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公務員にもマーケティングは必要ですか?(6) ~USP を考える~

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6.USPを考える

前回は、3Cから4Pや4Cへ展開するためのツールとしてSTPをご紹介しました。
今回は、もう一つツールをご紹介します。

USP(Unique Selling Proposition)
自社(の商品やサービス)のみが持つ独特の強み(ウリ)

コンセプトやブランディングなども類似した概念かもしれません。
USPは広告活動を効果的にするツールでもあり、前回のSTPのP(ポジショニング)と深い関係性があります。
顧客(Customer)の心に響かせるためには、費用をかけて広告やキャンペーンを実施するだけでなく、メリットを分かりやすく、しかも競合(Competitor)が真似できないような内容を伝える必要があります。

つまり、自社(Company)のウリがポジショニングマップ上、「その他大勢」から抜け出した空白の市場にいる状態にすることで、顧客の心に残りやすくします。
4Pや4Cの中にそういうウリ(USP)があると格段に顧客への訴求力がアップします。
USPは次のような卵の断面図で説明できます。

商品やサービスのどの部分にUSPがあるのか、あるいは、ポジショニングマップの軸を何にするのかで、競合と差別化を図るべきUSPを何にするのかが変わります。

ベネフィット(商品そのもの)にUSPがある事例

上記の図で説明すると、ベネフィット(商品そのもの)にUSPがある場合は、卵の黄身の部分になります。

ダイソン「吸引力の変わらない、ただ一つの掃除機」

これは、掃除機が持つベネフィット(商品そのものの価値)、つまり「吸引力」という軸でウリをアピールしている例です。
他社の掃除機は吸引力が落ちるけど、ウチのだけは落ちませんよと「吸引力が変わらない」というメリットを分かりやすく、しかも「ただ一つの」ということで競合が真似できないことを端的に伝えています。

余談ですが、このキャッチコピーがあまりにも有名なので、ダイソンは吸引力が強いと思っている人も多いのではないでしょうか?私もそう思っていました。
しかし、単純にゴミを吸い取る力だけで比較すると他社製品の方が吸引力は強いようです。
ダイソンは「吸引力が変わらない」と言っているのであって、「吸引力が強い」とは一言も言っていないのです。

しかしながら、USPとポジショニングがうまく商品(Product)や顧客にとっての価値(Customer Value)にマッチした印象強いキャッチコピーだったため、吸引力も一番強いと思わせることができたのでしょう。(もちろん他にも要因はあるでしょうが・・・)

形態(デザインやパッケージなど)にUSPがある事例

次に、卵の断面図の白身のところ、つまり形態(デザインやパッケージなど)にUSPがある事例です。

相模屋食料(株)「ザク豆腐」
王子ネピア(株)「鼻セレブ」

上記2つは、商品そのもの(卵の黄身)はこれまでのものと変わらない、あるいは競合にも類似品が存在するけど、パッケージ(卵の白身)が他にないオンリーワンだったためヒットした事例です。

「ザク豆腐」はその名の通り、パッケージをアニメ「機動戦士ガンダム」に出てくるザクの頭部にしたところ、30~40代の男性を中心にSNSで話題となり、豆腐に関心の薄かった層からの興味を獲得しヒットしました。
枝豆を使った豆腐は他にもありましたが、ポジショニングマップの軸をネーミングとパッケージのインパクトの強さにすることによって、「その他大勢」を抜け出しています。

また「鼻セレブ」といえば、白アザラシや白ウサギの鼻(顔?)をアップにした可愛らしいパッケージが有名ですよね。
今でこそ誰もがあのパッケージをイメージしますが、発売当初は「ネピア モイスチャーティッシュ」という商品名で、パッケージも写真ではなかったそうです。
それを「鼻セレブ」という商品名にして、パッケージを変えたところ大ヒットした、つまり、USPをベネフィット(商品そのもの)から、形態(デザインやパッケージなど)に変えたことで成功した事例です。
同じようなティッシュ箱がスーパーなどの棚にズラッと並んだ時のインパクトは群を抜いていますよね。

ちなみに、このパッケージもいろいろな種類が出ており、ヤギやアライグマなどもあったようですが、どのパッケージの売り上げが良かったのかも調査して、より顧客の心に残りやすいものを調査しマインドシェアのアップも図っているそうです。

