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太刀鐔に施された工夫点

太刀拵に付いている鐔、太刀鐔。
以下は半太刀拵に付いた3枚合わせの太刀鐔です。

普通の鐔と異なり、以下のように3枚に分離出来ます。

その時にいくつか面白い工夫点がありましたので紹介です。
因みに私はこの太刀鐔しか見た事が無いので他の3枚合わせ鐔も同様かは分かりません。参考程度に見て頂ければ。

①表裏の取付間違いを無くす工夫

どちらも同じ形状が故に表と裏にどちらでも付いてしまいそうと感じるかもしれません。
はめる際は突起を穴に合わせて固定します。

しかしこれらは全て手作業で作られているので機械のように精度が出ているわけではありません。故に片方は堅いけど無理をすれば取りついてしまう、そんな事もあるかもしれません。
無理やりつけると取り付けが悪かったりと不具合も出る事でしょう。

気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、よく見ると「モ」という文字が刻まれています。
もう一方には「久」という字が。
これは間違えて付けないようにという先人の知恵なのでしょう。

因みに設計の仕事をしているとこういう場面がちょこちょこ出てきます。
設計の場合で言えば理想はどちらにも取り付くように作る事ですが、それが出来ない場合は、穴と突起の位置を変える事で、付く方にしか付かないようにしてしまいます。
この時代でもそういった事は当然出来たはずですが、なぜやらなかったのでしょうか。この辺り何か理由があるのかもしれません。


②見えるところだけ加工

見えるところだけ頑張って見えないところは何もしないで作業時間短縮。
これは菜々子(丸い粒粒)を見ると分かります。
表から見ると下側の菜々子まで確認でき、細部まで丁寧に作られている印象を受けますが、

取り外すと…菜々子はかなり部分的にしか施されていない事が分かります。

確かにここに全て打ち込んでも大変な事は勿論、ガタツキも増えそうです。


③終わりに

太刀鐔は分離出来ないものもありますが、いずれにしても普段は拵についた状態で展示されているのでなかなかこの分離した状態を見る事は出来ないのではないでしょうか。
他の太刀鐔はどのようになっているのだろう。
気になります。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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