日本刀のレジンアート
日本刀のレジンアートが日本玄承社さんから発表されました。
2023/3/21まで名古屋栄三越8階にて展示が行われているとのこと。
名古屋刀剣ワールドの山田さんが早速展示の様子をアップされていました。
日本刀は本来、戦の道具であり、献上や下賜などに使われる資産性を持った道具であり、神仏の対象としての神器であった。
そこに終戦後は美術刀剣として美術品として刀を鑑賞するという新しい文化、価値が生まれた。
これは刀を手に持ってライトにかざし、刃文や地鉄を鑑賞するというスタイルである。
そして今回のレジンアートはその鑑賞というフィールドを極限まで尖らせた形では無いかと思う。
レジンで刀を閉じ込めて一切取り出さないという発想。
これであれば空気に触れる事が無いので錆びる事はないだろう。
尚一度閉じ込めた刀を取り出せるかは不明(レジンを溶かすには除光液に浸す必要があるらしいが、除光液が刀に及ぼす影響が分からない為)
「手に持って楽しむ」という部分を排除した発想で実に突飛なアイデアで面白い。
確かにライトを適切に当ててあげれば刃文や地鉄の鑑賞は変わらず出来る。
出来ないのは「手に持つ」という事のみ。
一方で刀を持った事が無い人でも年齢を問わずより近くで安全に刀鑑賞出来る。しかも宙に浮いた感じもまたデザイン的に素晴らしい。
ホテルなど安全面が重視される場所での展示もこれであれば現実味を帯びてくるはずである。
ホテルでの展示が出来れば多くの人々に日本刀の美しさを届ける事が出来るだろう。
以前展示ケースを用いての展示をホテルで出来ないか実際にホテルにプレゼンしに行った事があったが、「もしドアを割られたら…こじ開けられたら…」という所でリスクをゼロにする事は現実的に難しく、なかなか実現できないというハードルがあった。
しかしレジンであれば取り出す事は出来ないのでリスクはゼロに出来る。
一方で恐らく否定的な意見も沢山出る事だろう。
手に持てないなど(茎を触れないなど)意味がない、刀を閉じ込めるなんて何事か、などなど感情に任せた意見も多く出るはず。
ゼロイチでしか物を捉えない人が案外に多い為である。
従来の楽しみ方とレジンでの楽しみ方、どちらかを消すのではなく共存させれれば良いだけなのであるが。
そんな事もあり恐らく今まで刀を手に取り鑑賞してきた既存の愛刀家からは反対意見が多く出るかもしれない。
しかしそれがなんだと言うのだ。
個人的には今回のこの作品がきっかけで、日本刀の鑑賞意味、しいては現代における日本刀の在り方を人々に再度考えさせる所に価値があると思う。
これはまさしくアートである。
マティスやピカソ、デュシャンなど作品に対して世間から激しいバッシングをされたが、「既存の概念から出る疑問を世間へ問いかけた事」と「固定観念を壊した事」という2軸が後世にアートとしての高い評価を得ている。
批判が沢山出るという事はむしろ可能性があるという事である。
ところで私は刀は展示するのが好きだから展示ケースを作ったわけであるが、「気軽に手に取って鑑賞したい派」でもあるので製作している全ての刀展示ケースは鍵を開ければ簡単に刀身が取り出せるように作っている。
何百年と経た刀の茎を触ったり、刀の重量を感じる事で歴史の重みも楽しんでおり、そういう所が鑑賞する上で刀の楽しみの1つと感じていた。
そんな事もありレジンに完全に刀身を閉じ込めるという発想自体を持つ事が出来なかった。
こういう既存の概念に捉われない新しい発想が出来る人というのは素晴らしいし、私はこのレジンアートに1つの可能性を感じる。
そして新しい日本刀のインテリアとしても広まってほしいとも思う。
但し現状としてはやはり何百年と歴史ある刀をレジンの中に閉じ込めるというのは不安があり反対で、現代刀であれば賛成、というスタンス。
不安がどこから来ているかと言えばそれは先に書いた通り、レジンが刀身に与える影響が分からないという点と、一度閉じ込めた刀を傷付ける事なく取り出す事が出来るのか、という2点について、私自身知識不足の為です。
それらがクリアされるなら私は古い刀もレジンに閉じ込めるのは有りだと思います。
むしろ国宝や重要文化財など閉じ込めた方が後世に綺麗な状態で災害などからも安全に残せて良いのかもしれません。
いずれにしても今回の展示会を通しての世間の反応、そしてそれを受けた今後の動向がとても楽しみです。
現代刀の価値を高める素晴らしいアイデアに思います。
心より応援しています。
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それでは皆様良き御刀ライフを~!
現代刀のアートとしての可能性については以前記事にまとめたのでよろしければ以下をご覧ください。
↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)