パーティが苦手な女
みなさん、パーティはお好きですか?
私は好きではありません。というか苦手です。
そんな私が、100人集まるパーティに呼ばれた話です。
「一日店長やるから、来てくれたら嬉しい」
と、キヌキヌから連絡がきました。
キヌキヌは、お仕事の友達。ビジネスプロデューサーとして、笑顔でちゃきちゃき場を仕切る人です。私は、大変お世話になっています。
キヌキヌの会なら、行く。二つ返事で参加を決めました。だって一日店長って、あれでしょう。20人も入ればいっぱいのお店を貸切にして、入れ替わり立ち替わり人が出入りするやつだよね。うん。開店直後に、顔出せばいいよね。
「おかげさまで、30名を超える方から参加申込をいただきました。」
キヌキヌのFacebookに、集客の進捗が投稿されます。そりゃそうよ!シゴでき、チャーミングなキヌキヌよ。人気者だよね。
「一日店長の参加申込が、40名に!」
「おかげさまで参加申込が50名を超えました!」
お。さすがキヌキヌ。なんだか、すごい増えてきた。盛況でなにより。早めの時間に行って、様子みて帰ろう。
「参加申込が64名に!」
「とんでもないことになってきました。参加申込が70名を超えました!」
うん。すごく増えている。主催者いわく、前代未聞の申込人数だと。増える人数に応じて、急遽、隣のスペースも使うようにしたと。予想外の展開になってきた。
「参加申込が80名に!」
「参加申込が90名突破!」
えっと。キヌキヌ。大手カメラメーカー勤務時代に、副業ではじめた事業が売上1億円を超え、そちらに専念したのち事業売却をしたキヌキヌ。やり手っぽい、キヌキヌ 。一方で変なことへの好奇心を隠せない少年のようなキヌキヌ。何者なんだ。もしかして、やんごとなきお方なのでは。
「ついに申込が100名突破しました!」
もう驚かない。にしても、100名。これ見事な、まごうことなき、完璧な、いわゆる「パーティ」じゃないですか。キヌキヌ、この日が誕生日なの?もしかして出版でもしますか?
私は、キヌキヌという人物を甘く見てしまったのでした。一日店長でおさまる男じゃなかった。
どうしよう。私、パーティ苦手なの。それも、100人て。どうしよう。ウェイウェイしてんのかな。シャンパンとか開いてんのかな。はあ。キヌキヌはいったい、何者。恐ろしくなってきた。
そして迎えた、当日。オープンのタイミングを逃した私は、何時に行くのが正解か分からず、夜8時前にキヌキヌに聞いてみました。
「正解はない」
無造作に撮られた写真が送られてくる。写っている人数は、29人。すごいね。盛況で何より。この会は、夜9時台にピークを迎えるとみた。
ということで、近くのカフェで文章を書き、SNSにどうでもいい投稿をしてグダグダ過ごし、夜10時を過ぎたころ、私は現場に参上したのでした。
「おせーよ!ぴらゆう!」
遅いよね。分かるよ。でも私、パーティ仕様の女じゃないから…来ただけえらいでしょう。
夜10時を過ぎ、ざっと40人いる。聞くところによると、さっきシャンパンが開いたそう。やはり。
「さて、どこにぶちこもうかな」
「いいって!ムリムリ!大人数、ムリ。3人以下ね」
「仕事、プライベート、変態、どれがいい?」
「変態に決まってる」
ということで、キヌキヌセレクトの変人さんをご紹介いただき、探り探り、数人と話しました。お話しした人はみんな明るくユニークで、楽しかったです!
さて。なぜ100人集まったのか。私の見解です。
キヌキヌは、なんとパーティ当日まで、参加者全員の紹介文をせっせと書き、参加者同志が事前に確認できるよう、ウェブ上に公開していたのです。仕事ぶりから人柄、その人の価値観までを300文字くらいずつ、全員分ですよ。普段から、彼が人と丁寧に関わってきたからこそできる。
でもこれ、おそらく本人はがんばっている自覚なさそう。キヌキヌは、キヌキヌとして溌剌と生きているだけ。彼はただ、偏見のない広い心で、楽しく人と接するだけ。そして、それに救われる人がいるんです。私もその一人。
知り合ってから、やたら「おもしろい」と、私の仕事ぶりを褒めてくれるキヌキヌ。そこには、子どものような純粋さを感じる。相手に利用価値を感じるかどうかで人付き合いする人たちを多く見てきた私には、キヌキヌに邪心がないと分かります。
私がキヌキヌの意見をもらいたくて連絡をすると、迅速に率直に意見をくれる。それに対して、何も見返りを求めてこない。だからこうして「一日店長をするから来てほしい」とキヌキヌが言うならば、私は行くわけです。ここぞとばかりに。
要は、キヌキヌの周りにはそういう人が、100人いたって話です。
なんじゃこれ。キヌキヌへのラブレターになっちゃった。最初は、100人も集まるパーティに私を呼ばないでよっていう文句のつもりで書きはじめたのに。ま、これも、キヌキヌの人徳によるものですね。