カクヨム連載中の『ソードオブスタリオン』の感想
カクヨムにて、ライトノベル作家の三雲岳斗氏がお書きになっている『ソードオブスタリオン』の感想をお送りします。11話まで読んでの感想です。
以前、ご紹介した『ダンタリアンの書架』の作者です。
『ダンタリアンの書架』と異なり、『ソードオブスタリオン』にはダークな雰囲気はなく、困難と共に明るい希望のあるファンタジーです。ファンタジーではありますが、SF的な要素もあります。
巨大ロボットを思わせる狩竜機と、練(れん)騎士の使う『練』にまつわる、システマチックで論理的な設定はいくらかSF的だと思います。
ただそれは、現実の科学を扱っているわけではなく、いわば架空の科学的設定です。そういった意味で、ファンタジーでもあり、SFでもあると言えるでしょう。
主人公のラスは、有力貴族を父親に持ち、極めて優秀な練騎士でかなりの美形です。上位竜なる強大な敵を倒すも、婚約者であった皇女は戦死。絶望して娼館に入り浸る日々を過ごすようになります。
人々の同情の声もやがては蔑みに代わり、種馬騎士なるありがたくない二つ名で呼ばれるようになったのでした。
そんな彼はある日、皇宮勤めの練騎士に油断したところを捕らえられ、皇太子のもとに連れてゆかれます。皇太子は死んだ皇女の双子の兄、かつてのラスの親友です。
久々に会った皇太子は、ラスに驚くべき依頼をしてきます。政略結婚のために、隣国の王女を誘惑して寝取れと言うのでした。
こう書くと色っぽい感じのお話かと思われるかも知れませんが、中心となるのはバトルと政略です。色っぽいシーンはほとんどありません。
練を使っての武器での戦い、狩竜機に乗ってのバトル、どちらも読み応えがあります。
戦闘シーンを書くのにはかなりの技量が必要だそうです。まるでアニメーションを見ているような鮮やかな描写で、すんなりと動きが目に浮かぶようになっています。
どのキャラクターもきっちり形作られていて、背景となる物語まで想像できるようです。単なる役割だけのキャラクターでも、主人公の引き立て役でもなく、一人ひとりが活きたキャラクターとして動いているのです。
あくまで主人公を中心にしつつも、そうした周りのキャラクターもおざなりにはしない作りが小説全体の質を上げています。
また、そんなキャラクター同士のからみが、自然なストーリー展開となって流れてゆくのです。
会話も自然で読みやすく、状況説明とキャラクター性を見せる掛け合いの双方を、上手く兼ねています。
こんな素晴らしいライトノベルですが星は3桁、ランキング上位の1万超えには遠く及びません。
カクヨムにおいて、電撃文庫から出版が検討されるようなすでに実績のあるプロ作家の小説や、コンテストで賞を取る小説は、ランキング上位には行きません。全く異なる評価軸があるからです。
とはいえ、こんな素晴らしいライトノベルが、もっとウェブ小説の世界でも目立って欲しいと個人的には考えています。
それでは今回はここまでです。読んでくださってありがとうございました。
追記
『ソードオブスタリオン』は電撃文庫から出版が決まりました! 以下が公式サイトのリンクです。
おめでとうございます!