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京金工 尾長鳥鐔① デザインについて
昨日手に入れた総鍍金の鐔に描かれた鳥が尾長鳥なのか、鳳凰なのかについて考えてみる。
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鞘を想像すると相当薄手の造りである事が予想される。
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因みにこの鐔は日刀保の鑑定書では「京金工」極めとなっている。
京金工は後藤や埋忠など主流派に属さない京都の金工の作を総称してそう呼んでいると思われるが、いわば「良く分からない」というのが鑑定の結果であるようにも個人的には感じられる。
刀装具も後藤や埋忠、美濃など主要流派の研究は進んでいるが、京金工や古金工など、この辺りはまだ作域を絞り込めておらず意外に研究が進んでいない分野なのではないだろうか。
①デザインは尾長鳥?鳳凰?
鑑定書では絵柄は「尾長鳥」となっている。
個人的には鳳凰にも見えたので、この辺りのデザインについて調べてみる。まず以下は「刀剣 刀装具 徳川美術館蔵品抄③」に掲載されている鳳凰の小柄である。
尾の数は違うがなかなか似ているようにも見える。
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次に尾長鳥がモチーフの刀装具を見てみると、尾の部分が丸みをもってデザインされている物が多く見られる気がする。(本鐔と同時代と思われる物が直ぐに見つからなかった為、江戸中期頃の作を載せる)
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今回の鐔を見てみると少し尾がバサついているように見えるのが少し引っ掛かるが、鏨の種類と入れ方の問題であるだけかもしれない。
加えて頭部にトサカが無いツルツルな形状からやはり尾長鳥であるような気もしてくる。
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参考までに以下は南蛮鐔の鳳凰図。
なかなか判断に迷う所である。
②唐草紋との組み合わせについて
今回の鐔を見ると唐草紋と共にデザインされている。
尾長鳥と唐草紋の組み合わせ、もしくは鳳凰と唐草紋の組み合わせは当時からあったのだろうか。
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まず尾長鳥と唐草紋の組み合わせであるが、平安末~鎌倉時代のもので既にその組み合わせは登場しているようである。
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刀装にも見られる。但しこちらは唐草紋ではなく、枝菊紋となっている。
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次に鳳凰と唐草紋の組み合わせを見てみる。
これは拵などでも良く見る気がする。
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現代の生地などでもよく見る組み合わせの為、昔から鳳凰と唐草という組み合わせはよくあったのかもしれない。
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故にどちらのパターンも組み合わせとしてはあり得そうである。
結論が出ないままネットを探し続けていると非常に似た鐔が!!
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こちらの解説では鳳凰と唐草、という説明になっている。
鑑定書はなさそうです。
やはり曖昧なのでしょうか。
③終わりに
因みに尾長鳥は縁起の良い高貴な鳥とされているようで、蓄財のシンボルとも幸運を呼び込むとも考えられているようです。
一方で鳳凰はめでたいことの起こる前兆とされる鳥として愛され、こちらも縁起が良いものとして、金閣寺や平等院鳳凰堂にも用いられています。
尾長鳥、鳳凰、どちらのデザインか現時点では結局分からなかったのですが、いずれにしても縁起物の鐔という事で、これからの蓄財の願いを込めて尾長鳥という事にしておこうと思います。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑
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