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「GO BACK」
劇作品とは社会の裏返し
劇作品は社会に問題提起する
劇作品には世界を変える力がある
私は戯曲を書いている
「GO BACK」と云う作品だ。
最近のニュースは暗い話題が多い
特に悲しみを覚えているのは、三つ。
フジテレビに関する一連の報道
子供の自殺者数の増加
穴ぼこに落っこちてしまい帰ってこれなくなった年配運転手
平和だった時代は変容し
自分が歳を重ねるごとに
過去は更に旧さを増し
自分たちの成果と
どうしようもない課題を目にする
私などは高校生で社会からドロップアウトし
その後優秀な中卒社会人として生きる事もなく
演劇と云う生易しくない世界を盾にして
現実と呼ばれる
重く辛く
然し受け入れて生きて
死ぬ
しかないものから
如何に離れることが出来るのか
そんなことばかりを意識して
生きのびてきた
死ぬこと
傷つくこと
変容することを
私は異常に恐れている
私はこの世界で吐息を続けてはいるが
果たして生きていると
自信を以て答えれるか
何度も何度も問いかけてきたこの質問が
改めて頭をもたげる
私の様な人間が戯曲を通して世界と繋がろうなど
笑止千万
私がかつて席を共にした同級生
教卓に立っていた先生
コンビニで働いていた青年
派遣先で仕切っていたおばさん
あなた方に届くとしたら
私は何を書きますか
一体何を
届けたいですか
やけに声の大きい主張や
現実が板につかない妄想は
誰だって時間の無駄だ
価値があると認めない人の前で
言葉を発信し
やめなければ
どうなるのか
警察に通報されて
私は叫ぶことをやめる
しかし
私は
本心は
想いは
なんだろか
人として
この命として
何をしたいのだろうか
俺はそのまま
言葉を喉につっかえたまま死ぬのか
言葉を発して生きていくのか
人が人の言葉を聴く時
聴かない時
違いは何か
よくわかっていない
熱意だけでは
通らない
門はある
私は戯曲を書いている
「GO BACK」と云う作品だ。
劇作品とは社会の裏返し
劇作品は社会に問題提起する
劇作品には世界を変える力がある
私は私の存在を
通報するものに対して
死んでもいい
屑と呼ばれてもいい
敵対関係になってもいい
俺はアンタたちに靡かない
俺は自分が思う人の道で必死に生きていく
格好よくない
ださい
それ以前の問題である
しかし
結局
何事も
手遅れでも
人は人として
最後まで懸命に
命を懸けること
俺は協調せず
靡かず
しかし屑のように
生きてきて
私は問いかける力など
過信しない
力などない
だけど書く
何故か
ここに生きている
ただいつも存在証明だけの為
生きていると叫ぶ事が
存在していると伝えることに
意義と意味がある
簡単に虐げられて
足元を見られて
仕事もなく
親の脛を齧り
恋人は自殺し
親友は連絡不通となり
明日死んでもおかしくないし
誰かに同情されることも
称賛されることもない私と云う器が
現代如何に消費されて
潰されるのか
抵抗する姿を魅せるのか
劇作品とは社会の裏返し
劇作品は社会に問題提起する
劇作品には世界を変える力がある
「GO BACK」
戻りなさい
人は人を虐げて生きている
ソレを揶揄したいと思った
人は誰かを踏みにじり麦を手に入れる
代わりに誰かが足蹴にされながら
空腹に耐えかねて
死ぬ
然しソレは余りにも当然過ぎて
誰もが見向きもしない題材だ
ソレは余りにも世の儘ならぬ姿を形容しているようで
俺はなんだか哀しい
言い方を変えれば
社会と繋がる作品とは
其処に絶望がなければ
とてもじゃないけれど
受け入れられないと言うのならば
俺は何のために生きているのか
わからない
ひとにやさしく
ブルーハーツが歌っていた
やさしくしてもしても
限度がある
どれだけやさしいひとも
最後には
手を離す
そして罪悪感を胸に秘めながら
日常世界に溶け込んでいく
たくさんの夢と
希望と
やさしさと
友情が
世界を繋いできて
今日を迎える
それでも我々は非常に苦しみを抱えながら
笑ったり
泣いたりしながら
頬に蚊が止まるなら
殺生する
ように興味のない人間が
自殺を試みるポストを見ても
何も思わない
電車の人身事故で
死者に「死ね」と言うやつ
思うやつ後を絶たない
沢山の劇作品
芸術がはびこってすら
浄化されぬ誰かに対する憎悪を
私は何と理解しようか
劇作品とは社会の裏返し
劇作品は社会に問題提起する
劇作品には世界を変える力がある
まだ、これ以上何を提起する?
キリストやブッタが死んでもなお
何を変えていく?
この流転すら
この愛に溢れても止まぬ哀しみの洪水を前にして
私は何を伝えたい?
山を下りても
村はただ笑いながら
死を待っている
耐えきれぬほど物語を背負いし時代で
今日も消えていく自殺の芽を
死ぬなと叫んでも
また一人死ぬ
「GO BACK」
戻りなさい
何処へ戻る?
温かい家庭か?
愛する恋人か?
人が人で在ったところで
何が救われる?
俺は社会という流転する言葉を
実のところ嫌っている
私である前に人間である
いや人間である前に私である
私的な演劇作品が一体何故創生されるのか
何故創ってきたのか
「人が鼻で笑うことを」
この腕で
タイピングで
俺は
笑わない
俺は援護する
そんなささやかな
一言を
伝える事が
戯曲
ささやかな言葉は
ほんとうにささやかで
人の波に揉まれると
疑心暗鬼となる
もしかしたら
戯曲に登場する彼等も
本質的には同じ思いなのかもしれない
どうしようもないこのすばらしいせかいで
たった一言でも
たった一言でもだ
無駄に終わるにしても
発することは
もしかしたら
僕の様な
はぐれもの
俯瞰的に世界を切り抜くような
スケール感を持ち合わせていない私だからこそ
できることかもしれない。
劇作品とは社会の裏返し
劇作品は社会に問題提起する
劇作品には世界を変える力がある
俺は変える為の根拠が今は思いつかない
何をしても波紋が止むように
しか思えない
その程度
それぐらいも
といった方がいいのか
過信し過ぎているだけなのか
「GO BACK」
戻りなさい
たったひとつのささやかな人類史に捧げる
愛の言葉を
私は
書くことにしよう
笑われるし
笑われ続けるし
否定され続けるし
見棄てられるし
加害されるし
加害するし
見棄てるし
大事なモノ壊すし
総て破るし
破る
破る
破る
それでもさ
言葉を発する姿だけを
今書いてみようよ
それが言葉だと思う
戯曲だと思う
私をかえてみようよ
まずはさ
そこからだよ