてなおこれだけの刀を生み出す河内國平さんに驚きと興奮で一杯です。
因みに「春を待つ」シリーズなのか、もう一振り展示されていました。
こちらは桜の花?の彫が茎に施されていてお洒落でしたが、刃文は対局となる躍動感ある刃文。
・森國利文(清廣)さん
高松宮記念賞という最高賞受賞作。
刃中に二重刃が見えたり精美な地鉄で製作されているところ、姿が古調な所から粟田口や新藤五あたり、もしくは沸づいているあたりから大和物を狙っての製作でしょうか。
地は青黒く澄んでおりただの直刃にせずに働きが盛んに入っている所に見ていて飽きの来ない面白みを感じると共に名刀であると感じました。
茎の仕立ても非常に綺麗な作でした。
②研磨の部
・玉置城二さん
キャプションに「地肌を抑え込み、拭いを控えめに差し、映りを強調する研磨を行った」と書いてあるように、景光の乱れ映りが鮮明に出ていました。
完全に「静」の世界が表現されており、幽玄な印象が伝わってきます。
その刀の何を強調するのか(見せるのか)は研師の腕の見せ所と聞いた事がありますが、この刀の良い所がまさに研磨により存分に引き出されているようにも感じました。
・三浦弘貴さん
清房刀匠の現代刀を研磨されています。
逆丁子に映りが鮮やかにたち、南北朝頃の青江派の作を目指したのでしょうか。最初ケース越しに眺めている時に一瞬古いものかと思ったのですが、茎を見ると現代刀。現代刀もここまで鮮やかに映りが見えると幽玄な雰囲気が漂っている気がします。こちらも脇差の良さが研磨により存分に引き出されている印象を受けました。
覇気と静寂が共存していた印象です。
③刀身彫刻
・柏木重光さん
梅に龍が巻き付いている刀身彫刻ですが、もはや人の域を超えている気がします。虎徹や一竿子、義胤なども上手いなと感じていたのですが…それらを凌駕し全時代を通しても現代が一番刀身彫刻が上手いのではないか、個人的にはそう感じます。
柏木さんも今江戸時代に行ったら彫金の名手として間違いなく歴史に名を刻んでいた事でしょう。
後半へ続く。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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