見出し画像

加納夏雄 追儺図目貫

今回も前回に続いて日刀保山梨支部で拝見させて頂いた加納夏雄の追儺図(ついなず)目貫について詳細など書こうと思います。

追儺とはいわゆる「鬼は外、福は内」と言いながら豆を撒くあの節分のルーツで、もともとは「鬼儺(おにやらい)」とも呼ばれ、古来中国の宮廷で大晦日に行う鬼を払う儀式でした。
つまり追儺は季節の変わり目である節分に鬼を追い払うことで、新しい年を病気や災いのない穏やかな年にする願いが込められていたと考えられます。

そんな追儺の一幕を表した加納夏雄の目貫。

感覚値ですが2㎝いかないほどの小ささだったのではないかと思います。



鬼の方は金無垢地?(裏を見ると鍍金にも見えなくもないがもう少しじっくり見ておけばよかった)で、匠な鏨使いでユーモラスな優しい表情に彫り上げています。少し目が上の方を向いているのは面白い。
少し上を向いていることで鬼が降参しているような印象も伝わってきます。もし目が正面を向いていたら対峙してくるような気迫を感じ、とても降参しているようには見えなさそうです。
そうした鏨1つの使い方で印象を変える点もまた夏雄なりの工夫なのでしょうか。

一方、於福の方は銀地に髪の毛が四分一で表現されていると思われます。
ただ銀地だと酸化して経年で黒ずみそうですし、ここまで綺麗な銀色というのは手入れが良いからか、もしくはもっと別の金属を混ぜて合金にしていたりするのでしょうか。
唇部はほのかに赤く見えますがなんでしょう。
目は奥まっており立体感があります。赤銅でしょうか。
そして眉毛などほのかに黒ずんでいる箇所があり、ここも金属を分けているように見受けられます。
もう少し細部細かく見ておけば良かったです。

この写真だと見えづらいが鬼とおかめそれぞれの側面に「夏」と「雄」が切られている


・裏行

力金が三角であり、陰陽根の大きさなど、一言で言えば宗珉に似ている印象を受けます。
ただ宗珉であればもう少し小さな三角形で不揃いに並んでいる印象も。
因みに幕末の陰陽根は形だけ真似している感があり、陰根に陽根が入らないというサイズ感の傾向があるが(何の為の陰陽根?)、この目貫もまた同様のようでした。

参考までに以前目白庭園で拝見させて頂いた夏雄の牡丹目貫の裏は三角が重なっていました。三角はやはり正三角形に近いでしょうか。


という事で夏雄の技量が遺憾なく発揮された追儺図の目貫を堪能させて頂き、感謝感激です。


今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はいいねを押して頂けると記事更新の励みになります。
それでは皆様良き刀ライフを!

よろしければ以下もご覧ください。

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

いいなと思ったら応援しよう!