猿猴捉月の鐔①
「猿猴捉月(えんこうそくげつ)」
猿が水に映った月を掴もうとして木に登ったものの、木の枝が折れて水に落ちて死んだという故事から転じて、身のほど知らずの事をして元も子もなくす事を例えている。
猿猴促月を題材にした絵は長谷川等伯や狩野山雪、伊藤若冲はじめ多くの画家が描いている。
実に洒落が効いていて面白く、また何ともかわいらしい構図のものが多い事もあり私自身も気に入っているテーマの一つなのですが、実は鐔や小柄、目貫、縁頭といった刀装具にもこの猿猴促月をテーマにしたものが多くあります。
そして構図の捉え方が絵画とは少し異なり面白かったりします。
以下のような絵のような構図ばかりかと思いきや、
以下のように同じく猿の視点から(上から)月をのぞき込むような構図のものもあり面白いです。
更に以下も、表は柿の実が見えることから恐らく期の上から覗き込んでいるのでしょう。
月が歪んでいる事から水面に月が写っている事が分かります。
更に鐔の裏はまさに猿が水面に映った月に手を伸ばしているまさにその瞬間です。そして水面を触れた事で水に波が立ち水に映る月を歪ませたまさにその瞬間を表現しているのではないでしょうか。
猿の身体が金で光っているのは月に照らされた様子を表しているのかもしれない。
そして改めて表面を見ると猿がいない。
もしかすると猿が水に落ちた後を表現しているのかもしれません。
猿が存在していた事を柿で表現しているのではないでしょうか。
だとしたら何とも洒落ています。
(尚、これは全て私の妄想です)
月を銀の布目象嵌で表し、それが経年による廃れなど合わさる事で詫びとなっていて魅力的。
猿猴促月を絵画で書く場合はキャンバスが広いですが、鐔にすると切羽台もあるのでそれらを考慮したデザイン、構図にする必要があったのかもしれません。
もしかすると鐔には手を伸ばした猿だけを描き、頭(かしら)には月だけを象嵌した一作拵なんかもありそうです。(刀を差して正面から見た際に鐔と頭が重なり猿猴促月の絵が完成するデザイン)
猿猴促月をモチーフにした刀装具、いつか欲しいものです。
猿猴促月に込められた意も戒めとしてまた良き。
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)