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連作ストーリーにおける解決し切れない問題
連作ストーリー、要するにシリーズ物には、その都度解決する問題と、シリーズを通じて解決し切れない問題がある。まあ少なくとも、そんなタイプの物があるのだ。
これは主人公の長期的な目標とは違う。長期的な目標なら、いつかは解決するだろう。そうではなく、主人公の生涯を掛けても、決して解決し切れない問題である。
それは、背景世界、あるいは舞台設定の一部なのである。
私が見たり読んだりした範囲では、特にアメリカンドラマやアメリカのハイファンタジーを読むと、作中の舞台となる地域の、治安の悪さは根本的には解決しない。
身も蓋もない言い方をすると、それが解決してしまえば、それ以上話を続けられなくなるからである。
後は、現実の世界を舞台にしていると、あまりにも現実からかけ離れた世界になってしまえば、受け手は感情移入できなくなる。
やはり現実と同じ様々な危険がある世界で、戦ったり何とかしたりする主人公たちだから、応援されたり共感されるのだと思うのだ。
ハイファンタジーの場合は? というと前述した通り、その世界観でシリーズを続けたいなら、そのままにするしかない。
ダークな世界観のファンタジーなら、ずっとダークなままにする。
危険に満ちたハードな世界観なら、そのままにする。
その場合は、ダークだったり、危険に満ちた世界観そのものが、いわば『売り』の部分なのである。
たとえば悪の支配者を倒して世界に光がもたらされる、なんて展開にすれば、逆にダークな世界観の『売り』は消滅するのである。
でももちろんそれは、悪の支配者を倒して、あるいは他のやり方で、世界に光をもたらして、根本的に解決するファンタジーが駄目だという意味ではない。
それがファンタジーの全てではないし、それがファンタジーの魅力の全てではない、というだけである。
ファンタジーに限らず、現代を舞台に犯罪捜査するなんて話だと、まあ根本的にその地域の治安がよくなることはない場合が多いと思う。
そうした物語では、大抵の場合主人公たちは政治家ではないし、治安の改善は主人公たちの役割の範疇を超えるからである。
まあ私が知る限りでは、日本を舞台にしていると、さほど治安は悪くないはずなのに、なぜか主人公の周りには事件が起こり続ける、なんてパターンが多いようにも思えるが。
手塚治虫『ブラックジャック』では、主人公ブラックジャックは神技とも言うべき外科手術の腕で問題を解決できる。たまにビターエンドになる話もあるが、それでも主人公の神技自体は揺るがない。
でも、あの世界における根本的な問題には手が付けられない。
日本の医療の問題、そして生と死の問題そのものには、いかなる天才外科医でも根本的な解決はできないのである。
だからだ、この漫画の各話のラストには、いつも程よくビターな雰囲気がただよう。
私はそんな物語も大好きである。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。
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