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保存、特保、重要、特重刀剣。どんな人がどんな風に鑑定審査を行うのか

日刀保の審査階級には保存刀剣、特別保存刀剣、重要刀剣、特別重要刀剣の4種があります。
これらの指定にあたり審査員の名前などは公表されていませんが、一体どんな人がどのように審査をしているのでしょうか。
また一般人でも審査員になれるのでしょうか。
日刀保の審査規定を見てみます。

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①鑑定審査員の数

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(画像出典:「公益財団法人日本美術刀剣保存協会 審査規程」より)

重要以上の審査になると、審査員が増えるようです。
「文献等」というのは例えば「○○家伝来」とあった場合、それを証明する資料を添付する事になるわけですが、それが正しいかどうかを調べる人かと思われます。
刀装や刀装具については外部から審査員を数名設置していますが、刀剣に関しては1人も外部審査員を置いていないようです。


②審査員の資格

どういった人が審査員になれるのでしょうか?
審査規定を見ると以下のように書いてあります。

(審査員の資格)
第6条 審査員は、刀剣等に関して豊かな知識・鑑識眼を有し、刀剣等審査について、公正な判断能力を有する者であって、下記のいずれかに該当する者でなければならない。
(1) 伝位付与規程に定める「奥伝位待遇」以上の知識を有する者
(2) 刀職者のうち無鑑査選任規程に定める「無鑑査」認定を受けており、鑑識眼が優れている者
(3) 刀剣類の研究などの学識経験者
(4) 協会職員として刀剣等の審査業務に従事し、鑑識眼が優れている者
(5) 協会主催又は支部主催鑑賞会に永年参加し、更に刀剣等に関して研究するなど鑑識眼に優れているとして協会審査員2名の推薦を受けた者
(「公益財団法人日本美術刀剣保存協会 審査規程」より引用 )

一般の人はなれない、と思いきや意外にもなる方法が用意されています。
例えば(1)の「奥伝位待遇以上」というのは、筆記試験や実技試験、論文などをクリアする事で授与される伝位が4段階(初伝位→中伝位→奥伝位待遇→奥伝位)あり、上から2番目以上になれば資格が貰える事になります。
後は(5)のように支部の鑑賞会などに参加して認められる、といった方法もあるらしいです。(2)~(4)は一般の人には現実的ではなさそうです。


③重要、特重審査は2段階ある

重要刀剣や特別重要刀剣といった審査時は、いわば足切りと本審査の2回に分けて審査を行うようです。

第1段階審査(いわば足切り)は、日刀保会長が指名した審査員(外部委嘱審査員を含む)が行い、明らかに合格基準を満たさないものを除外。
第2段階審査は、そこを通過した物を全て審査。
但し、第2審査から初めて加わった審査員から第1段階審査で落ちた物の中にこれはいいよという異議申し立てがあったら第2審査に加える事が出来るとのこと。


④刀剣商関係の人は審査員になれない

正確に書けば以下のとおりです。

「刀剣商並びにその配偶者及び一親等内の親族に刀剣商がいる者」はなれません。

そうです、刀剣を世の中で一番見ている人達は審査員になれないのです。
これは刀剣商が自分たちの刀を自分達で審査して合格させるという事を起こさせない為(審査に平等性を担保する為)と過去に聞いた事があります。
言いたい事は分かるのですが、刀に最も詳しい方達が審査に参加出来ないというのは何ともむず痒い。

「奥伝位待遇」というのがどの位の鑑識眼がある人がなれるのか分からないのですが、素人が合間に出来る限り勉強した20年間と、刀に人生を捧げた人の20年は天と地ほどの差があると思うんですよ。
また刀職の無鑑査クラスの方であっても刀の出来を自分達で判断して売買しいている刀剣商に比べれば見ている本数は確実に少ないと思われます。
不正出来ないシステムを考えて刀剣商の方達を審査に介入させる方法を考えた方が審査の質が上がると思うのは私だけでしょうか。(今の審査の質が低いと言いたいわけじゃない)


⑤終わりに

審査に当たっては公正を担保する為に、審査申請前に事前鑑定を行ってはいけなかったり、審査物に対して情報交換をしてはいけないなど色々決まりがあるようです。
因みに審査にあたって、各審査員が審査手帳に必要事項を記入してこれを
基に分科会での審議を経て審査台帳を作成するようです。
審査を依頼する側からすれば高い審査料を払う事になるので不合格の場合はその理由をその審査台帳から抜粋して一言くらい明記しても良いと思うのですが贅沢な悩みでしょうか。
まぁでも鑑定審査とは難しいですよね。
出来が良い悪いの判断だけではなくて偽銘かどうかも判断しなければならないわけですから…。
責任も重大です。

審査の規定について更に詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
(タイトル未設定とありますが、日刀保の審査規定についてです)


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