なたみ

作品の評論・批評をまとめる用。

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最近の記事

「ドリーム・シナリオ」――夢は唐突に。

 アリ・アスター監督の最新作「ドリーム・シナリオ」。それまでの作品に比べ、非常に一般受けする作品ではなかろうか、とわたしは思った。一見ブラックコメディとして綺麗にまとまっていると感じたからだ。  ちなみに、この感想を打っている時点でまだ他の人の感想は見ていない。まだ夢見心地の中で、ありのままの気持ちをまとめていこうと思う。 感想(※ネタバレ含む)  主人公のポールは、とある大学の教授でありながら自分の研究を文献を発表できる機会がなく、またその機会すらもかつての同級生に奪わ

    • 「ボーはおそれている」 この呪いの広め方

      前置き この記事は「ボーはおそれている」の単なる感想しか書いていない。  ネタバレを含む。 感想 最初に観終わったあと、体がほてっているのを感じた。ずっと嫌な映画だったのに、謎の高揚感があった。いつの間にかわたしはクスリをキめていたのだろうか。そういえば「ミッドサマー」を観終えたあともそんな風に感じたな。  本作は、妄想と現実の境がほとんど明かされないまま進む。まあ、ほとんどボーの都合よい(悪い)妄想だととらえたほうがいいだろう。あんな治安の終わっている街があるの、おもしろ

      • 「ツキトウサギ」とは何だったのか。

         今回は「圧勝」の作者によるアクション漫画、「ツキトウサギ」の話をする。  最初に断っておくが、今回私は「ツキトウサギ」の単行本を買っていない。それでは批評をする立場としていかがなものかと思われそうだが、「圧勝(全13巻)」をまとめ買いしてすごくすごく後悔したからなので、許してほしい。  ただし個人的には、「圧勝」はまだ「吉田」というキャラを描くのが楽しいので、資料のために見返す余地がある(吉田を描くのが楽しい人間など作者と私くらいなものだろうが)。  しかし「ツキトウ

        • 「圧勝」とは何だったのか。

           裏サンデー、マンガワンを知っている人ならば、「圧勝」について知らない人はいないだろう。  その内容の薄さにもかかわらず、なぜか打ち切られないで連載が続いていたことから、コメント欄には誹謗中傷を始め、ファン(?)とアンチの壮絶な殴り合い、果ては全く関係のない他の漫画の感想が書かれる、買い物メモにされる等、Twitterのような雑多な書き込みであふれるようになった。その結果、運営によってコメント欄が閉鎖されてしまうという異例の状況を生み出した漫画だ。  わたしも連載を追って

          「パプリカ」の例のセリフは「狂った文章」として消費されるべきか?

           表題にもある「パプリカ」というアニメ映画はご存知であろうか。2007年に公開された本作品は、90分程度ではあるが内容・映像ともに濃く、今でも人気が高い映画作品である。原作は筒井康隆による同名小説であり、近年では「観るマリファナ」とその中毒性の高さを評されることもある。  内容を知らなかったり、観たことがないという人でも、以下の島所長による「演説」のセリフは一度は見かけたことがあるのではなかろうか。 「うん…必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵さんも言わなかった。 パプリカのビキニ

          「パプリカ」の例のセリフは「狂った文章」として消費されるべきか?