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【前編】『やりたいことがどんどん叶う!じぶん時間割の作り方』発売記念:吉武麻子さん(タイムコーディネーター)&松田紀子(はちみつコミックエッセイ)対談
ーー4月に発売された『やりたいことがどんどん叶う!じぶん時間割の作り方』の監修を担当してくださった吉武麻子さんと、毎日大忙しでくたくたな編集部の松田が「有意義な時間のつかいかたについて」教えを乞う対談記事をお送りします。ああ、1日が48時間あったらいいのに‥‥!
(文責:松田紀子)
プロフィール
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タイムコーディネーター 吉武麻子
TIME COORDINATE 株式会社代表。
大学卒業後、旅行会社勤務・韓国留学などを経て独立。
キャリアとライフイベントの狭間で葛藤した経験から、疲弊せずに毎日を楽しみながら仕事のパフォーマンスもあげていくオリジナルのタイムコーディネート術を考案し、のべ3000名以上に指南。手帳の製作販売も行う。
著書『目標や夢が達成できる1年・1ヵ月・1週間・1日の時間術』(かんき出版)。
神奈川県出身、2児の母。
X:@time_coordinate
Instagram:@time.coordinate
HP:https:// time-coordinate.com/
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はちみつコミックエッセイ編集長 松田紀子
メディアファクトリー→KADOKAWAでコミックエッセイや生活情報誌編集長を経験後、2019年(株)ファンベースカンパニー入社。現在、「はちみつコミックエッセイ」編集長兼務。コミックエッセイ描き方講座も主催してます。
▶タイムコーディネートを考えるきっかけ
(松田)
吉武さん、今日はよろしくお願いいたします。
吉武さんはタイムコーディネーターになられる以前は、自分自身でも時間の使い方が下手でボロボロだったっていうお話を伺っているんですが…。(親近感)
(吉武)
はい、そうですね。
(松田)
以前はどういう感じだったのでしょうか?
(吉武)
昔から、目標や計画立てるというのは割と自然にできていたタイプで、時間の使い方もそれなりにできるかなっていう自覚はあったんです。時間管理の本を読むのも好きでしたし。
それが覆ったのが、26歳で韓国に留学に行ってからですかね。 27、28ぐらいで現地に就職してるんですけど、日本での仕事って1から10まで順序立てて1個1個決めて進んでいくじゃないですか。ですが、韓国の場合って1から10を一気に「用意ドン」でスタートさせる感じで。
私、当時韓国のクライアントの企業広告に、海外に住んでるモデルさんをキャスティングする仕事をしていたんです。
日本だったら当たり前に、クライアントと合意して、コンセプトや内容が決まった上で進行しますが、韓国ではクライアントに確認する前に、まずこういうコンセプトで行こうみたいなのが決あって、それが全部先に私たちのキャスティング会社にも来るんですよね。なので、クライアントとは何も決まってないわけですよ(笑)。決まってないんだけど、キャスティングがスタートして。だからその後の変更も多くて、それが何回も繰り返されるんです。
(松田)
…伺っただけでストレス溜まりそうです。
(吉武)
めちゃくちゃストレスたまるんですよ、本当に(笑)
(松田)
その進め方、韓国の文化なんでしょうか。
(吉武)
はい、文化なんだと思います。それは日本人からするとありえないじゃないですか。でもそれを日本以外の他のアジアの国に投げると、余裕で返事が返ってくるんですよ。
海外は臨機応変に対応することで回ってるんですよね。日本はこの臨機応変さが苦手なんだなというのを、働きながら感じたんですね。
事前に準備するということは確かに大事なんだけど、何かあった時に臨機応変に対応する。で、韓国は最後絶対に合わせてくるんですね。
進行の仕方にいろいろ疑問はもちつつも、何があっても対応するという力は確かに必要だなと。 これは個人においてもそうですね。子供が熱を出したとか、急な案件が降ってきたとか、そういう対応すべき時ってあると思うんですけども。
自の力っていうんですか、それが元々日本国民って弱いんだなっていうことを気づいて、私自身もそうだなって思ったんです。
なので当時、世に出ている時間管理術を読んでも、優等生のタイムマネジメント術という感じがしていました。何かあった時に、もうちょっと柔軟に臨機応変に対応できるようになりたいなって思ったんですよね。あとは、海外の働くお母さんたちを見ていて、 撮影を夜遅くまでやったとしても、仕事は仕事、家庭は家庭みたいな感じでシッターさんを活用して、仕事もプライベートもしなやかに楽しんでいる姿を見ていて、やっぱり日本人ってすごく家族思いで真面目だからこそ、母親がひとりで抱え込みやすいんだなってわかって。
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(松田)
それが吉武さんがタイムコーディネートを考えるきっかけになったんでしょうか?
