サムライアート展① 刀編
今回から何回かに渡って「サムライアート展(東京富士美術館にて 2024/12/22まで)」を見てきた感想など書こうと思います。
結論から言えば展示品が良い事もさることながら、タイトルにサムライアートとあるように、刀身だけの展示ではなく刀装や甲冑、屏風、印籠、浮世絵などテーマごとに多岐に見れるようになっていてとてもお勧めです。
こちらの品を目的に見に行ったものの想像以上の楽しさで食いつくように見てしまいました。
①目録
個人的に気になったものをいくつか。
②個人的に好きだった日本刀
・古伯耆有綱(重文)
帽子は少し減っているものの生ぶ姿で在銘。
地鉄が殊に美しく、古伯耆というよりも京物のような印象すら受ける。
平安期の太刀が美しいと言われる所以はやはりこうした点にあるのではないだろうか。
ライティングが強めで映りは見え難かったものの直ぐ後ろに押形のパネルが設置されており、見るに刃区あたりに地斑のようなものが見える。
最高かよ…という感想に尽きる。
・吉房(国宝)
福岡一文字吉房の生ぶ在銘品。
茎は少し朽ち気味であるが、乱れ映りが鮮やかに入っており丁子刃が非常に美しい。鎌倉武士が如何にも好みそうな覇気の有る太刀であった。
因みに研ぎは差し込みにして地刃のコントラストを出すような研ぎではなく匂口が少し見えづらい印象があったものの、こちらの太刀は強めのライティングでも映りが見えており、余程鮮明な映りなのだろうと想像する。
以下の赤丸部などは俵鋲か何か金属が当たっていた事で凹んだようにも見える。まま古い太刀に見られるがこうした所も堪らない。
・長光
特に指定はないがこちらも生ぶ茎でしかも茎の状態がとても良い。
目釘孔も1個。
長光は大般若長光のような丁子の華やかな作もあるが、こちらは大人しい直刃調で見ているととても心が落ち着いてくる。
また腰反りの優美な姿も非常に美しく気品が感じられるし、刃区あたりの匂口も非常に柔らかく直調の映りが幻想的に入る。
真長もそうだが、刃区あたりは直調で上に行くと乱れ映りが美しく出ているという特徴がある気がする。
・無銘行光
伝行光との事だが地刃は正宗のような出来口をしているように見える。
松平家旧蔵品との事で、五三桐紋を逆さにして高蒔絵にした豪華な金の蛭巻拵が付帯しており、金具は後藤家の一作物だそう。
特に切先付近は地景が地刃両方に掛かり、幻想的な躍動感ある世界を見せてくれる。相州伝の極めというのはことごとく難しい。
拵がこれまたとても美しい。
時代も結構古そうで江戸初中期頃に見えますが果たしていつ頃の物なのでしょうね。
・慶長八年八月日 国広(重美)
この刀は確か国広展でも展示されていた気がするので、見るのは恐らく2回目。
個人的に国広の作の中でも非常に好きな1振でザングリ肌を前面に押し出した片切刃の作で傑作の1つではないかと感じている。
写真では分かりづらいですが裏の形状が分かるように鏡を設置してくれている。このあたりの心配りがとても有難いです。
ザングリというと個人的には国広よりも国路の方が肌を上手くまとめている印象があるのですが、この1振はやはり別格でさすが国路の師を思わせる様相を見せてくれています。
・八王子の刀
会場には八王子に由来する刀も展示されていました。
東京富士美術館が八王子にあるのでいわゆる郷土刀というものですが、こうした刀にも焦点があてられるのはとても良いなと感じました。
1718年に作られた武州下原の剣も。
他にも虎徹の四ツ胴裁断の刀なども展示されていました。
金象嵌の裁断銘は鏡越しに見えるようになっていたのでこちらは是非会場でご覧になってみてください。
また別の虎徹を手に取ってみたように鑑賞出来る特別スペースも!
こちらの使用感についてはまた次回のブログで紹介しようと思いますが、刀の展示の在り方を変えて多くの人に刀の魅力を身近で体験してもらえる非常に良い試みに感じました。
是非全国の美術館で広まって欲しいところです。
③終わりに
サムライアート展は12/22まで東京富士美術館にて行われています。
東京からは電車で1時間位で行けるので、悩まれている方は絶対に行った方が良いです。
絶対に後悔しませんので…!
という事で今日はこのあたりで。それではまた明日。
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それでは皆様良き刀ライフを!
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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)
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