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意味が分かると感染症対策ができる計算式
0.はじめにーどうすれば感染症対策ができるのかー
新型コロナウイルスが広がってから一年半が過ぎました。
デルタ株とか、ラムダ株とか、ミュー株、空気感染とか、不安で一杯になる話も出ています。
政府の感染症対策も、政府のメッセージもよくわからないという声も多くあります。
しかし、実は、やるべきことはとてもシンプルです。
少しでもどうすればよいか、イメージができるように感染症対策の仕組みを計算式で表現してみました。
1.計算式
一番怖いのは、新型コロナウイルスで命の危険にさらされることです。
その構図は、次の式で表現できます。
重症化・死亡=(1)感染リスク×(2)重症化リスク×(3)治療体制
「(1)感染リスク」は、コロナに感染するかどうか、
「(2)重症化リスク」は、コロナに感染したら重症化(さらには、死亡)するかどうか、
「(3)治療体制」は、ちゃんとした治療が受けられるかどうか、
です。
さらに、これの要素を分解すると、
(1)感染リスク=①感染力×②感染者との接触×③感染予防
(2)重症化リスク=①年齢×②基礎疾患の有無×③ワクチン接種の有無
(3)治療体制=①感染の診断体制×②医療の受け入れ態勢×③感染拡大の状況
に分かれます。
これだけだとよくわからないので、各項目をもう少し掘り下げて書いていきます。
2.(1)感染リスク
(1)感染リスクは、コロナに感染するかどうかです。
感染リスクは、次の式で表現できます。
(1)感染リスク=①感染力×②感染者との接触(人との接触回数)×③感染予防
「①感染力」:新型コロナウイルスがどれだけ感染者を増やす力があるか、です。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、デルタ株は、感染力が従来株の2倍以上の感染力があるとしています。(西浦教授らのレポートによると、感染予防をしない状態だと従来株は一人の感染者が1.5~3.5人にうつします。上述のCDCのピクトグラムでは、従来株が2人に対し、デルタ株は5人で表現されています。)
「②感染者との接触」:新型コロナウイルスに感染している人とどれぐらい接触したか、です。
コロナがやっかいなのは、症状がなくても他の人に感染させることがあることです。(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版)」によると、発症の2日前から発症後7~10日間程度がほかの人に感染させてしまう可能性がある期間です。)
症状がない場合、感染者かどうかはわからないので、人と接触する回数で考えた方が分かりやすいかもしれません。
なので、多くの人と接触すればするほど、感染者との接触をする可能性があるということです。
外出を避けようとか、人流を減らそうとか、大人数の会食は避けようというのは、この感染者との接触の可能性を減らすためです。
「③感染予防」:体内にウイルスが入るのを防げているか、です。
マスクや手洗い、換気をすることで、体内にウイルスが入るのを防ぎます。
新型コロナウイルスは、主につばが飛ぶことで感染(飛沫感染)します。
お酒が入るとついつい大声でしゃべってしまいます。マスクも食事をしていると外します。政府がお酒の提供を伴う会食を制限しようとしているのは、この感染予防が甘くなる状況を減らすためです。同じように、マスクを外して会話する場面では、感染予防が甘くなります。
最近、空気感染について取りざたされていますが、「3密」のうち、「密閉を避けよう」ということで、早い段階で対策に盛り込まれています。ポイントは、換気をよくすることです。
(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版)」では、「5つの場面」として整理しています。)
3.(2)重症化リスク
(2)重症化リスクは、感染したときに重症化、死亡する可能性がどれぐらいあるか、です。
さらに、これを細分化していくと、
重症化リスク=①年齢×②基礎疾患の有無×③ワクチン接種の有無
です。
そして、①年齢については、
・重症化する人の割合は 約1.6%ですが、50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、
・死亡する人の割合は 約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)
となっています。
②基礎疾患の有無は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満、喫煙とされています。
③ワクチン接種の有無は、コロナの発症予防に効果があります。