(吉武)
それまではできるビジネスマンが描いたような時間管理術が多かったのですが、女性はライフを含めた色んな役割を持っているので、男性的時間管理っていうのは苦しいって思っていました。
大人が楽しく時間を過ごすということは、子供たちの未来のためにも大事だと思った時に、もっとお洋服とかインテリアとかを自分が好きで心地よくコーディネートしていくように、時間もそういう概念で、自分にあった使い方をコーディネートしていければいいなと思って、タイムコーディネートという概念に行きついたんです。
(松田)
なるほど~、韓国でお仕事されていて、目まぐるしく状況が変わる中に身を置かれていて、ビフォー、アフターでは吉武さんご自身の対応力は全く違ってこられたんですか?
(吉武)
そうですね。「これが大前提で動くだろう」っていう「ヨミ」みたいなものがなくなったので、まずは疑うようになりました。「これはまだこうなる可能性もあるから」っていう、自分の中で視野が広くなったのは1番大きかったかなと思います。
(松田)
対応力って確かに持ち合わせが少ないですね。対応力なのか、キャパなのか、持ち合わせてないとワーってなってパニクっちゃうみたいな。
(吉武)
そうなんですよね。
仕事はタイトなはずなのに、一緒に働いてる韓国人の同僚たちはどんなに忙しくても、どこか遊びに行ったりしていて楽しんでて。それは独身だからっていうこともあったと思うんです。でも私がこの先のキャリアとライフイベントを考えた時に、この働き方は続けられないなって思って。 だけど、楽しむっていうことは忘れたくないからこそ、もっと柔軟なタイムマネージメントの考え方が必要だなっていうのは、私自身もすごい葛藤したが故に、思いましたね。
▶そもそも24時間に詰め込みすぎている
(松田)
例えば今提唱されてる、自分に優しい、 自分の気持ちを大事にするタイムコーディネートに出会うまでの吉武さんの24時間ってどんな感じだったんですか。
(吉武)
そうですね。 大きく2つあって。
1個は韓国でバリバリ働いてた独身時代。
まだキャスティングの仕事もアルバイトの状態で、社員になる前段階の時は、日本人のお客さんが多かったので、朝6時からソウルのホテルのビュッフェ会場でスタッフをやってたんですよね。朝4時とかに起きて、出社して、お昼の12時まで働いて。
お昼食べて、13時からキャスティングの会社で18時まで仕事をして、その後、19時から韓国人に日本語を教える家庭教師の仕事をして、それも毎日20時とか20時半ぐらいまでやって、その後は韓国人の友達と飲みに行くみたいな、その時は1番フルで動いて謳歌してたんですけど。
結婚してからも割と夜型で、朝の6時に起きて8時出社で17時18時まで働いて、残業があればそのまま残って、という感じです。予定がなければお友達と遊んで、夜中の12時ぐらいに寝てっていう生活をしていて、基本夜型だったんですね。だけど、やっぱり子供を産んでからは、夜本を読もうとか、起業を見据えていたので準備しようとか思っても、寝落ちをしてしまって。
で、起きた時に、「あぁ、昨日もできなかった」という自分責めと、さらには「この子がもっと早く寝てくれれば」という子どものせいにしてる自分に心底がっかりして。そこからもう潔く子供と一緒に寝ようって決めて、朝に起きて活動したという時期もあるんですけど、基本夜型で、睡眠を大事になんかしてなかったっていう生活を送ってましたね。
(松田)
朝型にした時は、お子さんと一緒に21時ぐらいに寝ちゃって、4時とか3時ぐらいに起きるって感じですか?
