松井江
吉光や正宗と並ぶ天下三作の1人、郷義弘(南北朝期)の作で、差し裏に朱銘で義弘、差し表に本阿(花押)が入ります。
享保名物帳所載。
1935年に重要美術品、1954年に重要文化財に指定。
刃長69.4cm(2尺2寸9分)、反り1.8cm、元幅2.8cm、先幅1.8cm。
大摺上げではなく摺上げという括り。
現在は佐野美術館が所蔵しています。(松井文庫に「長岡式部少輔(松井興長のこと)」と金蒔絵された朱鞘が現存)
①松井江の号の由来と伝来
細川忠興の重臣「松井興長」が所持していたことに由来。
松井興長は1646年に八代城3万石を預かり城主に。
代替わりの際に江戸城で将軍より朱印状を貰っている事から松井興長が八代城を与えられた際に献上したと考えられている。
その後、松井家から徳川将軍家の所有となり5代将軍綱吉の娘「鶴姫」が紀州徳川家に嫁ぐ際の引き出物として贈られるが、その際に本阿弥光常に鑑定を命じ、代金子二百枚の折り紙を発行。
以降は紀州徳川家に伝来するものの、1933年に行われた紀州徳川家の第2回入札で売り立てされ、2390圓にて落札される。
1935年の重美指定の際の所有者は伊藤平左衛門。
1954年の重文指定の際の所有者は権藤尚一。
その後、1961年の「正宗とその一門」で佐野隆一氏が所持している事が分かっている。
現在は佐野隆一氏が設立した佐野美術館に収蔵されている。
②なぜ朱銘を入れた?
刀には金象嵌と呼ばれる溝に金を流し込む豪華な物がありますが、なぜ松井江は金象嵌にしなかったのでしょう。
それは本阿弥に掟があったからです。
5台将軍綱吉の命により鑑定を命じられた本阿弥光常ですが、本阿弥家では刀剣に鑑定銘を入れる際、大摺上げの場合には金象嵌を入れ、生ぶ茎の場合には朱銘を入れる決まりになっています。
松井江の場合は、元の茎が僅かに残っていた為に金象嵌銘でなく朱銘を入れたとの事。
(画像出典:国指定文化財等データベース)
③作風
これは今ちょうど「刀剣鑑賞」というアプリが話題になっています。
これをダウンロードして携帯を傾けたりしながら鑑賞してみての作風の印象です。(実際の松井江は見た事がありません。)
今まで拝見した事のある江はどちらかというと沸が細かく、匂い口が深いものが多かった気がするのですが、この松井江は地沸がもの凄く沢山ついており、一方で匂い口は比較的締まっているように見えました。
刃中の働きはアプリ上では確認出来ないが、実際も無いのだろうか?
江というと刃中の働きが激しいものが多い印象であったが、以前稲葉郷を拝見した時はむしろ刃中の働きは少なかったので、どっちがどっちというのは無いのかもしれない。
帽子が1枚風になるのは江に良く見られ、小板目が詰んでいるようにも見える所が他の江とも似てるなと感じた点です。
④松井江が今ならスマホ1台で誰でも鑑賞可能
という事で今旬な松井江が「刀剣鑑賞」アプリにより誰でも手軽に鑑賞できるようになりました!(松井江の無料鑑賞体験は2/13まで。以降は1100円の課金で鑑賞可能との事。)
これは実際の刀鑑賞さながらを体験する事ができ、例えばスマホを傾ける事で刀身に当たる光の位置を変える事が出来ます。
拡大しながら見てみる事で、地沸に至るまで非常に細かく鑑賞する事が出来ました。
他要望として挙げさせて頂くとしたら、もう少し広い範囲に光が届くと嬉しく思いました。(刀鑑賞時は刃文や地鉄など光が当たった周囲の部分を鑑賞する事になりますが、その範囲が狭いと鑑賞しづらい為です)
また現状匂い口辺りが眩しくて良く見えない為、光量も落とせると嬉しく思いました。(実際の刀鑑賞時にライトの光がまぶしすぎる場合は、ライト自体の向きを少し変えて光量を調節したりしています)
「刀は持たないと分からない」と言われていた時代がもう終わるかもしれません。刀鑑賞がもの凄く身近になる神アプリなのでまだの方は今すぐダウンロードしましょう。
そして部屋の電気を消して鑑賞に没頭しましょう!
3月に山鳥毛の追加をはじめ、これからも様々な刀が登場すると思われます。
「刀剣鑑賞」アプリは以下からダウンロード可能です。
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)