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秋が好きじゃない理由~娘とめぐる思い出回収の旅~

(タイトルの写真は宮ケ瀬ダムのとなりのあいかわ公園)

毎年毎年秋になると、心地よい風が吹いてくるとつらいのです。体が反射的に何かを思い出して、涙が出ます。
そして、この思いを毎年繰り返し自分の中でかみしめて、こうじゃなかった人生ってあったのかな、って考えます。


写真を撮らないママ

娘が4歳のころから、私たちは2人で暮らしてきました。
夫が亡くなってしまったので。

私が出産で入院し、退院したのと同時(か、少し前)に夫のガンがわかり、入れ替わりで夫が入院しました。S字結腸です。

手術はしたけれども最初にきいていたより、開腹してみたらだいぶ悪かったようです。かろうじて人工肛門にはその時はならないように、がんばって医師も手術してくれました。

定期的に検査もして、もし再発やそのほかの合併症などがあったらすぐに対処できるように、きちんと受診もしていました。

そして、ずっと一緒に家族で生活できると信じたい反面、私は写真をあまり撮らなくなりました。
もともと自分が撮られるのは好きではないのですが、娘の成長を家族と一緒に記録するのが、どうしても嫌だったのです。

なので、娘の写真は撮っても家族で一緒にとか、夫と娘、私と娘の写真はほとんどないです。
そのころから、この写真をいつか見て、泣くんだろうなって思っていました。楽しかった日々、ずっとこの幸せが続くと思って信じていた日々が、手の届かないどこかに行ってしまったときに、絶対私は一人で泣くんだって。

でも今は思います。夫と私の写真は毎年1枚でも撮っておけばよかったって。結婚してたった5年で終了してしまう生活ってわかっていたら。

秋の日のおでかけ

よく夫が元気なときは、家族3人でいろいろなところにおでかけしました。夫は車の運転が大好きだったので、秋のこの陽気のいい季節はとくに行ったように思います。
キャンプに行ったり、ちょっと遠くの広い公園や動物園へ行ったり。

そいうときの思い出が、もう夫がいなくなってから17年たっても、写真がなくても秋の空気を感じるとどうしても蘇ってきてしまいます。

忘れようとしているわけではないのです。
娘と2人でも楽しく生きていてもつらくて、寂しいものは寂しいのです。

娘に、どうしても寂しい思いやつらい思いをさせたくなくて、全然大丈夫な素振りで生きていきたかったので、なんとか時間を作って楽しいことをみつけてきました。
「わたしたちが楽しく過ごしていないと、パパが悲しむからね」って。

秋にとくにつらかったこと

・今でも、小さなお子さんとご夫婦の家族が楽しそうにお出かけしているのを見ると、単純に「いいな。羨ましいな」と思います。そして、心の底から、どうかこの家族の誰も病気や事故で悲しい思いをしませんようにって願います。

・娘の運動会や、父親も参加するような行事はつらかったです。私の妹家族が、欠かさず幼稚園の運動会には来てくれて、お弁当食べるのも2人じゃさみしいだろうって、まだ小さい甥っ子を連れてきてくれていました。
でもやっぱり、みんなに気を使われているのは心苦しかったような気がします。その時は一生懸命だったけど、「運動会」という言葉を聞くといつものあのいや~な気持ちが湧いてきてしまいます。

・母に言われた言葉。ちょうどこの陽気になったころに、夫の再発がわかりました。それを実家の母にはなしたときに「どこそこの○○さん(実家の近所の方)も何歳のときにご主人亡くなった」「あっちの△△さんも30代で小さい子が2人いたのに旦那さんなくなった」と、未亡人の名簿を読むかのように私に言ったのです。

私の夫は生きていて、再発したといってもまだ治療をこれからするところです。しかし、母の中ではもう亡くなると決めつけた発言。

私は泣いて、その話をやめてくれるようにたのみました。母は、「なんで泣くの?」と、全然悪いと思っていない。どうせ遅かれ早かれそうなるんだよ、くらいの言い方をされた気がします。実家から帰るバスの中で涙が止まらなくて、周りの乗客の方に心配そうに見られたことを、今思い出してもまた涙が出ます。
母のことは言ったらキリがないので、今はどうでもよくて。そのやりとりを、毎年毎年思い出して私は泣くのです。

思い出回収の旅

この17年。私は子育てのため、必死で仕事をしてきてとくに自分の楽しみは後回しにしてきました。なにが自分の楽しみなのかも、よくわからなくなってましたけど。

そのため、娘と旅行も2回くらいしか行ってないかな。旅行ってお金かかります。ただ、日帰りでもおでかけできそうなときは、夫と娘と3人で行った場所に行ってみたりします。

そしてそこで起きたエピソードを娘に話します。娘も「へー!そうだったんだね」と、現場で話を聞かされると面白いようです。
少し前に、宮ケ瀬ダムの公園に娘と行きました。「ここであなたが転んで、石にぶつかって前歯折ったよね」って。「あー、ここだったのかー」って。

娘も大学生でなかなかの忙しさなので、私一人で行ってもいいかなと思っています。思い出全部は無理だけど、行って思い出に浸って、これからは泣く回数減ったらいいなと。

子育てがほぼ終了となった今、私の思い出回収の旅はこれからが本番です。


宮ケ瀬ダムの旅で偶然みつけたおいしい揚げパン



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