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刀展示ケースEDGE① 始動

(※2024/8/4 ブログを整理する為タイトルを変えました。以前のタイトルはは「デザイナーズ刀箱① 始動」です)

デザイナーズ刀箱…何というチンケな名前だろうか。
自分で付けておきながらネーミングセンスの無さは我ながら随一と感じている。

さて名前は勿論今後変えると思うが、百貨店などでの限定仕様の日本刀展示ケースを作ろうと考えている。
但し1人で展示ケースのデザインを考えることに最近限界も感じている。
あくまで刀が主役であるので展示ケースが目立つのは控えたい。
刀の存在は際立たせつつ、現在の住宅環境に刀という異風で存在感あるものを「馴染ませる」という行為が案外に難しく感じている為である。

そこである方に助けを求めた。
それがセガ時代の先輩であり、現在はデザイン事務所を立ち上げているプロダクトデザイナーの方である。
私が2年目の時に「スターホース3」というゲーム筐体の設計を一部担当する事になったのだが、そこで長時間くつろげる為にサイドテーブルの設計を任されたのだ。

©SEGA
(画像出典:株式会社セガ StarHorse3


スターホース3と言えば当時、社を代表する重要プロジェクトであり、設計ソフトの使い方をようやく覚えたばかりの2年目の私にとってそんな製品の一部を任される事を嬉しいと思う反面、責任という重圧もあった。
テーブルについてもキャビネットに一体化するのが良いのか、別体にするのが良いのか、という話からスタートして段ボールなどを使用しながら検討を進めていたがなかなかアイデアがまとまり切らず焦燥感だけが募っていく。
そんな折に当時この先輩に相談したところ「こうしたらいんじゃない?」とデザイン画を描いて下さり、加えてアイデアを沢山頂けたお陰で何とかリリースまでにギリギリ完成したのである。
正直言うと9割位はこの方のアイデアと言って良い。

例えば、全部キャスターにすると使いたい時に動いてしまったりと安定性が悪くなるから後ろにキャスターだけつけて手前は滑り止めを付けて、手前に引き出す時だけ少し手前を持ち上げてスライドさせると動かしやすいし、持ち上げない限り動かないから安定性も担保できるよね、といったこと。

他にもコップの入れるドリンクホルダーは底面に穴をあけていないと水滴が溜まっちゃうよねとか、テーブルの側面に仕切り板を付ける事で、どっちのキャビネットの物か明確に出来るからお客さん同士でトラブルになり難いよね、その際に1つの部品を両側に付けられるようにした方が良いよね、天板は傷つきやすいからこの素材使うと良いよ、などとかなり実用に踏み込んだ話まで至り一気に話が進んだのである。

これは2年目の私にとってある意味「ものづくりは人(買う人と遊ぶ人)への気遣いだ」という最も大事な事を教えて頂けたタイミングでもある。
(ここで「買う人」というのはそのゲーム機を購入する人、つまりゲームセンターを運営している会社という事になる。)
これ以降常にこのことを意識して設計してきたが、その考えは今も刀の展示ケース作りに活かしている。

私が制作した刀展示ケース「刀箱


プロダクトデザイナーの仕事は製品のデザイン図の作成だけだと思われるかもしれないが実際は違う。
設計の知識もある程度ないとデザイン出来ないのである。
なので新卒のプロダクトデザイナーが奇抜でカッコいいデザインを挙げてくることがあるが、設計の知識がないのでどう作るのかまで落とし込めない事もままある。
ただこれはなるべく設計者がそのデザインをどう現実のカタチにするかが腕の見せ所でもあるのだが。

そんな先輩も私が7年目くらいの時にデザイン事務所NUNO DESIGN設立の為、会社を辞めた。
その2年後くらいに私も刀箱師としてスタートする為に会社を辞めた。

そんな先輩が以下の方である。
(尚以下の展示ケースを作った感じに映っているかもしれないが刀の前で写真を撮っているだけで関係はない)

セガ時代にお世話になったプロダクトデザイナーの布川宏樹さん
トーハクにて撮影。
布川さんのデザイン事務所のロゴ(画像出典:NUNO DESIGN


久々の再会

前置きが長くなったが、それから月日が経ち実に7年ぶりくらいに、刀の展示ケースのデザイン案をして頂けないかコンタクトを取ってみた。
1人でデザインを考えるのも良いが、何か新しい風を取り入れる事で更に刀展示ケースを進化させたいと考えた為である。
しかし布川さんにとって「刀の展示」、元より「日本刀」自体が初めてなので、まずは日本刀を知って頂かなくてはならない。

物に興味を持って物の良さを知らないと最適な展示の仕方は絶対に分からないのである。
この考えは布川さんも同意見であったから嬉しい。
このような根本の考えが同じ、というのは仕事を共にしていく上で重要であるように感じる。
守られた会社内、会社員同士で物作りをするわけではないのだ。
誰でも良いというわけではない。

そこでまず自分自身が今どういうコンセプトでどういう展示ケースを作っているのか説明する為に作業場へ来て頂き、実際に刀の展示を見て手に取って頂いた。

そして先日更に知識を深める為、美術館や刀屋さんへ行き、刀の展示の仕方について深く話し込んだ。(刀の置き方の話から、刀掛けの布使用のメリットデメリット、展示ケースの背面色による違い、各部分に使われている素材や、ライトの種類による見え方の違い、ライトの照射位置や拡散、光源までの距離などなど書ききれないが…)

個人的に刀装具に最近はまっているので、ここぞとばかりに見せまくる
刀屋さんにて
良い刀が登場したので私もさりげなく見せて頂く。

こうしたものづくり視点の話が出来るのはセガ時代を思い出して実に面白い。
セガには新しい物、新しい事に挑戦するのが好きの人がとても多かった。
布川さんは現在ゲームのデザインではなくBtoBでユーザーインターフェースなどのプロダクトデザインされているようであるが、きっと刀展示ケース作りにもきっと柔軟に対応して下さる事だろう。
この刀展示ケースの製作工程はラフデザインの段階から公開出来ればと考えています。
物がどのようにカタチになっていくのか、どんな刀展示ケースになるのか、是非期待しながら見守って頂けると嬉しいです。
因みにまだ何も決まっておらず完成まで無事走り切れるかも分かりませんが、年内には大まかなデザインなどは決めたいなと考えています。

(と、布川さんのハードルを上げておきます。笑)


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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