付随機能(配送、アフターサービスなど)にUSPがある事例

最後に、配送やアフターサービスなどの付随機能、卵の断面図で言うと殻の部分にUSPがある事例です。

ドミノピザ「熱々のピザを30分でお届けします」
家電量販店など「長期保証、ポイント付与、無料点検」

ドミノピザは、かつて「熱々のピザを30分でお届けします」というキャッチコピーが有名になりました。
最近では「ミッション20ミニッツ」と称して、プラス200円で20分以内の配送を保証し、時間オーバーした場合は次回のピザ無料クーポン券を配布するサービスを行っています。

これは、おいしいピザという商品そのもの(卵の黄身)でもなく、パッケージやデザインなどの形態(卵の白身)でもありません。
配送という軸で、ポジショニングマップ上、競合がまだ進出していないブルーオーシャンを見つけています。

また、商品を購入した後の長期保証やポイント付与、無料点検などのアフターサービスを軸にしているのが、家電量販店やデパート、スーパーやショッピングセンター(モール)などです。
他社製品を商材にしているため、卵の黄身や白身の部分は自社では変えられませんので、殻の部分で独自色を出すしかありません。

3Cも時代や環境によって変化する

ここまでいくつかの事例を見てきましたが、ダイソンやドミノピザのキャッチコピーは現在では使われていません。
なぜなら、今では競合他社も吸引力の落ちない掃除機を開発していますし、30分配送も取り入れてしまっているため、USPが薄れてしまったからです。
一度ブルーオーシャンを見つけても、次第に競合が参入してきますし、顧客の嗜好も変わっていきます。

つまり、顧客や競合などは時代や環境の変化によって変わっていくものなので、自社や4Pや4Cもそれに合わせて変化させる必要があるということです。

公務員にとって白身や殻の部分をいかに良いものにできるかが腕の見せどころか

今回のUSPを公務員軸で考えてみました。
卵の黄身の部分は、例えば「日本一○○なまち」とか「待機児童ゼロを目指す」とか、その自治体の核となる課題や目指すべき目標、ありたい姿などが思い浮かびましたが、それは首長の役割が大きく、首長の意思によって左右されるものなので、職員レベルではピンと来ないかもしれません。
あるいは、税金の徴収や介護保険、生活保護などの法律で定められたものについても、サービスそのものである黄身の部分は変えられません。

私はかつて、乳幼児の予防接種(BCG、日本脳炎、麻疹、風疹など)を担当をしていたことがありますが、これも予防接種法で定められた全国共通のものですので、勝手に種類を増やしたり減らしたり、対象者を変更したりすることはできません。
しかしながら、白身や殻の部分は自治体によってかなり差がありました

例えば、10種類以上ある予防接種をいつ何回接種するのかなどを掲載した案内書類を、一覧表にしている自治体もあれば、冊子にしている自治体もあります。
そのデザインも見やすい、分かりやすいものもあれば、そうではないものもあります。
これが白身の部分です。

また、殻の部分としては、その案内書類や予防接種に必要な書類を一度に全て渡す自治体もあれば、接種する時期が来たらその都度、郵送する自治体もあります。
さらに、予防接種は原則として住民票のある自治体で接種することになっていますが、人によっては、かかりつけ医が隣町のクリニックであったり、里帰り出産などで一時的に他自治体にいる場合もあります。
この場合、自治体によっては自己負担で接種してくださいというところもありますし、近隣自治体と協定を結んで、相互に住民を受け入れられるようにしているところもあります。
あるいは、紹介状を書いて他自治体にお願いするところもあります。

このように、法律で定められた全国共通のサービスの場合、全国どこでもサービスを受けられるように制度や体制も整えてくれよ、という愚痴をこぼしながらも、住民が不利益を被らないように白身や殻の部分で工夫を見せることが、公務員にとっての腕の見せ所なのかもしれません

デザインということであれば、埼玉県三芳町が有名です。
ホームページのトップ画面がコレ↓↓

広報紙の1面がこんな感じ↓↓

どの自治体でも広報紙やホームページを作成していますが、正直どこも同じようなデザインです。
同じようなデザインでも見やすく分かりやすいものであれば問題ないのですが、そうなっていないのが現実です。
三芳町は写真を上手に活用したり、文字のフォントや色合いなどを考えて視認性の高いデザインにすることで、全体的な印象を大きく改善しています。
こういった小さな努力の積み重ねが、住民にとっては大きなサービスの変化につながるのだと思います。
メディア受けするような派手さやセンシティブさはありませんが、こういう地味なところで創意工夫し住民サービスを下支えしている公務員は決して少なくありません。

つづく
(画像は各社ホームページから引用させていただきましたが、もし転載NGであればご連絡ください)

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