古金工 一匹猿金目貫③ 古美濃の線を探る
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久々に猿目貫を鑑賞。
暫く鑑賞の手から遠のいていたものの、購入の最後の決め手が当時生まれたばかりの次女の顔に似ているという理由だっただけに久々に見るとその当時のことを思い出し心が少し温かくなる。
そうした一時期との思い出とリンクした刀装具もまた良いものだなと実感。
刀はどうしても鑑賞時に緊張する(気が引き締まる)ので、刀装具では得られない感覚がある一方で、また刀装具でしか得られない感覚もある。
見ていて平和な気持ち(だいぶ抽象的な言い方かもしれないが…)になるのは刀装具の方かもしれない。
話が逸れましたが、購入時は室町~桃山頃と推定していたわけですが、裏行を改めて見てみると非常に薄く貴重な金を伸ばしている事から金が非常に貴重な時代の作であり室町頃の古美濃系統の可能性があるのではないかとふと感じた次第。
ただ薄いから良いというわけではなく、これは最近の京金工指定品などにも時々見られるが、やたらと薄い物は現代のプレス品の可能性もあり、その辺りは注意が必要と思われる。
ただそうした物は裏行の疵や汚れ、金錆などやはり時代の古さが見て取れないので今回の古金工の目貫とはまた違った見え方をする。
話を戻して古美濃というと殆どが秋草などの植物をテーマにしており、たまに龍や猿、鳥、イノシシ、鹿などの動物、虫をテーマにした図柄を見る。
以下は猿をテーマにした刀装具で、「特別展 金工 美濃彫」より抜粋したもの。
鐔や小柄、縁頭などに猿をテーマにしたものが在る以上、目貫にもあって然りだと思うが見かけない。
古美濃目貫というと薄造りの他、抜け穴が非常に多い事や目貫の外形が楕円形やひし形である事も特徴であるが、今回の古金工猿目貫には抜け穴は一切ないし、外形もそれらに当てはまらない。
猿のデザインも先に挙げた古美濃の猿と比べるとだいぶ顔つきが違うようにも見える点などからやはり古美濃というには無理があるか…とはなっているのが現状です。
かといって古後藤かと言われると…顔などは以下と似ており可能性は捨てきれないですがいまいち決め手がなさそうな。
こちらの古後藤の猿目貫と顔つきは似てますが、この目貫が必ずしも後藤によるものかは銘があるわけではないので分からず、あまり先入観にとらわれず色々な作を比較してみたいと思います。
あとは室町頃に活躍していた別の金工といえば正阿弥系統だろうか。
正阿弥も古くからいる金工で様々な材質の金属を匠みに操っており技術が高いです。という事で今度は正阿弥の線を探ってみようと思います。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)