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東京都支部鑑賞会(2025.1.18)

昨日東京都支部の鑑賞会に参加してきましたので鑑定刀の振り返り、鑑賞刀などで気になった作などについてダラダラ書こうと思います。




①鑑定刀振り返り

1号刀:安綱

踏ん張りある体配で優美な腰反りが付き、焼き落としが見られる。
片面に二筋樋が入り、小切っ先。
黒みを帯びた地鉄は肌立っており大板目の肌に杢も見られる、足や葉が良く入りながら小沸がよく付き、金筋や砂流しといった働きも豊富。
安綱と入札し当たり。2尺6寸6分。

2号刀:孫六兼元

切先の伸びた南北朝時代の体配で、互の目や尖り刃など締まり気味の刃に淡く映りが見られるところから兼光を予想。
しかし物打ち辺りに砂流しのような働きのある箇所が働きによる為か少しバサけたように見えた箇所があったり白け映りのようなものによる為か地鉄がすこし白く見える。
兼光であればあまりこうした作風は無いのではないかと思い、一格落として考えてみる事に。
しかし困った事に一格落として誰になるのか知識が無い…。
そんな時にふと頭によぎった「秀光」という刀工。
正直どんな作風か分からないがスマホで検索すると姿はそれっぽいものが在ったので、時間もないしこれでいいやと入札。(雑は良くないですね)
孫六兼元の作でした。
なるほど、白っぽく見える部分から関物を考えるべきでした。
因みに私は気が付きませんでしたが表裏の刃文は揃っていたようでこれも関物の特徴だそうです。
2尺3寸6分。

3号刀:津田越前守助廣 寛文十二年八月日

寛文新刀の典型ともいえる反りの殆どない姿。
匂い口が全体的に深いがバサけた箇所も見られる。
刃は浅く大きくのたれ互の目。金筋などの働きは盛んに入っているが、太めで古刀というよりは新刀のもの。小板目でやや肌立っている。
そして映りのようなものが刀身に出ている。
かなり器用な刀工である事が予想されるが、過去に映りも出して匂い口の深い作を作る刀工はいただろうかと頭を巡らせると、虎徹の備前伝に映りがあった物を見たし、相州伝のような金筋を入れた作も見た事があることを思い出し、その姿も相まり虎徹と入札。
正解は助廣の作。うーん難しい…。
刃長2尺2寸6分。角津田銘、助広36歳の頃の作。

4号刀:長曽根興里入道虎徹

互の目で匂い口が深く、長い足が全体的に入っており一見虎徹に見える。
虎徹と書こうかと思ったが、地鉄が青白くもう少し時代の下がる色にも見える。
ただ匂口の表現は非常に見事で上から下まで破綻が一切ない。
新々刀として見た場合相当上手な刀工になる。
可能性としては清麿あたりだろうか。ただ清麿だとしたらもう少し古刀色のある地鉄をしていそうな気もするが…などと悩んでいると時間になってしまったので結局清麿で出す事に。
正解は虎徹でした。
2尺3寸3分。僅かに摺上げ、元は2尺4寸ほどあったかとのこと。

5号刀:下原康重

短刀。不動明王のような彫が入っており、刃は尖り刃を交えて棟側にも焼きが入っている。
国広の古屋打ち辺りを想像するが、少し肌の立ち方が杢目であったりなどザングリとは少し違って見える。
彫も国広とは少し違う。
では何か?
今の自分にはその後に続く刀工が思いつかないのが悔しい。
そのため国広と入札。
正解は下原康重。
き、聞いた事があるものの殆ど手に取った事が無い…。


結果の用紙を貰い忘れてしまい点数が分からないのですが、当たりは1号の安綱だけであったので恐らく20点(100点中)だと思います。
一応時代は外さなかったので良しとします。
尚、天位は天位常連のHさんで80点。
相変わらず凄まじい鑑識力です。



②鑑賞刀22振

テーマは五ヶ伝の日本刀。
22振の名刀が並びました。

大和伝
・千手院(剣)
・保昌(無銘)
・当麻(無銘)
・手掻包永
山城伝
・国吉
・国吉短刀
・来国行
・来国俊短刀
備前伝
・包平
・光忠(無銘)
・長光
・景光短刀
・兼光
相州伝
・正宗短刀(朱銘)柳沢家伝来
・貞宗
・広光
・秋広
美濃伝
・志津
・直江志津兼信?
・包吉、末手掻
・和泉守兼定
・孫六兼元 金象嵌

個人的に気になった刀としては、大摺り上げ無銘の保昌太刀。
一目で保昌と分かる流れ肌が全体に入っておりしかも棒映りのような沸映りのような映りが鮮明で出来が傑出している。
無銘ながら素晴らしい作で見入る。
粟田口国吉の在銘太刀は銘の保存状態もさることながら出来もとても良く、地鉄が殊に美しかったです。二重刃も鮮明。
次に古備前包平。
こちらは以前都支部にも並んだ太刀であるが、大包平に匹敵するような生ぶの名刀で佐竹家伝来。
上杉家と佐竹家の刀は生ぶが多く出来も傑出している物が多いように個人的に感じる。
光忠極めの太刀も蛙子丁子に乱れ映りが鮮やかに入り昨年大刀剣市に出ていた備と銘の残った光忠の作と似ている印象で出来が良く感じました。
いや、並んでいた刀全部出来が良かったのですが、中でも…という意味ですね。


③終わりに

新年早々の東京都支部の鑑賞会は素晴らしい出来の名刀、名刀装具がずらりと並びました。
刀装具は三所物と題して祐乗から各代の後藤家の折り紙付きの名品がずらりと並んだのですが、中でも武田信玄所持の乗真の倶利伽羅龍の三所物は見事でした。
鉄の小柄、笄に金紋の倶利伽羅龍というのもまた味わい深いです。
もしかしたら川中島の戦いの際に帯びていた物かもしれない、と考えるとロマンあふれますね…!
刀装具の造り込みについても支部長の葉山さんや真玄堂の高橋さんに色々教えて頂いたのですが細かく書く体力が尽きてしまったので今日はこの辺で…。


今回も読んで下さりありがとうございました!
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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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