(吉武)
4時に起きてました。
(松田)
朝早く起きるって、その分早く寝るから睡眠時間を犠牲にしなくてよくて、脳の回転も良くなる感じはありますよね。
(吉武)
はい、その通りですね。やっぱり睡眠はしっかり取った上で、4時に起きるからこそ逆算で21時に寝るというのが決まっていて。ここが崩れてる人がすごく多いですね。
(松田)
本書でも川瀬はるさん(漫画家)が第一声で「寝る時間を削ります!」っておっしゃってて、 やっぱりやりたいことを充実させたいと思うと、どうしてもそう考えちゃう。
自分1人でコントロールできる時間ってそこしかないから。
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(吉武)
本当唯一の楽しみと言っても過言ではない時間だったりもしますよね。
(松田)
さっき吉武さん、寝落ちしていたころは「朝起きて自分責めと子供責め」っておっしゃいましたけど、コミックエッセイの読者はお母様方が多いんですけど、この「自分責め」って多分9割の方が毎日やってると思うんですよね。
(吉武)
いや、そうですよね。本当に
(松田)
これ、吉武さん的にどうしてだと思われます?
(吉武)
やっぱり、やろうと思ってたことがやり切れなかったからこそ、「あぁ…(後悔)」っていう想いだと思うんで、そもそもが詰め込みすぎなんですよね。
(松田)
そうですね。そもそも詰め込みすぎなんですよね…(実感)。
(吉武)
朝起きられたとしても子供も起きてきちゃった。で、「なんで起きるんだ!」ってここでもイライラする人もいると思うんですけど、これも、この時間に終わらせておかなきゃ1日が回らないぐらい予定を詰め込んでるからこそ、イライラしてしまう。
(松田)
そもそも予定を入れすぎなんだけど、入れすぎがもう無意識に身についちゃってるんですね。
▶人間には”時間を軽く見積もる心理”がある
(吉武)
そうです。人間って時間を軽く見積もる心理があるんです。
(松田)
「これだったら1時間ぐらいでできるかな」って思っちゃう。できないのに。
(吉武)
自分がベストな健康&精神状態かつ、それがずっと続く、かつ見積もりも甘い感じで。なぜかそこではみんながみんな自己肯定感高いみたいな。
(松田)
これ、人間の心理学的にデータとしてあるんですかね?
(吉武)
データとしてもありますね。日本人だけではないです。
時間の流れに対する自分の能力をすごく高く見積もる癖っていうのは人間としてあるみたいで。
(松田)
これは私個人の話になりますけど、例えば企画書を書かなくてはならない時、見積もりが甘いからだいたい1時間ぐらいでできるだろうと思うわけですよ。で、どんどん後回しになっていて、もういよいよやんないとな、って時に、まあ1時間でできるからやろうと思って着手したら、企画書を書く前提の調べ物がいることにそこで気づくみたいな。
(吉武)
わかります、わかります。
(松田)
そんなのばっかりなんですよね。だから、本当甘いなと思って。
(吉武)
私も時間の専門家とか言ってますけど、これはちょっと起きてしまう。
「計画錯誤」というんです。
(松田)
今は何か仕事が発生したときは、「1週間のうちにちょいちょい手を付ける」ようにしました。「金曜日の16時から1時間で仕上げちゃおう」というのはもう無理だってことがわかったんで。
手をつけてない仕事って、自分の中でモンスター化してどんどん巨大な恐ろしい存在になっていくんですけど、1週間のうちにちょっとずつでもそのモンスターをつついて慣れていくと、 こことここさえ攻略すれば、このモンスターはもう解消するなってヨミが立つようになって。で、その1週間のうちになんとなく解消されていく。そのようなことが、ようやく最近できるようになりました…!
