見出し画像

【詩】乱気流

トンボの群れが
空に浮いて
風のすき間を泳いでいる
右から左へ 上へ下へ
水平飛行と急旋回を繰り返し
風に向かって 立ちどまり
おおきな目玉を ぐるりと回す

よどみに湧いたユスリカの子は
造作なく とらえられ
叫ぶ間もなく さらわれていく
ゆらめく 上昇気流の渦が
おびただしく 翅を震わせている

果ての空は 雲におおわれている
数えきれない 鉄のトンボが
逃げる場所のない ヒトの子を
見さかいもなく 奪い去っていく
タカの目の 狂った風が
怯えたように 蹂躙していく

©2024  Hiroshi Kasumi


いいなと思ったら応援しよう!

加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。