司法書士事務所の費用について~売買編~
こんにちは。
先日売買の立会で話題に上ったのが、「司法書士の費用って、事務所によって違うんですね」という話。
そうなんです。司法書士は報酬が自由化していて、事務所によって基準が異なります。
お客様からしたらどこも登記をすることに違いはないのだから、安いに越したことはないという気持ちもわかります。
最近NFTとかWeb3とかに憧れてしまっているので、登記費用なんてガス代でしかないなんて将来的には言われかねないなと思ったりしていますがその話はまたの機会に。
どこも同じ仕事をしているかというと、結果的にそうなっているケースが多いだけで、いろんな事務所を経験してきた人間からすると、事務所によって仕事内容には大分差があります。
A事務所とB事務所では5万円も違った!
この話をきいたとき、5万円はちょっと大きいかなとも思ったのですが、一概に高い方がぼったくりというわけではないのです。
例えば見積りに「登記情報」「地図情報」「前面道路調査」「事前閲覧」「効力証明」とかよく解らない言葉が並んでいませんか。
個人的にはここが細かく嵩んでいるほど、事前調査をしっかりしている確実な事務所だなあという印象を受けます。
売買の事前調査は、大きく分けて①不動産の確認、②権利証の確認に分けられると思います。
①不動産の確認
不動産の権利関係を確認するため、「登記情報」(登記簿謄本)を取得します。売買対象不動産を確認することは勿論ですが、前面道路を持分でもっていないかきちんと調査しないと、登記漏れを起こして後々トラブルになります。このため、「地図情報」(公図)を取得して周辺の地形をみて道路との繋がりを確認します。この点、不動産屋さんが確認してくださっていることは多いのですが、確認漏れを防ぐために司法書士事務所もダブルチェックをするのが一般的です。
また、権利関係は刻一刻と変わりうるものです。例えば残代金決済日当日の差押え。前日まで問題なくても、決済日の朝一に公的機関が差押えの登記を入れてくる可能性もあります。この状態で登記申請すると、売主には処分権限がないので登記は却下されます。また、似たようなことですが売主が二重譲渡をするという悪質なパターンもあります。第三者へ所有権を移転しておいて、決済ではちゃっかり売買代金をもらおうとする。このような状態での売買代金の送金を防ぐため、司法書士事務所では「事前閲覧」とか呼ぶことが多いのですが、当日の朝一や決済時間の近接した時間で登記情報(登記簿謄本)を確認しています。
②権利証の確認
権利証は現在「登記識別情報」と呼ばれています。法務局から発行されてる、12桁の暗号が隠れている青緑色の紙です。
この登記識別情報は、例えば盗まれたり暗号を見られたりしたときに、法務局に対して失効を申し出ることができます。これで第三者が不正に利用するのを防ぐこともできます。
例えば登記識別情報が盗まれた状況で、有名なドラマのように何者かが自分の不動産を売ろうとしているという話が耳に入ったら、すぐに失効申出を行ってください。
司法書士は決済前日までに、登記識別情報の失効証明を法務局に申請します。「通知されず、又は失効されています」という結果を確認した状態で、決済当日、登記識別情報をもっている人が現れたら…売買の実行を防ぐことにつながります。
これらの調査は、最低限~調査しつくしている事務所まで様々です。結果的に平和な取引が多いため問題になりにくいのですが、まだまだ調査の為、時間も手間も費用もかかりますので、見積金額の差にもつながるように思います。
また、決済当日は人の確認もします。免許証にライトを当ててみたりパスポートにブラックライトを当ててみたり、その確認手法は司法書士によって様々です。私たちは偽造を見破るプロではないので、これらの確認を「どこまでするか」も各事務所によって異なります。
以上のように司法書士事務所によって仕事内容に差がありますので、安ければよいというわけでもないこと、ご理解いただけますと大変幸いです。