(吉武)
いや、本当にそうなんですよ。1時間で終わるって思ってても、モンスター化でだんだん「いや、実は手ごわいだろうな」って思い始めるからもっとやりたくなくなっていって、そのまま放置しちゃう。で、さらにモンスター化していっちゃうみたいなところがあるので。
それでいくと、スモールステップで何かしら手をつけていくってこともすごく大事だし、1時間で終わるって思ったこと自体を自分で疑って、最初は2時間とかでもいいので多めに取っていくとか、金曜日だったら木曜日中に自分の中で締め切りセットしてやるとかですね。
人それぞれ自分がやりやすい方法はあると思うんですけど、そうやって余裕を持たせておかないと、計画錯誤が起きる。モンスター化した仕事はいつまでも残って「また終わんなかった」っていう自己嫌悪に繋がって、もっとやりたくなくなっていっちゃうんですね…。
それをプラスに持っていくためには、さっき言ったようにスモールステップにしていくっていうのがすごく大事ですよね。
▶自分に厳しい完璧主義な日本人女性
(松田)
本書を読んでいて、自分たちが時間を軽く見積もることもそうですけど、私たちは自己嫌悪に陥るようなやり方を進んで自らやってしまってしまう、ということが非常にクリアに理解できたなと思っていて。
(吉武)
みなさん、自分に厳しいんですよ。「そんな、私なんてそんな」みたいに謙遜される人ほど、自分にすごい厳しくって。
(松田)
そうですね、これまたみなさん、自分に厳しいのはどうしてなんでしょうね。
(吉武)
他の人と比較するからでしょうか。
まわりはすごく頑張ってるからっていうとこで、自分はまだまだ!と追い詰めて苦しくなって。自分がとても頑張ってることに気づいてらっしゃらない方も多いんです。
1個ボタンを掛け違えると、そうやって全部ネガティブな方に行ってしまうので。
(松田)
やっぱり日本人の多くの女性は、人と比較してしまう癖があるんですかね。
(吉武)
それもそうですし、頑張ってる人ってすごい理想が高いんですよね、完璧主義っていうか。
時間の本に興味がある方って、なにかしらやりたいと思ってたりとか、元々器用な方が多かったりとか。独身の頃は自分1人だからなんとかなっていたことがどんどん、色んな役割が増えて、もう馬力じゃどうしようもなくなってきたみたいな状況になっている。
だからこそ、周りの動けてる人を見て、「はぁ、私なんてまだまだ」って負のループに入っていっちゃうので、どこかでちゃんと自分でボタンを違うところにかける、元に戻すっていうことをやってほしいです。
(松田)
自分の時間を作っていくということに関して、「時間の主導権を握るのが難しい」と思い込んでらっしゃる方へ、おすすめする最初の1歩があったらぜひ教えていただきたいんですが。
(吉武)
そうですね。まずはほんとに1日5分とかでいいので、例えばいいアロマの香りを嗅ぐとか、好きなコーヒーを飲む、カフェに行ってみるとか。あとは、お料理が好きな人だったら、食器をお気に入りのものに揃えてみるとか。日常的に手頃でできる自分の楽しみ、「自分が心地良い」と感じられる、気持ちのいいことを1日5分とかでもいいんです。ホッとする自分がいることに、だんだん気づいていって、徐々にそういう時間を増やしていこうって考えるようになっていけるんですよね。
(松田)
なるほど。5分からでいいんですね。
(吉武)
いきなり丸1日とかはやはり難しいと思うので。
(松田)
5分、10分でもいいから。
その時間が、いつの間にか自分の中で楽しみになってるということが自覚できたら、5分を10分にしようっていう風に自分の気持ちを大事にしてあげられるわけですね。
(吉武)
そうなんです。そんなふうに行動が変わっていくんですよね。
よく、1週間の旅行を糧に、毎日ストレスをためながらひたすら頑張ってるような人もいますけど、1週間の旅行のたびに数か月も頑張り続けたらしんどいじゃないですか。
なので、まずは日々自分を喜ばせて心地よくあることに注力する。逆に言うと、ストレスに深入りさせない。そういった意識をしていくと、そんな大きいご褒美がなくても毎日楽しめるし、そこまで踏ん張らなくてもいい。
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(松田)
本書では、今これに時間を使いたいです、ということを「私は今こういうブームです」ってとらえようという提案がありますが、「ブーム」として捉えることの、心理的な利点ってありますか?
(吉武)
そうですね。やっぱり人間って一貫性の心理ってところもあって、「1個これを決めたらこれを絶対成し遂げなきゃいけない」みたいな思いが強いんです。でも、「ブーム」って言うと終わりがある。ずっとやらなくてもいいし、いつまでやらなきゃいけないってこともないし、「今私はこれをやるのがブームだから、今を楽しむんだ」っていう風に思えると、終わりがあるんだとか、今は楽しんでていいんだっていういい意味での「軽さ」ができて、大きい心理的なメリットかなと思います。
(松田)
ブームって言われると一過性のものだから、この2ヶ月とか、 あるいは1週間ぐらいかなっていう感じで捉えて、それでハマっちゃったら一生の趣味にしてもいいわけですからね。
(吉武)
途中で辞めても大丈夫だし、やっぱ違ったな、みたいなのでも全然よいですよね。そこは軽やかに動ければ。
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ありがとうございました。対談は【後編】に続きます!!