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マイナー刀工の存在について

少し刀工の名前を羅列する。

・江州甘呂
・備後国住一乗
・肥州菊池住国元
・大進法師裕慶
・光正(三池)
・防州住清春
・千手院長季
・舞草猛房
・生佛(備前)
・高友(備前)
・細小路忠家
・相州住隆広
・高田住直守
・石州貫景介
・平戸七郎三郎
・加州藤原家成
・筑州住定行
・来倫国
・来宗光
・能信
・豊後国住行政
・橘義重
・肥前住末秀
・菅原友長
・紀州実次

さてこれらは何かというと「埋忠刀譜」に掲載されていた刀工銘で個人的に聞いた事が無かったものを羅列したもの。
中にはこれ有名だろ、という刀工もいるかもしれないが浅学なのでご容赦頂きたい。

「埋忠刀譜」は刀剣博物館が所蔵する押形集で埋忠家が1605~1660年(江戸時代初期)にかけて仕事の依頼を受けた名刀についてほぼ原寸大で精密に描かれた茎図を中心とした刀絵図が、おおむね依頼を受けた年代順に記載されている。(以前クラファンで手に入れる事が出来ました。
埋忠家という事もあり基本的に依頼主は大名~大大名クラスだったことが想像されるが、実際正宗や郷、吉光などの天下三作を始め名物や号の付いた高名な刀も多く掲載されている。

しかしそれらと並んで冒頭に並べた聞いた事もないような刀工も掲載されている

細小路忠家
「埋忠刀譜」より

今我々が良く知っている刀工がなぜ有名かを考えると、これは私の予想だが恐らく「位列」で上位のものが高評価を受けやすかった為に明治以降様々な本でピックアップされるようになったことや、日刀保の特重指定に選ばれる事が多くなったりで徐々に有名になって今に至るのではないかと予想している。
清麿なども戦前までは誰も目にとめず100万もせず買えたというが、ある研究家やその協力者などにより評価が上がり今では誰もが知る有名刀工になった。
たった100年ちょっとの出来事である。

因みに位列は刀剣ワールドさんのサイトを見ると『古刀においては「本朝鍛冶考」と「掌中古刀銘鑑」、新刀においては「新刀弁疑」等の古書をもとに、古刀、新刀、新々刀別で分類されました。』と書いてある。

「本朝鍛冶考」は寛政8年(1796年)、「掌中古刀銘鑑」は安政3年(1856年)にまとめられた本。
つまり「埋忠刀譜」の時から200年近く後の世に書かれた事になる。
清麿がそうであったように、200年もあれば時代に埋もれる名工の名前もありそうなもの。

埋忠刀譜に載っているからといって全ての刀が美術的に美しい物かと言われればそれは違うとも思うが、こうした押形に載っているマイナーな刀工銘を少し覚えておき、万が一今日雑な扱われ方をして部分部分錆が付いたりしたものなどがオークションや刀剣店などで捨て値で売られていた場合などは拾って綺麗にしてあげて、例えばこの押形の掲載品だなどとSNSなどで公開するなどする事はその刀の本来の価値や歴史を今に解明していく事にも繋がり良いのではないだろうか。

そして自分自身がその刀を手放す際には「これは○○押形に載っているもので研ぎ減っていて重要刀剣などにはならないかもしれないが資料的にも貴重なものだ」などという事をしっかり伝えて手放す事が、その刀の価値を次の人に認知させ、文化財保護の観点でも研究の観点でも重要になってきそうな気もする。

オークションで大銘物に欲をかいて現代作られた偽物を掴むよりも、安く済む可能性は高そうであるしそうした埋もれたマイナー刀工の作を発掘するという意義は大きそうである。
何も出来の良い傑作ばかりを追い求めることだけが刀道ではないはず。

こうした事は刀剣店の方などはよくしている事と思うので、実際にそうした物がポンポン見つかるかと言えばそんな事はないと思うし、そればかり探す事を推奨しているわけではない。
大体良い刀は刀剣店にある。これは間違いない。
なので良い刀を買いたい人は刀剣店に行くのがベスト。
ただぼっーと古い押形を見てこんな刀工いるんだなぁ、などと楽しみながらパラパラ頁をめくる事も案外いつかそうした物を拾い文化財保護や研究推進の一役を担う事に繋がる可能性も少なからずあるかもしれないと思った次第。



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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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