桃山文化を感じる光忠鐔
個人的に見ていて詫び寂びを感じる鐔としては、金家、埋忠明寿、平田彦三あたりが挙げられるが加えてもう一人いる。
それが光忠。
長船光忠ではない。
金工の光忠。
埋忠明寿とほぼ同年代に活躍した金工で、埋忠系図には出てこないものの作域から埋忠派の金工と考えられており、明寿よりも先輩格と考えられているとのことであるが、桃山文化を感じる作風を残している。
他の光忠の作例で言えばZenzaiさんのブログに2点紹介されている。
特に2つ目の山水塩屋図鍔を見ると、明寿鐔に現れるような「皺」が光忠の鐔にも表れている事が見て取れる。
同じく銀座長州屋さんの以下「芦に飛鳥図鐔」の在銘品にもやはり同じような皺が顕著に見てとれる。
渋みと深みある真鍮地の色合いが美しく、明寿の持つ雰囲気に近い詫び寂びを感じるが、埋忠明寿が一つの対象物(例えば柏の葉や九年母など)を描くのに対して、光忠はもっと広い視点で風景そのものを布目象嵌などを駆使して描いている物が多く感じられるのは興味深い。
以下は埋忠明寿の作2点。
いずれも植物単体を細かく描写している。
私の知る範囲ではあるが、恐らく明寿の作で風景を描いている作は無い。
光忠と明寿が実際に近しい関係だったのかは分からないが、当時の高級素材であった真鍮を使っている点や、腐らかしによる皺が共通して現れている点はやはりこの2人が近しい関係にあったことを表しているようにも感じる。
いずれにしても光忠は景色を、明寿は1つの対象物を、それぞれ独自の世界観で表現している点に美しさを感じる。
そういえば同時期に活躍されたと考えられている金家も風景を描いた作が多い。
あくまで個人的な考えであるが、光忠は金家の作風を意識し、その世界観を真鍮で表現しようと試みた時期があるのではないか、と感じる。
金家ほどの禅味などは感じられないが、華やかな桃山文化を感じ取れる光忠の作はやはり見ていて趣があり美しい。
因みに光忠の在銘作は数点のみですこぶる貴重とのこと。
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