名品が適当な箱に入っている事はない
入れ物が良いから良い物であるという判断は実に軽率でするべきでないと思うが、名品が適当な箱に入っていることもまた一度も見た事がない。
例えば鐔でいえば、適当なもの(大した物でない物)ほど以下のような感じで適当に合わせた箱に入っている傾向が非常に高い。
茎孔のサイズが合っていなければ、中敷きのクッションの素材や造りも粗悪。
一方である程度しっかりした大切にされたであろう品は以下の様に入れ物も保管や見栄えを考えて作られている。
また以下は以前私が職人さんに作って頂いた物だが、職人さんの意向で鐔の外形に合わせて落としになっており、かつ保管なども考えて鐔の裏面が布に触れる範囲が少なくなるように浮かせるような構造にして下さった。
茎孔の部分は裏から釘を用いて固定しているわけではないので輸送時に外れて釘が鐔を傷付ける心配もないとのこと。
自身でも気に入っている物だからこそあえて落とし箱を作って貰った。
どうでも良い品にわざわざお金をかける所有者はいないのではないだろうか。
更に鐔箱に合わせて袋が付いている事もある。
刀剣店などで20万円以上の鐔を買う場合は大体専用に作られた落とし箱に入っていると思うが、値段が上がってくるとこうした鐔箱袋もよく見かける気もする。
そして更に名品の類になってくると、鐔箱自体が例えば蒔絵の漆箱の二重箱を利用したりと段々と豪華になっていく傾向が。
中身を大切に思う気持ちが強いほど入れ物に拘る、というのは人間の心理を考えればある意味当たり前にも思うし、名品ほど外箱も拘るという思考も理解出来る。
勿論ただ入れ物が豪華だから中身も良いはずだとばかり考えていると足元をすくわれる可能性があるので、付属品のみを見て買うのはナンセンスかと思うが。
今回は鐔の例を書いたが、目貫や小柄笄など刀装具全般同じことが言える。ということで入れ物が良いから良い物であるという判断はするべきでないが、名品が適当な箱に入っていることもまた一度も見た事がないのは所有者心理を考えれば至極当然の事に思う。
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それでは皆様良き刀ライフを!
鐔の落とし箱を製作頂いた時の事は以下に書いていますのでもしよろしければご覧ください。
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。