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平安城鐔 鹿紅葉図② 鹿の意匠について

以前手に入れた以下の室町頃の平安城鐔には鹿が描かれているわけだが、同時期とされる蝦夷や古美濃、金家などの鹿のデザインを見てみることにする。
何か共通性が見られるかも、と期待して。


①蝦夷

鹿の体毛が丸や線で描かれていたりなど敢えて異なる表現をされているのが興味深い。よく見ると角の有るオスは体毛を棒線で、メスは丸で描かれている事が分かる。

「武士の意匠-透かし鐔-」より
「武士の意匠-透かし鐔-」より
「武士の意匠-透かし鐔-」より


②古美濃

金工美濃彫りより抜粋

・秋草に鹿図小柄(古美濃)
鹿の身体には体毛が描かれていない様子。

「特別展 金工美濃彫」より

・美濃鐔
以下3枚の鐔は彫が深くなさそうに見えるため、古美濃というよりは少し時代が下がり江戸初期頃の美濃鐔だろうか。
鹿の体に丸い斑点が見られる。

「特別展 金工美濃彫」より

同じく同時期のものと思われる類似した鐔。

「特別展 金工美濃彫」より


・別系統の美濃鐔
こちらも彫が深くないので、先の2枚の鐔と同時代頃に思えるが、同様に体に丸い斑点が見える。

「特別展 金工美濃彫」より
「特別展 金工美濃彫」より



③金家

信家や埋忠明寿と並んで桃山三名工に数えられる鐔工。

・城州伏見住金家 春日野図(重要文化財)

「金家鐔」より


改めて手元の鹿の絵を見てみる。

体毛ほ模様など描かれていないが、輪郭に毛並みのようなものが表現されている。

先に紹介した鹿の絵を時代毎に並べると以下のような感じだろうか。

これに照らし合わせると、やはり桃山以前、とりわけ古美濃あたりの鹿のデザインに似ているようにも思える。
ただ比較母数が圧倒的に少なく、まだまだ資料集めが必要。
現時点で言えば鹿の輪郭に体毛を描いている(手持ちの鐔)あたりなどは古美濃や蝦夷のデザインとも相違も見られ、この辺りの金工とはやはり全く別の金工なり地域で手掛けていそうにも感じる。
そして鹿の外形であったり、体の模様などより凝って描かれるようになるのはやはり江戸時代以降というのは鹿に限らず共通にも思える。

今後も鹿モチーフの桃山以前の作が見つかり次第比較して精度を上げていければと思っています。
ということで今日はこの辺りで。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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