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ウェブで主流のライトノベルと従来型のライトノベルを試作してみました
現在、ウェブで主流のライトノベル(≒なろう系)
【世界は主人公≒ターゲット読者をもてなすために存在する。美少女だけでなく、悪役までもが主人公≒読者の快楽に奉仕するためだけの存在である】
僕が森の中の道を歩いていると、前方から女の子が助けを求めて走り寄ってきた。
「お願いです、助けてください。変なやつに追われているんです」
女の子はとてもかわいい。金色の髪に青い目で、かなりの美少女だ。
僕は彼女を助けることにした。
「おい、だまってその娘をこっちによこしな」
美少女の背後から、見るからに怪しげな男が現れた。剣を抜き、僕の目の前に突きつける。
美少女は悲鳴をあげた。
僕はあっさりとその剣の殺傷力を無効化してやった。もう刺されても、軽く指で押された程度にも感じないだろう。
男にはそれが分からない。僕が平然としているのが気に入らないのだろう、顔を凶悪にゆがませて切りかかってきた。
倒すのに一分もいらない。次の瞬間、やつは僕の目の前で伸びていた。
殺してはいないぞ。気絶させただけだ。
「あ、ありがとうございます!」
美少女に礼を言われた。
「どういたしまして。ところで君、名前は?」
「ルルイエと申します」
美少女は頭を下げながら言った。
「私は《深き者》の一族の娘です。助けてくださったお礼に、一族があなたをもてなします。どうかついてきてください」
僕はルルイエに言われたとおり、一族の暮らす森の奥へと案内された。
続かない
◆
次に、従来型のライトノベル。
【主人公はターゲット読者が感情移入するように、応援したくなるように書かれている。しかし、≒読者ではない。
世界は主人公をもてなしはしないが、過度に理不尽でもない。
美少女も悪役も、それ自体として独立して存在し、主人公が能動的に関わることで反応が変わる。
私が知る限り、このあたりはエンタメの基本であり、海外翻訳物の壮大なファンタジーでも、ファンタジー以外のジャンルでも、似たようなものであると思われる】
僕が森の中の道を歩いていると、向こうから少女が走ってきた。きらきらと輝く金髪は豊かに波打ち、肌は象牙のようにつややかで白い。遠目にも大変な美少女なのは見て取れる。そして、背後から怪しげな男が追ってくるのも見て取れた。
「助けて! 助けてください!」
少女は僕を見ると、一縷の望みにすがるように叫んだ。晴れた日の湖のように澄んだ青い瞳で、僕を見上げている。
僕は彼女に駆け寄り、背後にかばう。
「あ、ありがとうございます……!」
「まだ、助けられるとは限らないけど」
冷たいようだが事実だ。
僕は強い。それもかなり。しかし無敵ではない。僕よりも強い相手なら、当然勝つのは難しい。
「おい、黙ってその娘をこっちに寄越(よこ)しな」
男は全身を、錆びついたチェーンメイルで覆っていた。突きつけられた剣の切っ先も錆びている。
ろくに武具の手入れもしていないのだろう。軽蔑の念が僕の心に浮かんだ。
それが顔に出ていたのか、
「てめえ、何を小馬鹿にしたようなツラしてやがる!」
男はいきり立って、僕に向かって剣を振るった。
その剣は空を切り、僕には当たらなかった。
《無効化》だ。もう、僕にダメージを与えることは出来ない。
男はそれでも無駄な抵抗をした。武器も持たずにいる僕を甘く見たのだろうが、もう遅い。あっさりと男の頭部に回し蹴りを食らわせてやった。敵は倒れる。
死んではいない。はずだ、たぶん。
「あ、ありがとうございます……!」
「どういたしまして。ところで君、名前は?」
「ルルイエと申します」
「そうか。あの《深き者》の一族なんだな」
これはきな臭い匂いがしてきたな。
そう思った時には、僕はもう事件に巻き込まれていたのだ。
続かない
◆
と、こんな感じでやってみました。
私は後者の従来型のライトノベルが好きですね。
それでは、読んでくださってありがとうございました。
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