(「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版))
また、アメリカCDCによると、デルタ株は、従来株よりも重症化リスクが高いとみられるデータがいくつかあるということです。また、ワクチンを接種してもコロナに感染する「ブレークスルー感染」もありますが、ワクチンを接種していれば、ワクチン未接種に比べれば、感染率は低くなり、他人に感染させる期間も短くなります。
4.(3)治療体制
(3)治療体制は、コロナに感染した際、特に重症化した際に治療が受けられるかどうかです。
治療体制=①感染の診断体制×②自治体の医療の受け入れ態勢×③感染拡大の状況
①感染の診断体制については、現在は、PCR検査や薬局での検査薬など相当程度の体制が整えられています。
②自治体の医療の受け入れ態勢は、ちょっと長文になります。
コロナも軽症の場合は、自然に治ることが多く、高熱が続く場合などに、解熱剤などで症状の緩和(対症療法)を図ります。
呼吸が十分にできない状態になった場合(血中酸素飽和度が93%以下)には、酸素投与や抗ウイルス薬、炎症を抑える薬などを飲むことになります。
それでも良くならない場合には、人工呼吸器による集中治療に至ります。
(「新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識(2021年8月版))
(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第5.2版)」)
特に、入院の受け入れ体制については、自治体におけるベッドの確保状況、そのための医療関係者の協力などが影響してきます。 特に、入院の受け入れ体制については、自治体におけるベッドの確保状況、そのための医療関係者の協力などが影響してきます。
③感染拡大の状況については、感染者全体の人数が多いと重症者の人数も増え、あらかじめ用意していた医療体制では対応できなくなります。また、感染拡大のスピードが速い場合には、医療体制の増強が追い付かないことになります。
5.まとめ(1)ーつまり、どうすればいいの?ー
上の計算式から、重症化・死亡を避けるために個人ができる感染症対策を考えるには、(1)自分の力でどうにかなるもの、(2)行政の力が必要なもの、(3)人間の力ではどうしようもないものに分けて考えます。
重症化・死亡=感染力×人と接触する回数×感染予防
×年齢×基礎疾患の有無×ワクチン接種の有無
×感染の診断体制×医療の受け入れ態勢×感染拡大の状況
(1)自分の力でどうにかなるもの
人と接触する回数(ただし、企業が出勤を強制する場合などは別)
感染予防
ワクチン接種の有無(アレルギーなど受けられない事情がある場合は別)
注:これは、「自助に頼る」という話ではありません。どれも、個人の判断が必要なもの(=行政による強制ができないもの)です。
(2)行政の力が必要なもの
(1)の支援
ワクチン接種体制の整備
感染の診断体制
医療の受け入れ態勢
※私としては、ほとんど感染リスクが少ないような美術館や図書館、庭園などの公の施設が閉鎖されたのは、日常のストレス低減の機会がなくなるので、対応としては不適当だったと思っています。
(3)人間の力ではどうしようもないもの
(コロナウイルスの)感染力
年齢
基礎疾患の有無
6.まとめ(2)―コロナで重症化しないために何ができるか―
まとめると、感染症対策は、個人、企業などの社会、医療、国・地方が一致して対応しなければ、達成できません。
個人レベルでは、感染予防をしっかりとすることが第一です。一人でも多くの人が感染予防をすることで、感染の拡大を防ぎ、早期に収束させることが可能になります。
企業などでは、テレワークを進める、体調が悪い人は絶対に出勤させないなど、個人の感染予防ができるようにすることが重要です。
逆に、国の施策に不満があるからといって、外出を呼びかける、飲食を呼びかけるなど個人でできる感染予防に反するあおり、あるいは科学的根拠なくワクチンの意味がないなど、感染リスクを高める行動をあおることは、非常に危険です。
また、「感染予防をしても、感染をした。」、「すれ違っても感染した」という話も聞こえることがありますが、それが、科学的に認定されたものなのか、個人の感想・推測なのか、どれくらい発生しているのかはしっかりと区別して冷静に受け止める必要があります。
感染リスクを高める行動をあおるのは、感染者を増やし、医療体制を圧迫し、助けられたはず、救えたはずの命を失わせることになりかねません。
過度に実態よりもコロナの恐怖をあおることも、冷静な行動・反応を失わせることになり、危険です。
前に分析したように、ワクチンにより、感染の収束が見えてきました。
出口まではもう少しです。