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かすみを食べて生きる50:スケボーに乗ってウクレレを弾きたい
脳梗塞 発症1か月と17日目:リハビリ病院27日目
・食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事はミキサー食(昼食のみ)と鼻からの経管栄養。食事以外の時間はスプーン半分の水分を一度に10口まで飲んでよい。
・状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。階段は上り下りで少しめまいがする。
知らない歌を知るとうれしくなる。
『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症1か月と16日目:リハビリ病院1か月目㉖
発症1か月と18日目:リハビリ病院1か月目㉗>
『Slow & Easy』
コロナの自粛期間、家で楽しめる趣味として独学でウクレレを始めた。
脳梗塞になり入院した急性期の病院で音楽療法士さんに出会い、ウクレレを練習していたことを思い出した。
家族にウクレレを持ってきてもらった。
音楽療法士さんのリハビリ時間は病室で弾くことを許された。
そのまま転院先のリハビリ病院にもウクレレを持ち込み、現在空き時間に中庭とデイルームで弾くことを許されている。
今、私は熱心に練習している曲がある。
平井大の「Slow&Easy」。
作業療法士の花井さん(仮)がウクレレと言えばこの曲!と教えてくれた。
私は知らなかった。
「平井大、私大好きなんです!YouTubeにもあるので、ぜひ聴いてみてください!」
ほかでもない花井さん(仮)がそこまで推すのなら、聴きましょう。
なにこれ、めっちゃピースフル!
いいじゃん、弾きたい弾きたい!
速攻で私の心のウクレレ師匠、YouTubeの『ガズレレ簡単ウクレレ教室』で「Slow&Easy」を探す。あった!
ガズさんありがとう。
経鼻の食事中にノートにコードを写譜して、空き時間に練習する。
病院にいながらもYouTubeでウクレレを習える時代。ありがたい。
私はまだ弦を上から下にかき鳴らす、ダウンストロークしかできない。
でもこの曲には弦を上から下の後、下から上にはじくアップストロークも必要になる。
上下にジャカジャカならせるようになった上で、「ジャン ジャジャン ジャジャン 」という8ビートをできるようにならないといけない。
慣れない弦楽器だけど、学生時代の吹奏楽部の経験からなんとなく練習の道筋を考える。
ウクレレの弾き方が載っているサイトをいくつか眺める。
まずはダウンストロークとアップストロークが均等に鳴らせるようになるところから。
これは、基礎練が必要だ!
そして平井大の動画の2分57秒あたり。
平井大、スケボーに乗ってウクレレを弾きながら歌ってる。
ここを目指せということですね!花井さん(仮)!
こっそり練習して退院時には花井さん(仮)にこの曲を贈ることにしよう。
そして今私は、病院の中庭でスマホのメトロノームを慣らしながら無表情でアップダウンのストロークをひたすら練習するマシンとなっている。
スケボーはまだ遠い。
お昼ごはん#6
今日もデイルームでお昼ごはん。
おかゆに何を書こうかな。
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画数の多い漢字を書いてみたくて特に何があったわけではないけれど、めでたい感じに。
今日の献立はこちら。
麻婆豆腐
小松菜の煮びたし
おかゆ
小松菜の煮びたし…君、先週も会ったね。
副菜が一周してきたのを感じる。
いただきます。
小松菜の煮びたしは安定の食べやすさ、飲みこみやすさ。
この間ほうれん草の煮物は少しのど残りがあったのに、何が違うのだろう。
小松菜も繊維が残りそうなのに。不思議。
麻婆豆腐、豆腐は食べやすい。安心と信頼の豆腐。
欲を言うなら麻婆豆腐だからもう少し辛さが欲しい。
おかゆは量も多いので、咀嚼の訓練になってきた。
今日は食べにくいものがなかったので1時間5分くらいで、8割程度食べることができた。
ごちそうさまでした。
ガリガリチャレンジ#おやすみ
今日は時間がなくて売店には行けなかったので、ガリガリチャレンジはお休み。
チャレンジ2本目から、棒を洗って乾かして置いている。
入院中は自由に外に出ることはできないので軟禁状態。
脱獄するならこの棒が何かの役に立つかもしれない。
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ーー振り返って
「Slow&Easy」、リハビリのセラピストさんが患者に勧めるウクレレ曲の最適解なのではないかと思うほど、弾いて歌えば歌うほど、心の角を取ってくれるような曲でした。
そして今思えばこの練習はすごく手のリハビリになっていたと思います。
しびれのある右手で弦をはじくのはある種の感覚入力でしたし、失調のある左手の指で狙った弦をしっかり押さえるのもまるで作業訓練でした。
空き時間しかできないので、やりすぎないのもちょうどいい。
そして私への動機づけ。
花井さん(仮)に聞かせるために退院までに弾けるようになりたくて、練習がはかどりました。
花井さん(仮)、いい仕事してるなぁと思っていました。
おかゆアート、結構な画数もいけました。
可能性が広がります。
がりがりさんの棒、結局役に立つことはありませんでした。
ウクレレ、おかゆアートにガリガリ君。
今思えば変化と刺激の少ない入院生活に自分で自分のためだけに何かしらのアクセントや伏線を作ろうと必死でした。