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沸映りとは言われるが…

縁あり綾小路の太刀が手元に来てかれこれ1年半くらい見続けているわけであるが、定期的に手入れしていたからか「映り」が購入時より鮮明になってきたように思う。
映りが鮮明になってきたのか、見慣れた事で映りをより捉えやすくなったのか、どちらかは良く分からないが前者であると思っていた方がなんだか喜びが一味追加される気がするのでそういう事にしておく。

さてこの見えている映りについて、図譜などでは沸映りと解説されている。
当初はボヤっと白い部分が鎬筋から刃文に掛けてフワッと棒状に現れ、まさに沸映りのように見えたのであるが、何日も何日もよくよく見ていると棒映りのようなものではなく、どうも乱れ映りのように若干波打つように見える部分もあるように思えてくる。

鮮やかな映りではなく肉眼では見える程度の微かな映りであるので写真にそもそも映りづらいのであるが、大体以下のような雰囲気だろうか。
赤線部は映りのイメージである。(正確になぞっているわけではない)

だからと言ってこの刀が備前物だというつもりはさらさらなく、この太刀はやはり綾小路派の太刀であるというのは綾小路の在銘品と比較しても刃文の形や匂口の様相などが類似しており、極めに納得するところである。

と、今回のものは沸映りと呼ばれる範囲の映りなのかもしれないし、それ自体の呼び方は個人的にはどうでもよく。
何が言いたいかというと、山城伝は沸映り、備前伝は乱れ映り、古備前は地斑映り…などいわば「○○の映りがあるから○○伝だ」みたいな見分けの方法はよく耳にする気がするが、類似したような形の映りは結構色々あるので、映りの名称にそこまでこだわるのではなく、目に映ったままの形を認識して「○○の太刀にはこういう形の映りが出るのだ」と直感的に覚えておく方が、「山城伝は沸映りであるべき」という変な先入観も生まれず良いのではないかと感じた次第。
以前拝見した特重の在銘の粟田口の作にも綺麗に地斑映りのようなものが立っており、これも意外に感じましたが「山城物が沸映り」という先入観を捨てれば、あの時代に地斑映りのような物が出ていても結構自然に受け入れられる気がしました。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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