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【中編】誑し込むには十二分(完結済み)

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夏の甥と叔父 ホラー/死体埋め グロテスク表現有
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#甥と叔父

【創作小説】誑し込むには十二分(1)「死人に口なし」

 いつまでも渋っていた俺を乗せた車は昼頃には相変わらずなにもない田舎道を軽快に進んでいて、鼻歌混じりの母の独り言をBGMに、俺は揺られながら文字を追っていたせいで催した吐き気に緩やかな対抗をしていた。

「吐きそうだったら言えよ、シート汚したら掃除が面倒だから」
「吐きそう」
「もう少しだから頑張れ」

 自分が言ったくせに一向にスピードを緩めようとしないどころか加速している父に苛立ったものの、全

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【創作小説】誑し込むには十二分(6)「還る道」

前作「かくしごと」の続きです。完結。

 あれから二年が経って、何事もなく大学生活を過ごしている。無事に内定も貰って、あとは卒業に必要な単位を無事に取得するのみになった。つまり、俺が心霊スポットに不法侵入したのも、叔父が先輩を埋めたのも、咎められることなく平穏に過ごせていたということだ。相変わらず死体は降ってきたけれども、汚いものを見せられる以外実害はなく、叔父に連絡を取ったことはない。

 初夏

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